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【Next Entrepreneur’s Meetupイベントレポ】インターン募集の決め手は「内容が明確で、イメージが湧きやすい」こと

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学生から企業への逆ピッチも設けられたピッチイベント
アンケートから紐解く、人気を集めた決め手は「イメージのしやすさ」だった
アジャイルネットワークからハードウェアベンチャーまで、ピッチに参加した14の企業

イノベーションを起こすために「人」の存在は欠かせない。創業者が掲げるビジョン、それを実現する役員や社員、ビジョンを受け継ぎ次世代に引き継いでいく新卒や学生インターン。それら全ての人が一丸とならなければ革新的な事業は実現できない。

採用において、創業直後の学生インターン採用は、各社力を入れている領域だろう。イノベーションは常に若い世代が生んでいる。若い感性や習慣、優秀な才能を取り入れるために多くの企業が苦心している。

しかしながら、学生インターンの確保には一定のリソースが必要だ。できれば効率的に優秀な人材を集めたいが、効果的な施策はあるのだろうか?

この記事ではそのヒントとして、三菱地所が主催する丸の内・大手町に集うスタートアップ×学生インターンの祭典「Next Entrepreneur’s Meetup」の様子を紹介したい。

14社のスタートアップが集い、学生に向けてピッチを行った同イベント。どのような企業が人気を集めたのか? また、その決め手は何だったのだろうか。

学生から企業への逆ピッチも設けられたピッチイベント

当日のイベントは、14社のスタートアップのピッチ、学生から企業への逆ピッチ(PRタイム)、懇親会の流れで進行した。

14社から学生に向けたピッチは各社5分。各社がスライドを駆使しながら事業内容やインターンに求める事を紹介。続く学生から企業に向けた逆ピッチで挙手した学生は4名。それぞれ自身の経歴やアピールポイントを発表し、企業からスカウトが行われた。

交流会では、各社がブースを設け、質疑応答を実施。学生がブースに集まり、各社のビジョンやバリュー、具体的なビジネスモデルについて説明が行われた。会場は、解説を行う担当者と、その話に聞き入る学生の熱気で包まれた。

アンケートから紐解く、人気を集めた決め手は「イメージのしやすさ」だった

ここからは、当日のアンケートから学生の反響を紹介しよう。今回のイベントに参加した学生は105名(有効獲得数は103名)。学生は働きたい企業に対して個人情報を記したカードを渡していた。企業と学生のアンケートを紐解いていく。

まずは参加学生の文理を紹介しよう。

イベントには文系の参加者が多く(76%)、理系の参加者は24%に留まった。

次に参加企業の感触を見てみよう。アンケートでは「採用したいと思った学生数」を集計したが、2〜3名以上と答えた企業は92.9%にのぼり、一定以上のマッチング成果が出ている。

今後、どれだけの学生が正式に採用されるかは未知数だが、採用後のリファラルを考えるとまずまずの数字だと言えるだろう。

次に人気を集めた企業を紹介する。学生の個人情報カードを最も集めた企業はHRテックサービスを提供する株式会社ZENKIGEN(27名)。次いでSimilerWeb Japan株式会社(23名)とNetskope Japan株式会社(21名)が続き、株式会社justInCase(17名)と株式会社Holmes(17名)が後を追う。

これらの会社に共通していたのは「伝えたい内容が明確で、イメージが湧きやすい」ことだ。株式会社ZENKIGENの事業はテクノロジーによる面接の最適化で、就活生がイメージしやすいビジネスだ。SimilerWeb Japan株式会社はピッチの中で「同社で働く6つのメリット」をPRしていたし、Netskope Japan株式会社はグローバルで1000名以上の社員を抱えるユニコーン企業ということで、スケール感が分かりやすい。株式会社justInCaseは代表の軽妙なトークで親近感を抱かせ、株式会社Holmesはインターンが具体的な業務内容やカルチャーを紹介していた。

学生がインターンに参加する目的は、「自分が何をやりたいのかを見つけるため」「就職活動に有利だと考えたため」など、はっきりと志望業種や業界が定まっていないことが多い。

インターン先を選ぶ決め手になるのは、「事業や会社に対する親近感」や「具体的な働き方」「企業カルチャー」「将来的なビジョン」など定量化しづらいフィーリングに依るところが大きいだろう。受け手である学生の社会への解像度が高いとは言えない状態で学生インターンのタレントプールを広げるならば、伝えることを絞り、わかりやすく感情面に訴えかけることが効果的ではないだろうか。

また、今回のイベントに参加して、母集団の属性もインターン採用に大きく影響を与えると感じた。「Next Entrepreneur’s Meetup」には学科を問わず幅広い学生が参加していたが、企業側の求める人材にはエンジニアやデータサイエンティスト、ハードウェアの開発など技術が求められるポジションが存在している。これらの人材を採用するためには、工学科や情報処理科へのアプローチが最適だろう。

何れにしても、優秀な人の周りには優秀な人材が集まる。また、学生同士の口コミ効果は新卒採用にプラスの影響を与えてくれるだろう。ひとりではマッチしなくても、母数を広げれば企業の成長を支えてくれる人材に必ず出会えるはずだ。

アジャイルネットワークからハードウェアベンチャーまで、ピッチに参加した14の企業

最後に、参加企業のピッチ内容、各社の事業とインターンに用意されたポジションを登壇順に紹介する。

株式会社アドライト

同社の事業はイノベーション創出支援。新規事業を創出する仕組みの構築から、個別プロジェクトの事業化までを推進する。国内外スタートアップとのネットワーク構築に加えて、国内⾃治体などとも連携し、より⼤規模でのオープンイノベーション創出にも携わる。インターンの業務は業務アシスタント。テクノロジーや国内外スタートアップに関する調査、執筆、資料作成、取材、SNS運用など業務は多岐に渡る。

Activaid株式会社

創薬を目的とした疾患特化型のソーシャルデータプラットフォーム「Activaid」を開発する同社。ピッチの中で「人々が医療の発展に参加できる未来を作る」というミッションを強くアピールしていたことが印象的だった。代表の長谷部氏は元医者で、マッキンゼーや外資系の製薬会社を遍歴している。今回はWebアプリーケションエンジニアとグロースハックを担当するインターンを募集した。

株式会社カウリス

不正アクセスを検知するサービスを提供する同社。日本最大級の1億回以上のチェック回数を活かし、アタックリストを作成して不正ユーザーのデータベース化を進めている。同社代表の島津氏は「約30億円と言われるオンラインの不正送金額を撲滅する」と意気込む。今回はデータサイエンティストやカスタマーサクセスを担当するインターンを募集した。

株式会社グロービッツ・ジャパン

2005年にロサンゼルスにて創業。日米両国で日本企業の海外進出をサポートしている。地方公共団体や行政法人からの委託業務も多数。強みはコンプライアンスビジネスで、医療機器や食品、化粧品、農作物などの海外進出時に監査機関としての役割を担う。インターンの業務はプロジェクトアシスタントで、会議の同行のほか、議事録や提案書の作成サポートを行う。

SimilerWeb Japan

2007年、創業者CEOがイスラエルのガレージで創業し、2013年にあらゆるウェブサイトおよびアプリのトラフィックを可視化する市場調査ツールをリリース。世界8箇所に拠点を持ち、500名の社員が在籍。eBay、Google、Alibabaなど大型IT企業をクライアントに抱える。インターンの業務はマーケティング・ブランディング・セールスの補助作業。ピッチでは「SimilerWebで働く6つのメリット」をアピールし、学生の注目を集めた。

株式会社justInCase

2016年に創業し、P2P方式の保険商品を提供する同社。スマホだけで保険加入から保険金の請求まで一貫して行える「スマホ保険」をはじめ、株式会社第一生命と共に「1日レジャー保険」を提供。ピッチでは、同社がビジネスモデルの理想形とする関西のみそ(頼母子講)になぞらえ、「ご近所さんから味噌もらったことある人? 手をあげて」とプレゼン。代表、畑氏の軽妙なトークに会場から笑いが起きた。インターンの役割は明確に決めず、本人の強みを活かす方針。

株式会社スペースシフト

2009年に創業し「宇宙×AIで世界をひもとく」をテーマに事業展開を行う同社。シニアメンバーが多く、平均年齢は52歳。今後開発が進んでいくSAR衛星の画像を処理するAIソフトウェアを開発し、24時間365日、全世界の地表データを取得可能な世界を目指す。インターンのポジションはデータ解析のAIエンジニアで、役員とインターンのみで上場を狙うことも視野に入れているという。

株式会社ZENKIGEN

「テクノロジーを通じて人と企業が全機現できる社会の創出に貢献する」というビジョンを掲げる同社。AI×HRの領域で、採用の生産性向上を支援するWeb面接ツール「HARUTAKA(ハルタカ)」や、面接体験を改善する面接官サポートAI「ZIGAN」などを提供する。代表の野澤氏はサイバーエージェントやソフトバンクグループの社長室で新規事業の立ち上げを行い、創業2年で200社の顧客を獲得。インターンに求める役割はオープンポジション。

テトラ・アビエーション株式会社

2018年に創業し、1人乗りのパーソナルヘリコプターを開発する同社。世界各国のメーカーと協力しながら、2025年までに航空機として認定取得と販売を目指す。フルコミットメンバーは6名で、開発にはプロボノメンバーも参加。2040年に300兆円の規模が予測されるパーソナルヘリコプター業界に日本企業として攻勢をかける。インターンには、ハードウェア開発のポジションを用意。「開発拠点のハワイに明日から行ける人を募集します」とアピールした。

Nauto Japan合同会社

2015年にシリコンバレーで創業した同社。2017年に日本に進出し、180億円規模の資金調達を獲得、自動運転の分野でIoTプロダクトの開発を進める。戦略的パートナーにトヨタ自動車、BMW、GMなど。現在開発中のプロダクトはドライブレコーダーを活用した事故防止機能。人の表情や外の景色を演算して、AIがドライバーに警告を送り、衝突事故を未然に防いでトランスポーテーションの安全化を目指す。インターンに求める役割はフリーポジション。開発やマーケティングなど、本人の特性に合わせる方針。

Netskope Japan株式会社

Netskopeは業界No.1のクラウドセキュリティプラットフォーム。 サポートしているSaaSの数、導入オプションの豊富さには定評があり、クライアントのクラウドセキュリティを可視化/制御している。グローバルでは1000名以上の社員を抱えており、ユーザー数は2000万を超える。インターンのポジションはクラウドリスクアナリスト・営業サポート・技術サポートなど。「外資系ベンチャーで働くメリット」を学生にアピールした。

VANTIQ株式会社

同社が提供するのはアジャイルプラットフォーム。IoTの普及に伴い、情報量が爆発的に増加する社会に対応するため、複数のリアルタイムシステムを動的に管理するシステムを開発する。米法人は2014年に、日本法人は2019年に設立。インターンにはtoB向けセールス・マーケティングのサポートポジションを用意する。

株式会社Holmes

リーガルテックの分野で、契約マネジメントシステムをSaaSとして開発提供する同社。「世の中から紛争裁判をなくす」をミッションに掲げ、サービス提供開始からわずか2年で約200社を超える企業への導入実績を誇る。また、従業員数も1年で10名から50名へと拡大し成長著しい。ピッチでは相互に承認するカルチャーを同社のインターンがアピール。今回はコンテンツマーケティングやカスタマーサポートのポジションを募集した。

株式会社レシカ

2018年に創業した同社は、ブロックチェーンを用いた産業応用モデルケースの確立とフランチャイズを展開する。同社のカバー領域は「版権管理とデジタルコンテンツ流通」「個人データのセキュリティと流通」「IoTとデータマーケットプレイス」など幅広い。募集ポジションはコンサルタントサポートとエンジニアだ。

企画:阿座上陽平
取材・編集:BrightLogg,inc.
文:鈴木雅矩
撮影:戸谷信博