美しいデザイン、5cmの段差も乗り越えられるスペック。今まで私たちが目にしてきた車椅子とは異なる次世代型の電動車椅子を作ったのは、コンパクトな移動支援機器“パーソナルモビリティ”の生産・販売を手がけるWHILL株式会社。車椅子事業の会社を興したきっかけは、「100m先のコンビニに行くことを諦める」と言ったひとりの車椅子ユーザーの言葉だったといいます。今回は、取締役兼最高技術責任者(CTO)の福岡宗明さんにお話を伺い、事業のきっかけから、日本とアメリカのカルチャーの違い、「パーソナルモビリティとはメガネである」と語る真意についてなど、様々な角度からお話を伺ってきました。
このインタビューの様子は、スタートアップ経営者に話しを聞くYouTube番組「First Penguin(ファーストペンギン)」でも公開されています。更新しているのは、Fintechに関連するプロジェクトやコミュニティ、施設を運営する株式会社FINOLAB。新しい分野に果敢に挑戦するスタートアップ経営者を、未知なる海に真っ先に飛び込む1羽のペンギンになぞらえてインタビューを実施しています。
車椅子のイメージを一変させたいと語る福岡さんの熱意と、目的に合わせて練られた戦略にぜひご注目ください。
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「パーソナルモビリティとは何か?」インタビュー斜め読み
ここではインタビュー動画本編より5つのやりとりを簡潔にまとめました。回答に対する福岡さんの思惑を深掘りしたい方は、ぜひ該当箇所がスポット再生されるURLよりご視聴ください。
Q1. まず、WHILL株式会社を起業した理由を教えていただけますか?
A.「ある車椅子ユーザーから『100m先のコンビニに行くことすら諦める』と言われたことがきっかけです。車椅子を使って外に行くには、段差などの物理的な問題だけでなく、周りからの視線など精神的な問題もあります。その両方の課題を解決できないかと思いました。ただし、ハードウェアのスタートアップの場合、部品を買わなければプロトタイプすら作れません。初めは自己資金で製品を作っていましたが、後に車椅子文化が進んでいるアメリカに渡り、500 Startupsのアクセラレーションプログラムを経て、ITV(伊藤忠テクノロジーベンチャーズ)などから出資をいただくようになりました」
Q2. アメリカでも事業を展開しているWHILLですが、日本とアメリカのマーケットの違いはありますか?
A.「アメリカの車椅子マーケットは日本の20〜30倍の規模で、車椅子を受け入れるカルチャーが根付いている国です。日本だと車椅子は歩けない方が使いますが、アメリカだと、歩けるけど使ったほうが便利だからといって使う人も多くいます。日本のユーザーは単純に車椅子に乗っていることを見せたくない気持ちもあれば、車椅子を使ったら歩けなくなるのではないかという不安が複合的に混ざり合い、最終的に『車椅子に乗って外に行くのが嫌だな』となってしまう。それを、自分で外に出たくなるような車椅子を作ることで、ユーザーの気持ちを後押しできればと思っています」
Q3. WHILLが作る車椅子は、どのような特徴があるのでしょう?
A.「機能とデザインにはこだわりました。まず、前輪を大きくすることで段差の衝撃を和らげ、加えて小回りが効く設計に。従来の車椅子だと前輪が小さく段差を乗り越えられないのですが、WHILLは5cmの段差もいける。歩道はほぼカバーできると思います。また、デザイン面では車椅子のイメージから離れるため、「前進」をイメージできる前のラインをアームにデザインしました。他には分解することも可能です。実際に乗っているユーザーさんから、既存の車椅子では『手伝いましょうか?』と声をかけられることが多かったのが、WHILLだと『かっこいいね!』と言われるようになったとの声もいただくようになりました」
Q4. これから日本で仕掛けようと思っていることはありますか?
A.「イメージを変えたいですね。車椅子ユーザーだけでなく、一般の人にも乗ってもらえる機会を作っていきたいと思っています。街中や空港に車椅子を置き、誰でも使える仕組みを作れたら、車椅子に対するイメージや心理的ハードルを下げられるのではないかなと。ただ、色々な施設の方と話をしていると、『ぶつかったらどうなるの?』『最後片付けるためには、人が必要?』などと心配事を口にされる方が多いので、自動停止や自動運転技術でカバーできるように実装に向けて開発を進めているところです」
Q5. 「パーソナルモビティとは、メガネである」とおっしゃっていましたが、その真意とは?
A.「昔はメガネをかけていることは、あまりイメージが良くなかったんですよね。でも、今ではイメージが変わって、おしゃれなアイテムとして使う人も増えてきました。最近はセンサーが付いているものもあって、付けたほうができることが増えるんじゃないかというくらいですよね。車椅子も同じようにマイナスなイメージを変えて、色んな人が気軽に使えるようになって、乗ったほうができることが増える状態にしていきたいと思っています」
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