病気のもととなる腫瘍がないか、病変は起きていないか。MRIなどを使って画像を撮影し、解析する画像診断は、高い専門性を必要とし、すべての医師が判断できるものではありません。その画像診断AIを活用することで医師の負担軽減に取り組んでいる企業があります。今回は、そんな画像解析AIを開発したエルピクセル株式会社の代表取締役の島原佑基さんにお話しを伺いました。エルピクセルが取り組んでいる事業から、AIによる画像診断が必要な背景、今後目指したい未来など、島原さんの思いをぜひご覧ください。
「First Penguin(ファーストペンギン)」は、新たな分野に果敢に挑戦するスタートアップ経営者を、未知なる海に真っ先に飛び込む1羽のペンギンになぞらえてインタビューをする、YouTube番組。更新しているのは、Fintechに関連するプロジェクトやコミュニティ、施設を運営する株式会社FINOLABです。
「医療におけるAIとは献血である」と語る島原さんの想いにもご注目ください。
「未来につながる医療テクノロジーとは?」インタビュー斜め読み
ここではインタビュー動画本編より5つのやりとりを簡潔にまとめました。回答に対する島原さんの思惑を深掘りしたい方は、ぜひ該当箇所がスポット再生されるURLよりご視聴ください。
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Q1.まず、エルピクセルさんの事業内容について教えていただけますか?
A.「医療や製薬、農業などのライフサイエンス領域において、画像の処理・解析をメイン事業としています。今注力している事業のひとつが、医療現場における画像診断を支援するAIの開発です。画像診断は、MRIなどで撮影された画像を見てそこに病気があるかを判断する重要な工程です。私たちは2019年10月に、脳のMRI画像から脳卒中となる動脈瘤を早期発見し、その位置を示すAIをリリースしました。導入する際に、外部にデータを出すことをためらう医療機関も多いので、そういうときは画像を保存するサーバーに直接アクセスするようにしています。もちろんクラウドでデータを飛ばすことも可能ですし、現場では柔軟に対応しています」
Q2.なぜAIを使った画像診断が必要なのでしょうか?
A.「医療現場の効率化と、医療の質の担保のためです。AIを使って画像診断にかかる時間を短縮できれば、医師は患者とのコミュニケーションにより時間を割けるようになります。通常、MRIなどで撮影された画像は画像診断専門医が診ますが、他にも脳神経外科や内科など専門でなくても診る機会がある医師はたくさんいます。さらに、深夜の救急搬送時などは画像診断専門医がいないことも多々あります。そうしたときに専門医がいなくても、医療の質が担保できるようになるために必要な技術です。また、スクリーニングやマンモグラフィー、内視鏡などの映像系の健診項目をAIで揃えることもできれば、医師の負担軽減や効率化にもつながるはずです」
Q3. エルピクセルを起業されたきっかけを教えてください。
A.「元々、生物学のエンジニアリングに興味があり、生物学の研究をしていました。生物学って幅広い学問が関係してくるんです。様々な分野との掛け算で成り立っていてそこに魅力を感じていました。その過程で医療にも携わって共同研究をしていたときにAIブームが訪れました。いろんな医師から何かできないかと言われて、プロトタイプを作ってフィードバックをもらっているうちに期待値がどんどん高くなり、『もっと使命感を持ってやらなきゃだめだな』と思って腹を括って資金調達をして、会社を立ち上げました」
Q4.画像診断含め、医療機器AIが活用され始めているなかで、どんな未来が出来ていくのでしょうか?
A.「今までの薬や医療機器は、治せなかったものが治せるや、見えなかったものが見えるなどの価値がメインでした。しかし、医療機器AIはそれとは別の、既存の医療の効率化や質向上など、新しい価値を提供するものです。価値は医師側と患者側と双方あるのですが、医師側からいうと、例えば、現在学会のガイドラインでは医師が二人以上のダブルチェックで診断をしようとなっていますが、今後は医師とAIのチェックでいいんじゃないかとなる可能性もあります。患者側にとっては、データを自分で管理しようという世の中の流れが出てきているなかで、健康状態を自分で把握できたり、その延長線上で画像についてもトータルの情報から解析することも未来としては起こりうるんじゃないかなと。高精度で効率的なツールを開発し、それを社会にいかにフィットさせていくか。患者さんからAIを求める時代になることが重要だと思うので、医師が患者さんに伝えやすいように情報を届ける工夫も欠かさずにしていきたいと思います」
Q5.「医療におけるAIとは、献血である」とお話しされていましたが、その意図はなんでしょうか?
A.「AIを使うことは、献血のように社会貢献につながるということです。例えば、献血に行くと、自分にとってはそのときの健康状態がわかるメリットがあり、献血した血は困っている誰かを助ける術となります。医療AIも同じで、AIによって自分の健康状態を診断することで自分の健康がわかるのはもちろん、そのデータをAIが学習すれば子孫や後世に精度が高い診断ができるようになる。それは自分の健康も、誰かの病気も救う献血と同じです。データを公共的な財産として使う、社会貢献性が高いテクノロジーなんだということをもっと広めていきたいと思っています」
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