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”出会い”を有益なものに。年間数千人と出会う日比谷尚武氏、「自己紹介2.0」の著者横石崇氏に学ぶ信頼を築く自己紹介

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もうすぐ「役職」よりも「役割」の時代がくると言う。あなたは「何者」で、「何をしていて」、「何ができる」のか、自分のことを紹介することはできるだろうか。なんとなく出会った「ただの知り合い」から、お互いに信頼関係を結ぶことのできる「引き出しの多い知人」に昇華する鍵は、自己紹介にある。自己紹介から始まる出会い、そして繋がることの面白さについて、新刊「自己紹介2.0」の著者であり、「交差点を作る」ことを生業とする横石崇氏と、「人や情報を繋ぐ」日比谷尚武氏に話を聞いた。

INDEX

まずはおふたりの「自己紹介」から
”出会い”をより良くするために ①他流試合を多くすることで発見力を磨く
”出会い”をより良くするために ②思い切った「お願い」と期待のマネジメントが信頼を築く
越境とは交流会に行くことではない
空き地的な余白作りが越境を面白くする
ここがポイント


横石崇(よこいし・たかし)
多摩美術大学卒。テレビ局・雑誌社・ポータルサイトをはじめとするメディアサービス開発を手がけるほか、企業の組織開発や人材育成など、さまざまな場の編集に携わる。「六本木未来大学」講師を務めるなど年間100以上の講演やセミナーを実施。鎌倉にオープンしたコレクティブオフィス「北条SANCI」のプロデュースおよび支配人。国内最大規模の働き方の祭典「Tokyo Work Design Week」代表。著書に「自己紹介2.0」(KADOKAWA)「これからの僕らの働き方」(早川書房)がある。


日比谷尚武(ひびや・なおたけ)
学生時代より、フリーランスとしてWebサイト構築・ストリーミングイベント等の企画運営に携わる。その後、NTTグループにてICカード・電子マネー・システム開発等のプロジェクトに従事。2003年、株式会社KBMJに入社。取締役として、開発マネジメント・営業・企画等を担う。2009年より、Sansan株式会社に参画、マーケティング&広報機能の立ち上げに従事。並行して、Open Network Labの3期生(Pecoq)、PR Table創業、日本PR協会 広報委員など、各種社外活動に参画。2016年12月に独立。現在は、Sansanのコネクタ/Eightエバンジェリストとして社外への情報発信を務める他、一般社団法人Public Meets Innovation 理事、一般社団法人at Will Work理事、渋谷をつなげる30人 エバンジェリストなど、各種活動を並行して行う。

まずはおふたりの「自己紹介」から

横石:僕、自己紹介が得意じゃないんです。

日比谷:だから自己紹介を研究してたんですもんね。そもそも、自己紹介普段する機会あります?

横石:しないですね。

日比谷:しないですよね。僕の場合でいうと、自己紹介のシチュエーションは2パターンあって、ひとつは今日の取材みたいに、間に立ってくれる人が文脈に合わせた僕の紹介を一言いれて、それに補足をするパターン。これは、すごく楽。相手側の設定と期待値が明確ですから。もう一つは、不特定多数の人が集まったとき。これは難しいですよね。TPOといろんな繋がりを意識して話す内容を変えなければいけないから。たとえば今日だと(横石さんと弊メディア編集長以外の全員と初対面の場合)、違う名刺を11枚持っていて、常に5本くらいのプロジェクトが進行していて、年間5,000人くらいと名刺交換する生活をおくる者です、というところですか。

横石:100点ですね、「自己紹介2.0」的には。

日比谷:自分じゃわかんないけど(笑)。色々な要素が入っているから、普段とはだいぶ違います。いつもは、「働き方改革の啓発団体をやっていて、それとは別に本業で色々とやっています」って言った後に相手の反応を見て、渋谷区の仕事なのか、Sansanなのか、渋谷で経営するロックバーなのか、どのカードを切るか瞬時に判断してます。

横石:流石です。状況にあわせてカードを切れるのは自己紹介マスターです。年間5,000人と名刺交換してるだけある。

日比谷:週4でバーに立って、DJとかバーテンとかやってますからね。自己紹介の技が磨かれるんです。

横石:冒頭でも言いましたけど、本を出したことで自己紹介の達人として見られるのがプレッシャーなんです。

日比谷:なんなら自己紹介ちゃんとしてなかった人ですよね(笑)。

横石:そうなんです。自己紹介の研究家であり、実践家ではないですから(笑)。まず日比谷さんの自己紹介について僕がポイントだと感じたのは、肩書きで自分を語らなかったところ。僕も同じで、自分で経営している会社「&Co(株式会社アンドコー)」代表取締役だと言ったことは今までありません。

日比谷:確かに、聞いたことないですね。

横石:ですよね。いい自己紹介とは、相手との未来を語れるかが問われると思います。例えば、この取材用に自己紹介するとしたら「僕は交差点をつくっています」って言うと相手も「お!?」となりますよね。なぜなら、このメディアのテーマが「Cross and Beyond」なので、「クロス(交わる)」という部分を交差点に見立てることで、自己紹介する相手との未来で何かしらベクトルをあわせることができるから。

日比谷:さっき話してた、相手に合わせてどのカードを切るのかってやつですね。

横石:それから、気をつけてるのは、名詞じゃなく動詞で伝えること。名詞で相手のことを捉えようとすると型にハマってしまいやすいんですよね。「部長です」と言われても、この人は「部長」で終わっちゃう。相手がどんな人で、何をやっている人なのかを知るためにも、動詞のコミュニケーションを心がけています。

日比谷:僕だったら「つなぐ」でいいのかな?コネクタってよく名乗るんですけど。

横石:まさに日比谷さんは「つなぐ」人ですよね。

”出会い”をより良くするために ①他流試合を多くすることで発見力を磨く

日比谷:出会いが増えていくと、思いもよらない方向に人生が動いていくと思うんです。ぽん、といきなり知らない世界が目の前に出現するイメージです。

横石:ちなみに、自社の事業計画を立てたことありますか?

日比谷:自分のですよね?全く無いです。会社に勤めてた頃はやってましたけど。

横石:僕も一緒です。自分の会社に関することで、あらかじめ計画を立てていることってないんですよね。あえて言葉や数字にしてない。計画してしまうとそこに向かってしまうので逸脱できないんです。その遊びがあるから、予想してなかった人やモノに繋がっても、その面白さを受け入れられるわけです。

日比谷:そうかもしれないですね。

横石:僕のフェチなんですけど、町中を歩いていて偶然に知り合いと出会うのが好きなんですよね。偶然の出会いフェチ。この大都会・東京で知り合いと約束せずにばったり出会えるなんてもう新海誠の映画ぐらいしかないわけですから。

日比谷:駅のホームで会ったら嬉しいですよね。

横石:あと、たくさんの人と出会うことで、自分の「発見力」があがりますよね。いろんなコミュニティに所属し、境界線を越えるうちに物事が俯瞰して見えてくるので、他人には見えてない違和感や切り口、視点が浮かび上がってくる。発見こそがすべての原動力だと思っています。

日比谷:横石流ネットワークを構築する上で、敢えて越境してる自覚ってありますか?

横石:何かを企画するときも、イベント登壇のキャスティングのときも、「〇〇なのに××」みたいな、そもそものイメージを180度裏返すことを意識しています。

日比谷:異文化と異文化をぶつけるみたいな。

横石:そう。遠いところと、遠いところを結んであげるんです。越境し続けると違和感を見つけやすくなります。

日比谷:越境の成果を僕目線でいうと、渋谷にロックバーができました。思わぬ方向に人生が動いた、ってやつですね。

横石:どうやって始まったのですか。

日比谷:資金はクラウドファンディングで集めたんですけど、バー(飲食店)を経営するために必要なスキルやノウハウは全部知り合いから調達できました。不動産から税務、会計処理、内装業の方から飲食経験者まで。最初は、音楽好きが高じて家のガレージでちょっと楽しむくらいだったのが、参加者が増えたからいっそ店にしようかって。その話を周りにしたら、モノも情報もどんどん集まってきました。

横石:まさに計画して始められることじゃない。

日比谷:そう。ガレージでやってる時に、「そのうち店になったら面白いね〜」とか言ってたんですけど、実際はリスクだと思ってましたし。でも、気づいたらお店ができました。明らかに、他流試合でいろんな人に会いまくった結果だと思います。10年前は飲食関係の知り合いはいませんでしたから。

日比谷:僕なりの他流試合というと、身近にあまりいない特定ジャンルを決めて、そこに関係する知り合いを毎年増やしていこうとしてますね。で、1年もすると、その界隈の人たちと大体知り合える。いつだったか、クリエイターとかアーティストを意識して知り合いを増やしてた年もありました。

横石:未だにそうなんですけど、異業種交流会やパーティーに行っても、いつも端っこでお酒を飲んで1、2人くらいとぽつぽつ喋ってそそくさと帰ってしまうんですよね……。

日比谷:そういう人は、ゴールを決めるといいのかもしれない。最低でも3人と出会おうとか、あらかじめ参加がわかってる人の中から目星をつけた人だけには挨拶するとか。それだけしたら帰っていい。多くを求めたり、うまく振る舞おうとすると疲れてしまうので。

横石:なるほど。頑張ろうとするのも変な気がするし、知らない人といきなり話すのが苦手なんですよ。事前に誰が来ているかを調べて、お目当ての人をあらかじめ紹介してもらえるようお願いしておいたりする努力をする。そうすれば自己紹介しなくて済むじゃないですか(笑)

日比谷:自己紹介のくだりで言ってた、誰かが文脈を読んで紹介してくれると楽ってやつですね。

”出会い”をより良くするために ②思い切った「お願い」と期待のマネジメントが信頼を築く

横石:信頼を築くためにはどうすればいいか。まず、本の中でも書いたんですが、「信用」と「信頼」は区別する必要があります。信用は過去に対する確かな担保だけど、信頼は未来に対する不確かな関わり合い。そして自己紹介はその信頼を得るためのひとつの手段です。

横石:そして信頼を築いていくには、期待のマネジメントが重要で「お願い」がキーファクターになると思っています。それも、思い切った誠実なお願いほどいい。初めて会う人に登壇の依頼をするとか、思い切ってこっちの身を相手に委ねる。それが信頼を築くための第一ステップ。そして、相手もお願いされると「応えたい」って気持ちが生まれ、お互いの期待に応え合っていくうちに、関係を深めていけることってありますよね。もし思い切ることが難しいのであれば、「時間を守る」っていう当たり前の約束(お願い)から始めてもいい。とにかく、信頼関係を築くきっかけは「お願い」にある。

日比谷:僕の場合は、必ず相手の期待値を越えるよう意識してます。求められる延長線上で120%を超えるというよりは、違うベクトルから攻める。たとえば、登壇のゲストとして呼ばれたら、言われてもないリサーチとかして、「実はこんなこと調べてきたんですけど、投げてみたら面白いんじゃないですか」って提案したり、依頼された本来の仕事内容以外でも気になることがあれば、足りないところを見つけて共有するとか。僕のまわりにそうやってる先輩が何人もいるんですよね。言われた通り100%返すだけだとつまらないと言うか。

横石:期待値のコントロールは簡単じゃないですよね。自分を等身大以上によく見せてもよくないわけです。非常にデリケートに扱う必要がある。

日比谷:だから僕は安請け合いをしない。サービス精神旺盛でつい受けがちだから気をつけてます。

横石:僕もそうです。自分の役割を明確にする意識が必要です。これからは「役職」よりも「役割」が問われる時代になっていきます。企業人であれ、フリーランスであれ、LinkedInやEightで自分の役割や好きなことをどんどん公開していける時代です。いつまでも自分が何ができて何ができないのかを明確にしないままだと、お互いの期待値がちぐはぐですれ違ったまま、誰も幸せにならない。僕がプロジェクトを動かす場合は、実際にチームメンバーの役割とタスクを表にして可視化することもあります。

日比谷:イベントの開催とかだと、蓋を開けたら、プロデュースからディレクション、企画までもりもり詰め込まれてそうですもんね、横石さん。

横石:企画だけじゃなくて、司会業もお願い、なんならレポートも書いてよとかよくありますよ。

日比谷:わかるわかる、頼む側はそういう感じだと思います。

横石:日比谷さんも「コネクタ」という肩書きを持っていると色んな人から雑に「いい人、紹介してよ!」とか言われませんか。

日比谷:今まさにその話をしようか迷ってました。僕、最近そういうのは断るようにしてて。そういうんじゃないんです、勝手に繋ぐんで。お金もらってすることじゃないんです、って。僕のネットワークを理解していた上での適切な相談ならいいけど、そうじゃない時は投げ返しますね。紹介してもらいたい目的がぼやっとしてることがままあるから。実際、半分以上はそんな感じです。

越境とは交流会に行くことではない。

日比谷:出会い頭の自己紹介で強みと弱みを交換できるようになると、何かあるときにお願いしやすくなると思います。そういう自己紹介をするためには、横石先生の著書「自己紹介2.0」を読み進めるのが近道 。

横石:ありがとうございます(笑)。特に弱みの交換は重要ですよね。自分の弱みや脆さを語れるというのは強さでもあります。交流会とかパーティーに行くことも越境かもしれませんが、読書したり映画を観たりすることも越境だと思っています。自分の知らない世界に飛び込むのって勇気がいりますよね。現実世界じゃなくても、自分の知らない世界へ越境できるような経験や感覚を日常の中にインストールできているといいですよね。どんどん自分の感覚を無防備にしたり麻痺させたりすることも重要ではないかと。

空き地的な余白作りが越境を面白くする

横石:越境することで、よく化学反応が起きるっていいますが、何もせずに放っておくだけだと反応しないんですよね。単純に境界線を越えることがゴールじゃない。越境しても、なんらかの摩擦が生まれないと何も生まれてきません。例えば、渋谷のスクランブル交差点はいろんな目的の人が集まってきますが、普段あそこで何も生まれませんよね。誰も立ち止まらないから当然といえば当然なんですが。でも、一方で「ドラえもん」に出てくる土管のある空き地はいつも何かが起こっていますよね。野球したり、喧嘩したり、お昼寝したり、集会したり。そこからストーリーが動き出す。

日比谷:所有者はいるけれども、不特定多数が出入りすることを許されて、何かをしてもいい場所ってことですよね。街中で、安全が守られてる。で、ルールは……あるのかな。基本的には自由だと思うんですけど。

横石「何かをしてもいい」という余白が持ち込める場所から化学反応が生まれると思う。渋谷のハロウィーンの大騒ぎは渋谷の交差点を原っぱに見立てて、誰もが騒げるようにしたところから、世界中から自然と人が集まるようになった。これからダイバシティや越境が求められる世界で、「交差点」でありながらも、「空き地」の要素を持ち込める場所から新しい価値が生まれると思います。それは人でも同じで自分に「交差点」的感覚と「空き地」的感覚をいかに愛せれるかが問われるのではないでしょうか。

ここがポイント

・自己紹介は、相手との未来を語り、名詞ではなく動詞を意識する。
・たくさんの人に出会い、様々なコミュニティに属し、越境することで、新しい視点が得られ「発見力」が身につく。
・「お願い」を起点に、お互いの期待に応え合うことで、信頼関係が築ける。
・「越境」とは、自分の知らない世界に飛び込むことで、現実世界だけとは限らない。
・「交差点」に何かをしてもいい「空き地」の要素が加わることで、化学反応は生まれる。

企画:阿座上陽平
取材・編集:BrightLogg,inc.
文:小泉悠莉亜
撮影:高澤啓資

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