※本稿はFASTGROWに掲載した記事を転載したものです。
昨今、FastGrowで取り上げる急成長ベンチャー / スタートアップらが、中途採用だけでなく新卒採用にも動き出している。中には、初任給から1,000万円を狙えるハイレベル人材向けの採用枠も存在している。
こうした事例を見るに、ベンチャー / スタートアップにおいても、経験豊富な事業家人材を招き入れるだけではなく、新卒採用からの生え抜きでCxOクラスの人材を育てていこうという意志が垣間見える。そんな期待に対して、学生側の意向はどうだろうか?
新卒でベンチャー / スタートアップに就職するという選択肢は年々増えているとは思うが、どのように企業を知り、どのような基準で選ぶのだろうか?
今回は、現在まさにスタートアップで長期インターン中の学生3名と、そのメンター役のスタートアップパーソンに話を伺った。
なぜ、数多ある企業の中からスタートアップでの長期インターンを選ぶのか?彼らインターン生は、その先に何を見据えているのか?
取材を通じて見えてきたものは、「最短で事業家人材になるためだ」という答えだった──。
田中 竜葵(ゆうき)
京都大学工学部工業化学科4回生
化学工学を専攻し、凍結乾燥についての研究を行っている。ラーメン屋でのアルバイトを3年以上続けており、京都一うまいチャーハンを振れると自負している。趣味は、居酒屋めぐり、FX、ツーリング、スノーボード、興味のままに手を出し続けている。その好奇心が、RWGでインターンを始めるきっかけとなった。
重光 玄(はじめ)
早稲田大学商学部4年
会計学専攻。現在、大学経営と財務諸表分析をテーマにした卒業論文を鋭意製作中。これまでに焼肉屋、テレビ局、プール監視員等様々なアルバイト経験を持つ。競技スキーに没頭し、今年で11年目。自然を愛する気持ちと地域コミュニティ創出の観点からRWGに参画。座右の銘は「信は力なり」。
高峰 悠(ゆう)
早稲田大学大学院修士1年
情報系を専攻し、現在インタラクションデザインについて研究中。前職ではラウンドワンのアミューズメントスタッフを4年間務めた。
運動が好きで剣道をはじめ様々な競技を嗜む。運動の一環として歩いたり、自転車を使用したり、自分の足で大学へ通うことが多い。「歩いて健康」というモットーと、日本全国への事業展開を魅力に感じリアルワールドゲームスに参画。
酒井 大輔
リアルワールドゲームス株式会社
事業開発室・プランナー。元々アプリ開発・運営とは無縁の業種で働いていたが、ポケモンGOの「自宅に伊藤園(ポケモンGOのスポンサー)の自販機を置く」「プレイ範囲の地図情報を整える」といったちょっと変わったやり込み具合がネットで話題になり、リアルワールドゲームスからTwitterのDMで声をかけられ、転職。
INDEX
・長期インターンは、アルバイトや短期インターンにはない生々しいビジネスの現場に立ち会える
・事業とは、顧客の現場で泥臭く推し進めるもの。実体験してわかる仕事の本質
・事業家人材を目指すなら、“スタートアップ×長期インターン”一択
・参加学生を審査するようなイベントでなく、フラットに企業と学生をつなぐイベントをオススメしたい
長期インターンは、アルバイトや短期インターンにはない生々しいビジネスの現場に立ち会える
早速、取材陣は問いを投げかけた。「なぜスタートアップで長期インターンをするのか?」。現在、長期インターン先であるスタートアップ・リアルワールドゲームスで働くインターン生らの回答はこうだ。
田中
学生時代のアルバイトはお金を稼ぐことがメインですが、長期インターンの場合は、お金に加えて自分の頭を使ってものを考える経験が得られます。
周りの同級生で長期インターンに励んでいる人たちも、「学生のうちに吸収できるものは吸収してから社会人になりたい」という意欲を持っている印象が強いですね。
京都大学 田中氏
重光
田中さんが言うように、アルバイトで任されることの多くは、基本的には作業になるかと思います。対して長期インターンであれば、就活やその後のビジネスシーンにおいても活かせる経験が積めると思います。
早稲田大学 重光氏
高峰
短期インターンは、その時間的な制約ゆえ、活動内容は企画やプレゼンなどに終始してしまいます。つまり、ビジネスの中心とも言える商談や実際のサービス提供など、生々しい顧客折衝までは体験することができないんですよね。
早稲田大学大学院 高峰氏
高峰
その点、長期インターンならばほぼ正社員と変わらない経験を積むことができるんです。どちらが学生にとってメリットがありますか?という話ですね。
それぞれ、アルバイト・短期インターン・長期インターンを経験した上での生の声を届けてくれた。現在、インターン生の彼らが働くリアルワールドゲームスとは、3Dの地図情報を使い、ゲーム感覚で移動を楽しむアプリを提供している。
具体的には、企業や自治体との合同企画でデジタルスタンプラリーを用いたイベントを実施。地域活性化を狙うといったものだ。そこでインターン生らは自身の出身地や趣味趣向に基づく知見を存分に活かし、企業や自治体に企画を提案している。
本記事で出てくる田中氏は京都大学 工学部 工業化学科の4年生。来年から化学系の大学院に進学した後、就活を始める予定だ。当インターンへの参画は友人からの紹介がきっかけ。リアルワールドゲームスでは事業開発を担当し、上に挙げたような自治体や企業に対する合同企画の提案を推進している。
高峰氏は早稲田大学大学院の情報系研究室に在籍中。VRやARといった領域に関心を持つ。そこで、『Unity』を使ってアプリのシステム開発をしているリアルワールドゲームスに興味を持ち、長期インターンに参画。現在は企画書の作成や案件の推進など、主にビジネスサイドの領域から役割を担っている。
重光氏は早稲田大学の商学部4年生で会計学を専攻。財務諸表分析、公共系の研究を行っている。大学の課外活動ではスキーを行っており、なんとそこがきっかけとなりリアルワールドゲームスに辿りついたとのこと。
地方のスキー場はシーズンになれば盛況となるが、その周辺施設や市町村は廃れたまま。もともと地方創生に関心があり、どのようにすれば実現できるのかを模索している中で、同社のゲーミフィケーションで地域を繋ぐ事業に出会ったのだ。自分自身で何かを生み出すことのできる経営者の視点を学べる点で長期インターンを志したという。
そして、これらのインターン生を束ねるのがリアルワールドゲームスのプランナー・酒井氏だ。高校を卒業してから10年間、携帯の販売業務に従事。趣味で位置情報ゲームの『ポケモンGO』にハマり、あまりのヘビーユーザーぶりに界隈での注目人物となったとのこと。そして、そのことがきっかけとなりリアルワールドゲームスの代表から直々にオファーをもらい入社したという、面白い経歴の持ち主だ。
リアルワールドゲームス プランナー 酒井氏
このように、リアルワールドゲームスには多種多様な人材が集っているが、インターン生である3人は日々どのようなことを業務として行っているのだろうか。
経営者、事業家マインドこそ、“スタートアップ×長期インターン”で得られる最大の価値
それぞれの紹介が済んだところで、早速今回の取材のメインテーマに移ろう。それは、「長期インターンを経験して良かったことは何か」という点だ。
田中
アルバイトとの違いで述べたように、やはり自分の頭で思考し、答えを出すというプロセスの訓練ができる点ですね。また、ビジネスパーソンとしてのコミュニケーション力が得られる点も大きいです。要は、社会に出てから経験する実務を先取りできるということです。
加えて、これはリアルワールドゲームスならではですが、地方にワーケーション感覚で出張に行けたことも楽しかったですね。今はインターンもリモートワークが普及している中、こうした経験が味わえたのは貴重でした。
重光
僕は経営者が持つ視点やマインドを身近に感じることができる点が良かったです。新卒として社会人になると、なかなか経営陣を間近に見ながら仕事をする機会は簡単には得られないと思うので。
実際、業務としてイベントの企画提案や当日のブース設営・イベント進行を担い、その各プロセスの中で顧客側の経営陣と幾度となく折衝する機会を持てました。
高峰
僕の場合はもともと就活に悩んでいて、起業か、大企業に入る選択肢も捨てきれなかったのが実情です。ただ、いずれにせよ将来ビジネスの舞台で活躍するために、経営者の思考やマインドについては知りたいという想いがありました。なので、今回スタートアップでの長期インターンに取り組むことに決めたんです。
今あらためて振り返ると、少なくともリアルワールドゲームスでの長期インターンは、“ビジネスにおける最初から最後まで”にトータルで関われることがメリットだなと思います。
具体的には、企画・提案・契約・サービス提供・納品までを指します。これら一連のプロセスを学生のうちから経験できることは、後の社会人生活において必ずやアドバンテージになると思っています。
三人とも、スタートアップかつ長期インターンでこそ得られるメリットを存分に味わっているようだ。そこでふと思うのが、「多忙な印象を受けるスタートアップ×長期インターンをしながら、学生生活を維持できるのか?」という疑問だ。
確かに昨今では休学をしてスタートアップにのめり込む学生もしばしば見受けられる。しかし、今回のインターン生らは「自由にシフトを組みつつ、リモートワーク主体の環境であれば十分に両立が可能」と応える。
また、彼らのメンターである酒井氏も、スタートアップ×長期インターンならではのメリットを語ってくれた。
酒井
ほとんど彼らが答えてくれましたが、たしかに経営陣と距離が近い中、長い時間を共にできる環境はスタートアップでの長期インターンでしか得られないメリットだと思いますね。
リアルワールドゲームスでは地方創生の文脈で出張の機会が多く、そこで代表と同行すれば経営者がどんな1日を過ごしているのか、どんなことを考えて日々の仕事をこなしているのかをリアルに掴むことができます。
業務においても、高峰さんが言ってくれたように事業のバリューチェーン全体に携わることができるのは、スタートアップならでは。自分で案件を持ち、企画から顧客への価値提供までを一貫して経験することは社会人になってからのビジネスの場でも大いに役立つでしょう。
三者三様のコメントが寄せられたが、各自の発言の裏には、「同期のライバルたちよりも抜きん出たい」「将来、誰よりも活躍するリーダーになりたい」といった共通の想いがあった。それを実際に先んじて経験し、キャリアの糧にすることができるのが、この長期インターンの場なのだ。
事業とは、顧客の現場で泥臭く推し進めるもの。実体験してわかる仕事の本質
スタートアップ×長期インターンでしか得られない価値を押さえたところで、彼らインターン生が具体的にどんな経験をしているのかを掘り下げていこう。リアルワールドゲームスで推進する事業開発の現場とは一体どんなものだろうか。各自の経験談を基に紐解いていこう。
重光
印象に残っているのは、長野県との合同企画で推進したスポーツ案件です。長野県にはプロバスケットボールチームの信州ブレイブウォリアーズ、同じくプロのサッカーチーム・松本山雅FC、そして長野県スキー連盟と、複数のスポーツ団体があります。本案件はそれらのスポーツ団体を巻き込んで長野県の活性化を狙うイベント企画でした。
本案件は自治体からのコンペ形式で進行されており、過去の募集要項や企画実績を見て、どんな案が採用されやすいのかを分析しつつ提案をつくっていきました。しかし、ここで自分にとって1つだけ重大な失敗をしてしまったんです…。
重光
バスケットとサッカーに関してはそのチームのマスコットキャラをアプリ上に登場させてスポットを巡ってもらう企画を考案できました。しかし、スキーに関してはリソース配分を間違えてしまい、企画提案にまで持ち込めなかったんです。
自己紹介でお伝えした通り、僕はスキーの経験者なので、誰よりも刺さる企画をつくれる自信があったのですが…。あれは悔しかったですね。自分のスケジュール管理能力を改める必要があると痛感しました。
田中
私が印象に残っている仕事は、やはり秋田のワーケーション案件です。協業する現地の商店街にアポイントを取って商談したり、県庁や市役所と協議したりといった具合です。
その中で、時にはアポ無しで訪問し、相手から叱責されることもありました。それでも相手に理解してもらうにはどう説明し、接していくべきかを常に試行錯誤していましたね。人を巻き込んで動かすという、どんな仕事にも共通して必要な経験ができたことは貴重でした。
高峰
僕も同じく案件の中で、地方の商店街の事務局にアポイントを取って提案をしにいく機会がありました。基本的には事務局に電話をかけると、若い方が電話対応をしてくださることがほとんどです。しかしながら、実際に自分が電話をしてみると、相手が自分と倍以上年齢が離れた理事長といったことがありました。
普通の学生であれば、年上のお偉いさん方とのコミュニケーションは容易ではないと思います。そんな中で、僕も非常に緊張してはいたものの、会話のトーンやスピード、雑談内容ふくめ相手に合わせた会話を心掛けました。加えて、いかに僕たちが地方創生に本気なのかを伝えたところ、電話先の理事長から「君、面白いね」と好反応をいただくことができたんです。
僕は普段剣道をやっていて、かつて剣道サークルを運営していた際、年上の先生方と頻繁にコミュニケーションを取る機会がありました。段位が上がってくると関わる先生陣がまさにこの理事長らの世代や立場の方になってくるんですね。
なので、この経験が理事長とのアポイントで生かされたんだと思っています。結果、理事長には企画にも賛同いただき、無事案件を遂行することができました。かつての経験が生きて非常に嬉しかったですね。
各自の実体験エピソードを聞くに、事業とはまさに、顧客の現場で泥臭く推し進めるものだということがわかる。もちろんデスクの上でものを調べ、思考することも重要だ。しかし、それだけでは事業は進まない。
相手の感情にも配慮しながら、相互にメリットがある状態を自ら築いていく。面倒で、労力がかかり、成果に現れるまで時間も要する。事業の現場とは、このようなものなのだ。
加えて、スタートアップとなると確立された研修体制は存在しないケースが多い。事実、酒井氏も「インターン生には教育という教育はしていません。DAY1からビジネスという荒野に解き放ち、自ら成長していくのを適宜フォローしてきたという具合です」と述べる。「優秀な人材は自ら学び、育っていくもの」と続ける酒井氏の表情は、インターン生らへの信頼に溢れている。
対するインターン生一同からは、「『崖から突き落とす』の方が表現合ってませんか?(笑)」とツッコミが入る次第。その雰囲気から、酒井氏とインターン生らの間にある堅い絆が見てとれた。
事業家人材を目指すなら、“スタートアップ×長期インターン”一択
就活を控える学生は、アルバイトや短期・長期のインターンなど複数の選択肢がある中で、どれを選択していけば良いのか?今回はその中で長期インターンに取り組む学生たちに生の意見を聞いてきた。
結果として見えてきたことは、「ビジネスの世界で誰よりも速く成長したい」「自分で事業を主導できるビジネスパーソンになりたい」と考えるならば、スタートアップ×長期インターンが最適解の1つかもしれないということだ。
この結論を基に、最後は、これから就活を控える後輩学生たちに、一歩先行く先輩としてアドバイスが届けられた。
田中
多くの学生に当てはまる言葉で言うと、行動力がすべてだと私は考えます。まず、やってみる。これが全ての可能性に通ずる最初の一歩です。なので、今回の話を聞いて少しでも共感する点があれば、実際に長期インターンに関わる情報を取りに行くことをオススメします。
少し厳しいことを言うと、学生生活とインターンの両立に悩んで動き出せない人は、そもそもスタートアップでの長期インターンは向いていないかもしれません。反対に、考えるよりもまず手や足が動くといった方は向いていると思います。
重光
Webで“長期インターン”と検索をしても、応募倍率が高く実施が困難であったり、早い者勝ちですでに応募が終わっていたりすることもしばしばあります。
なので、まだ多くの学生には知られていないベンチャー / スタートアップのインターンや、そうした企業を知れるイベントに参加してみることは一つの手かもしれません。皆と同じ行動をしていては、皆と同じ結果にしかなりませんから。
そして、インターンを受け入れる側の酒井氏も、今後の就活生に向けてアドバイスをしてくれた。
酒井
テック系のベンチャー / スタートアップならではですが、リモートで働ける環境は存分に活用すべきと思います。うちはその事業特性上、リモートはもちろんですが、全国各地に、ぞれぞれの土地に詳しいインターン生がいます。
「地方だと、首都圏の学生に対して得られる機会の点で不利なのでは…」と感じる学生さんがいるかもしれませんが、今やそんなことはありません。よくよく探してみると、リモートを通じて全国の学生に平等に機会を提供している会社は多く存在しています。
そしてやはり、ベンチャー / スタートアップであれば経営陣と間近で仕事をすることができる。この環境で得られる成長は大きいです。ぜひ、社会に出てからいち早く活躍したい学生はチャレンジしてみると良いですよ。
長期インターンを経験した先輩学生の主張としては、「ビジネスに活きる圧倒的な成長体験は、バイトや短期インターンでは得られない」と語る。
そして、その長期インターンの中でも、経営者の近くで、多くのミッションを与えられながらガムシャラに働くことができる環境こそ最適だということがわかった。
いよいよ最終章となる次章では、今回のインターン生らによって刺激を得た後輩学生たちが、今すぐ参加できる長期インターンイベントに関して紹介し、幕を閉じよう。
参加学生を審査するようなイベントでなく、フラットに企業と学生をつなぐイベントをオススメしたい
「参加学生に対する審査色を感じるようなイベントには、主催企業や参加企業の下心が見えて気が進まない」
「企業の説明を聞きたいのではなく、経営者と直にコミュニケーションを図りたい」
既存の採用関連イベントに対して率直な指摘を述べるインターン生一同。彼らの意見は、読者の学生たちからも賛同を得られそうなごもっともな内容だ。
そんな学生たちの期待に応えるべく、FastGrowからあるイベントを紹介したい。それは、三菱地所とスローガンが共同で実施するインターンイベント・『Next Entrepreneur’s Meetup』だ。
「なぜ三菱地所が?」と思う読者向けに解説すると、同社は2007年にスタートアップ向けオフィス / ビジネスコミュニティ「EGG JAPAN」を創設して以降、大手町・丸の内・有楽町エリアを中心にスタートアップの集積・支援を手がけてきた。
そして今回のインターンイベントでは、その三菱地所が手がけるスタートアップ向けシェアオフィスに入居する企業や会員を中心に、日系 / 外資系企業併せて11社ものスタートアップが一堂に会するのだ。
「今すぐ動く」ことの重要性を知ったばかりの読者なら、参加しない手はない。
それでは次は、12月7日の本イベントにてお会いしよう。