※本稿は「FASTGROW」に掲載された記事を転載したものです。
夏にはあれだけの猛威を奮っていた新型コロナウイルスだが、10月の終わりには警戒レベルが“最低”に引き下げられ、収束の兆しを見せつつある。
授業、サークル、旅行にアルバイト——入学以来ずっとコロナ禍で「一番割を食っている」とも言われる大学生も、コロナ禍以前のキャンパス・ライフがようやく取り戻せそうだと、希望を感じ始めているところかもしれない。
少しずつ、できることの選択肢が増えていく中、
「せっかくなら、今のうちしかできないことを経験してみたい」
「早めに動き始めて、就活に備えておきたい」
「人とは違う面白い経験をして、残りの学生生活を悔いなく過ごしたい」
そんな風に考えている学生の皆さんにぜひオススメしたいのが、12月1日に開催予定の「Next Entrepreneur’s Meetup」だ。三菱地所が主催するこちらのイベントは、急成長を遂げるスタートアップ企業と、「そうした企業でインターンとして働いてみたい」という学生たちのマッチングの場。初回の2019年2月から回を追うごとに人気が広がり、次回で7回目の開催となる。
そこで本記事では、1年前のこのイベントに参加し、株式会社FINOLABでインターン中の東京大学3年生・今井 那雄行さんと、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、オックスフォード大学客員研究員を経て、現在はFINOLABの所長を務める柴田 誠氏に取材。本イベントとインターンの魅力について語っていただいた。
INDEX
・右も左も分からずインターン開始。今ではベンチャーキャピタルが志望先に
・社会との接点を持つ。インターンへの参加動機はそこからで良い
・リサーチ業務を通じ、現場の一次情報にこそ価値は宿ると知る
・数多の出会いをくぐり抜け、自身の「やりたいこと」を掴め!
右も左も分からずインターン開始。今ではベンチャーキャピタルが志望先に
今回取材に協力いただいた今井さんは、現在大学3年生。まさにこれから就職活動が本格化するというタイミングで、イベントには2年生の冬に参加したということになる。
「2年生からインターン」と聞くと、「そんなに早くからやって意味あるの?」「学生生活、まだまだ遊び足りないし……」と感じる読者の方もいるかもしれない。
しかし今井さんは、就職活動が始まる前にインターンに参加したからこそ、実践的に業界知識を身につけることができ、志望業界を定めることができたという。
東京大学 教養学部 3年生 今井 那雄行氏
今井:今はベンチャーキャピタルが第一志望の業界なのですが、ベンチャーキャピタルに行きたいと思うようになったのは、FINOLABでのインターンがきっかけです。
FINOLABは、オフィスの提供や資金調達、バックオフィス業務の支援など、ハードとソフトの両面からFinTechスタートアップの育成支援を行っており、このインターンを通じて初めて、「他の企業を支援する」という事業のあり方と、その面白さを知ることができました。
ベンチャーやスタートアップを見る就活生はそもそも少ないですし、そこに対して資金提供という形で支援をするベンチャーキャピタルまで見る人はさらに少ないと思うので、就活が始まる前のこのタイミングで志望先の選定まで辿りつけたのは、紛れもなくこのインターンのおかげですね。
世の中には、想像以上に多種多様な企業やビジネスモデルがある。就活の時期になってから業界研究を始めたのでは、集められる情報には限界があるだろう。特に長期化の傾向にあると言われている昨今の就活において、早いうちからアンテナを張り動き出すことは、確実に有効なはずだ。
しかしながら、インターンを単なる就活準備と位置付けてしまうのはもったいないような気がする。むしろ就活に対する効果は副次的なものであって、インターンにはもっと大きく本質的な魅力がある。
例えば今井さんは、このインターンを通じて、「働くことのイメージが大きく変わった」と語る。
今井:今まで電車の中で疲れ切っているサラリーマンとかを見ていて、「働くのってやっぱりしんどそうだな」と思っていたんです。大学院に行って、社会に出るのをなるべく先延ばしにしようと考えたこともありました。
でもインターンを始めてからは、「働くのも意外と楽しそうだな」と思うようになりました。
例えば先日、FINOLABに入居しているスタートアップの方たちと一緒にイベント設営をやっていたときも、皆さん本当に楽しそうに働かれていて。これだけ楽しそうに働いている人がいるなら、方法次第で自分も楽しく働ける可能性があるのだなと、社会に出ることに対して前向きになれました。
いったいどんな経験を通じて、こうした心境の変化が起きたのか。彼がインターンに参加した経緯とそこで得た学びについて、さらに詳しく見てみよう。
社会との接点を持つ。インターンへの参加動機はそこからで良い
今井さんがイベントに参加したのは大学2年生の12月。当時はまだ、就活について右も左もわからない状態だったが、「まずは社会との接点を持とう」と考えて、Next Entrepreneur’s Meetupに申し込みをしたという。
今井:イベントの存在は、スローガンからの案内メールを見て知りました。当時から既に「就活が長期化している」みたいなことは聞いていましたし、コロナ禍で先行きが見えない部分もあって。ちょうど就活を意識し始めたタイミングでしたが、いきなりESや面接の練習をするのも違うなと思い、まずはいろんな会社の情報を集めてみようと、イベントに参加しました。
オンライン開催だったこともあり、ごはんを食べながらゆったりとイベントを視聴していたという今井さん。しかしその中で、強烈に興味を惹かれた会社があった。今回インターンに参加した、FINOLABだ。
今井:最初に話を聞いたとき、正直何をやっている会社なのかよくわからなかったんです。コンサルでもないし、ファンドでもないし……どうやってマネタイズしているのかもまるでわからない。ただ、すごく面白そうだなとは感じましたし、その捉えづらさが僕にとっては逆に魅力で。こちらからの働きかけ次第で、いろんなことができそうだなと感じました。
事業構造については、その後の面接で話を聞いたり、自分で調べていく中でだんだんと理解を深めていきました。FinTech領域ということもありハードル高く感じる方もいるかもしれませんが、最初から知識がある学生なんていないと思うので、インターンでの業務を通じて知識を身につけていけばいいのかなと思います。
ここでせっかくなので、次回12月1日のイベントにも登壇する株式会社FINOLABの事業について紹介しておこう。FINOLABは、FinTechイノベーションの拠点として2016年に開設された、会員制のコミュニティ&スペースだ。現在、約50社のFinTechスタートアップと22社の大手企業が会員となっており、スタートアップには育成支援を、大手企業にはスタートアップとの共創による新規事業開発やイノベーションへの支援を提供している。
その事業内容は、会員制スペースの提供、FinTechに関する情報の収集と分析、ファンド事業、バックオフィス業務のシェアリングサービスなど、実に多岐にわたる。
FINOLABで所長を務める柴田誠氏は、それぞれの事業とそのねらいについて、次のように語る。
柴田:FINOLABの事業には、スタートアップの成長サポートと、FinTechイノベーションを生み出すためのエコシステム構築という、2つの側面があります。したがってFINOLABは、インキュベーターとしての役割を担いつつ、ファンドや研究・教育機関といった側面もあり、何をやっている会社なのかわかりづらいかもしれません。
スタートアップの育成支援においては、オフィスの提供やファンド事業による資金調達支援のほかに、PR動画の制作支援や資金調達・運用プランの作成、郵便物の管理といった総務的な業務まで、フルリソースで走るのは難しいスタートアップのニーズに特化した、さまざまなサポートを提供しています。
株式会社FINOLAB 所長 柴田 誠氏
我々で対応しきれないニーズに関しては、弁護士やベンチャーキャピタリストなど、さまざまな領域の専門家によるメンターグループ「FINOVATORS」を組織し、アドバイスを求められる仕組みもつくっています。
また、「FINOLAB RESERCH」といって、FinTech領域の新しい技術やサービスの動向についての情報収集や分析・発信も行っており、インターン生の方々にも手伝っていただきました。例えば「最近の大学生はどのような決済手段を使っているのか」「若い人に刺さるキャッシュレス促進のマーケティングとはどのようなものか」といったテーマについては、今井さんにも現場でヒアリング調査をしてもらいましたね。
その他、セミナーやミートアップなどのイベントを月2~3回開催しており、こちらもインターン生の方々にお手伝いいただいています。
それまでFINOLABでは、紹介を通じて個別にインターンを採用したことはあったが、公にインターンを募集したのはこのNext Entrepreneur’s Meetupがはじめて。きっかけはFINOLAB会員のスタートアップ企業が当イベントに出展しており、そこでの盛り上がりを見て、せっかくなら自分たちもインターンを採用しようと出展に至った。
どれぐらいの応募があるかわからない中での参加だったが、蓋を開けてみると予想をはるかに上回る数のエントリーがあり、選考には苦労したという。企業がインターンを採用する際にはどのような観点で学生を見ているのかは気になるところだが、選考のポイントは何なのだろうか。
柴田:まず、今回インターンを募集した背景には「若い人に運営に入ってもらうことで、コミュニティを活性化したい」というねらいがありました。したがって、なるべく面白そうな経験をしている学生の方がメンバーへの刺激になるだろうと考え、何かしら他の人が持っていなさそうな経験をしてらっしゃる方を書類選考でピックアップしました。
あとは、まだまだコロナ禍が続きそうという時期だったので、リモートでどのくらい作業できるのか、どの程度稼働ができるのか、どんな仕事がやりたいのか、といったことをお伺いして、今井さんと青山学院大学の学生さんの2名をインターン生として採用させていただきました。
当初は軽い気持ちでインターンイベントに参加した今井さんだが、そこでFINOLABと出会い、業務を経験する中で明確な志望先を持てるようになった。初めはどんな理由だって構わない。まずはアクションを起こしてみるということが、自身の可能性を引き出す重要なファクターではないだろうか。
リサーチ業務を通じ、現場の一次情報にこそ価値は宿ると知る
そうして12月中に選考が終わり、年が明けるとともにインターンとしての活動が始まった。
メインの業務はリサーチや分析。週に1回のミーティングで柴田氏から調査内容についての説明を受け、あとは自分で調査と分析を進めてレポートにまとめる。
週あたりの稼働時間は5〜6時間と、仕事の量的にはあまりハードではなかったが、どのように自分の価値を発揮するか、模索する日々が始まったという。
今井:調べたことを資料にまとめてプレゼンするのですが、そもそも柴田さんは、ちょっと調べてわかるぐらいのことは既にご存知なんですよ。学生である自分に、いったいどうすればお給料に見合うだけのアウトプットが出せるのか……、かなり思い悩みましたね。
今も試行錯誤の途中ではありますが、辿り着いた1つの答えは、ただ調べてわかることだけではなく、それらに自分なりの体験を結びつけることで価値を発揮する、というやり方です。
例えば、もう一人のインターン生は、Appleの販売店でアルバイトした経験を上手くアウトプットに取り入れていて。いろんな価値発揮の仕方があるんだなあと、すごく刺激になりました。
僕の場合は、周囲にいる人とのコネクションを付加価値に転換しようと試みました。僕の周りにいる東大の同級生は、お金について意外に保守的で、キャッシュレス化が全然進んでいないんです。図書館で現金10万円を盗まれたという人もいるし、みんなで野球をしたときのグラウンド代も、LINE Payなどを使わずに未だに現金で割り勘にしている……もう一人のインターン生が通う青山学院大学では、みんなバンバンキャッシュレスを使っているそうなので、同じ大学生でも全然様子が違いますよね。
そうした友人たちに「なんでLINE Pay使わないの?」と直接ヒアリングできるのは僕ならではの強みだと思うので、そうした生の声をアウトプットに取り入れることで、自分なりの価値発揮を目指しました。
「仕事において最も重要である」と言っても過言ではない、持てるものすべてを使ってオリジナルな価値を発揮しようという姿勢。身につけられている人は、社会人でもごくわずかだろう。
今井さん場合は、もともとの意識の高さによる部分も大きいのだろうが、学生でありながら一人の社会人として働く緊張感は、プラスに作用しているように思われる。
柴田:単なるアルバイトと違ってインターンの場合は、企業側も学生に期待をしますよね。何かしらの貢献をしてくれるんじゃないかという。
それに対して我々は、手取り足取り教えるというわけではありませんけれども、社会人としてのフィードバックはします。資料の作成なら、論理的につながっていなかったり、わかりづらい部分の指摘などですね。
今井:仕事のやりとりはすべて柴田さんと直接やらせていただいているのですが、それ自体がすごく異様なことなんです。すごく気さくな方に見えますけど、普通に就職したのでは、まず会えないような人ですから。
そんな柴田さんの大切なお時間をいただいているので、「いかに簡潔に話すか」みたいなことはすごく意識しましたね。プレゼンしている時の柴田さんの表情を見ながら、退屈そうに見えた時はそれを反省材料にして話す内容をブラッシュアップしていくことで、スキルとしてだいぶ身についたように思います。
一方、インターンを受け入れた柴田氏から見て、2人のインターン生の成長はどのように映ったのだろうか。柴田氏は、社会に対するアプローチ方法こそが、彼らが手に入れた一生モノの成果だと語る。
柴田:この1年間を通じて、社会に出るためにどういうふうにアプローチしていったらいいのかを身につけ、心構えができたんじゃないかと思います。
大学生のインターンは、時期的にも社会に出て就職をする準備という側面が大きいですよね。いろんな情報を取り入れて、社会に出るイメージをつくる。でも実際に社会に出てみないと、イメージ通りかどうかはわからないわけで。インターンで得た経験を自分なりに咀嚼することで、これからの社会人生活に役立つ働く上での指針を手に入れられたんじゃないかと思います。
インターン先によって得られる経験や知識は異なるものの、核となる収穫は柴田氏が言うように、社会に出る準備が整うという点が大きいだろう。仕事をする上での円滑なコミュニケーションとはなにか?価値を出すとはどういうことなのか?こうした学びや気づきを、社会に出る前に実体験から掴めることは貴重だ。ぜひ読者の学生たちもライバルに差をつけるスタートダッシュを切ってもらいたいと、切に願う。
数多の出会いをくぐり抜け、自身の「やりたいこと」を掴め!
働くことの予行演習として、他では得られない貴重な経験を積むことができるインターン。確かにメリットは分かるものの、しかしこのご時世だ。「完全フルリモートでインターンってどうなの……?」と懸念を感じる人もいるかもしれない。
実際に今井さんも、モチベーションの発揮という点で難しさを感じたことがあったようだ。
今井:業務を始めてから柴田さんやもう一人のインターン生に実際に会うまで、2〜3ヶ月くらい間がありました。やはり対面で会ったことのある相手だからこそ、自分が価値を提供していると実感できる部分はあると思うので、最初のうちはそうしたモチベーションを得るのに少し苦労しました。
ただ、そのデメリットを補って余りあるのは、時間や場所に囚われず柔軟に働けるということだと思います。僕も夏までは実家のある栃木にいたので、対面のインターンだったらそもそも参加が容易ではありませんでした。
前回のイベントでは愛媛県から参加されている方もいらっしゃいましたし、そうした地方や海外の学生にとっては、フルリモートで参加できるイベントやインターンというのは非常にありがたいですよね。
なお、次回のイベントにおいても、フルリモートを前提としたインターン募集を案内予定だが、オフィスに来られる学生の場合には、企業ごとに判断の上で出勤も受け入れる。
そういう意味では、リアルとオンラインの良いところを取り入れた、ハイブリッドなインターン経験ができると言えそうだ。
最後にお二人から、改めて本イベントとインターンのオススメポイントについて語っていただいた。
柴田:卒業していきなり社会に出るのではなく、学生のうちから普段の生活圏内の一歩外に踏み出し社会に出るイメージをしておくことは、やはりとても大事なことだと思います。
その一歩を踏み出す先は、アルバイトでもボランティアでも何でもいいと思うのですが、インターンの場合には実際に働くという経験ができて、しかもそれに対する何かしらのフィードバックがもらえるという点で、非常に良い機会だと思います。
なかでもFINOLABでのインターンに関しては、いろんな会社や人に会うことができ、企業や働き方の多様性を実感できるというのが一番大きいんじゃないかと思います。FINOLABに入居しているスタートアップの中には、外国人のエンジニアを雇っている会社もあって、インターナショナルな要素もありますしね。
今回のインターンはリモートワーク中心で、オフィスに来ていただく機会は多くはありませんでしたが、イベントのお手伝いなどを通じて、一端を感じていただくことはできたんじゃないかと思います。
今井:FINOLABのインターンのスゴいところは、やっぱり柴田さんから1:1のような形で直接学べるという点だと思います。金融のプロフェッショナルとしてのずっと経験を積まれてきて、海外の大学にも留学されていて。若いうちからこういった方と一緒にお仕事できる機会というのは、他ではなかなか得られないと思います。
とはいえ、「今後も就活イベントはありそうだし、次回でいいや」と思われるかもしれません。しかし、特に情報があまり出回っていないベンチャー・スタートアップ系の会社を探す上では、とにかく出会いの数を増やして自分に合う会社を見つける必要があるなと感じています。
いろんな会社を見れば見るほど自分の中で興味が持てる点が見えてきて、「ここだ!」という会社に出会える確率は上がると思います。そして何よりオンラインで気軽に参加できるイベントなので、少しでも気になったら参加してみることをオススメします。
次回の「Next Entrepreneur’s Meetup」は、12月1日の午後18時からオンラインにて開催予定。今回取材に登場した株式会社FINOLABを含む、9社のスタートアップ企業が登壇予定だ。
ぜひ、下記リンクより詳細をチェックの上、参加申し込みをしてほしい。
https://internstreet.jp/events/next_entrepreneurs_meetup
●転載元記事:https://www.fastgrow.jp/articles/finolab-shibata-imai