2021年12月15日、三菱地所が運営するEGG JAPANのビジネスコミュニティ「東京21cクラブ」と、イベント・コミュニティ管理サービス「Peatix」が共同開催する「Founders Night Marunouchi vol.34」を実施しました。(前回のイベントレポートはこちら )。
このイベントは、スタートアップの第一線で活躍する経営者の経験から学びを得るもの。
今回登壇いただいたのは、株式会社AirX代表取締役の手塚究さん。同社は「空を身近に、人生が豊かに」をミッションに、空の交通デジタルプラットフォームの開発に取り組んでいます。
今回のイベントでは、創業の経緯やこれまでの苦悩、また今後の展望などを語っていただきました。Peatix Japan取締役の藤田祐司さん、東京21cクラブ運営統括の旦部聡志がモデレーターを務めます。
INDEX
・ヘリコプターで人々のライフスタイルを変革したい
・誰もが当たり前に「空を使って移動する」世界へ
ヘリコプターで人々のライフスタイルを変革したい
ヘリコプターチャーター(貸切)専門の予約サービス「AIROS(エアロス)」や、ヘリコプターによるクルージングの予約ができる「AIROS Skyview(エアロススカイビュー)」など、複数のプラットフォームサービスを運営するAirX。同社はこれらのサービス提供を通じて、「誰もがより簡単にヘリコプターを予約し、活用できる社会」の実現を目指していると言います。
2015年に同社を創業する以前は、デジタルマーケティングの支援などを行うフリークアウトで、マーケターとして働いていた手塚さん。同氏があえて「ヘリコプター」を事業ドメインに選択した背景には、「次の時代を代表する市場をつくりたい」という想いがあったと話します。
<株式会社AirX代表取締役 手塚究さん>
手塚「私たちは日々、移動に少なくない時間を使っています。その中には移動をより効率よく、楽しい時間にしたいと思っている人たちも多くいるのではないか。その課題をどうすれば解決できるかを考える過程で、空路を使った移動の可能性にふと気づきました。
もし『ヘリコプターを使った移動』が選択肢として当たり前の時代をつくることができたら、多くの人が移動時間を削減できるだけでなく、移動そのものをより楽しめるのではないか。そう思い立ち、空が持つ事業領域としての可能性にかけてみようと決めました」
手塚さんは、移動手段としてのヘリコプターが持つ利点は数多くあると続けます。中でも空いている草地や芝地、アスファルトなど、さまざまな場所に離着陸できることは、他の移動手段にはない強みだと言います。
手塚「新幹線や飛行機などでは直接のアクセスが難しかった場所にも、ヘリコプターを使えばよりスムーズに行けるようになります。加えて、自動車と比べて約4分の1の早さで目的地まで移動できる点も特徴です。たとえば、東京から箱根までは車だと2〜3時間ほどかかりますが、ヘリコプターを使えば約30分で到着できます。
移動時間が削減された分、より多くの時間を現地での観光などに使えるようになる。さらに、長時間移動による疲れも軽減されます。移動がより効率よくなることで、私たちが得られるものは少なくないはずです」
「『空を使った移動』を次の時代のスタンダードにしたい」と力強く話す手塚さん。一方で、未開拓の市場に挑むうえで、特に創業期は多くの苦悩があったと言います。
手塚「ヘリコプターやドローンなど、空を利活用する事業を立ち上げる際、ハードルの一つとなるのが法律面です。複雑に絡み合う法を理解しながら事業をつくり上げていく難しさを痛感しました。
また、先行事例も非常に少なく、だからこそ周囲から共感や理解を得られない状態が続きました。ヘリコプターの運航をお願いするために航空会社を訪れても、話さえ聞いてもらえないこともありました。
それでも、目指す未来を愚直に語り続けることで、少しずつ協力していただける方々が増えていきました。自分たちが目指す世界をより解像度高く理解してもらえるよう、粘り強くコミュニケーションし続けることの大切さを、創業初期の経験から学びましたね」
誰もが当たり前に「空を使って移動する」世界へ
手塚さんたちの粘り強い取り組みが身を結び、同社はこれまで数々の企業との提携を実現してきました。
2021年10月には京浜急行電鉄と資本業務提携を締結。エアモビリティを使った新たな観光プランを創出するだけでなく、スカイポートの設置や空飛ぶクルマの商品化なども目指していると言います。
他にも、災害時の対策に向けた広島県や神奈川県海老名市との災害協定締結や、空飛ぶクルマの実現に向けた官民協議会への参加など、これまでの経験を活かしたより幅広い連携の動きも見せています。
世界に目を向けてみると、2023年にはエンジンの代わりに電気の力で飛ぶ「電動航空機」の実用化が予定されています。そうした潮流に伴い、ヘリコプターの開発もコスト構造が改善されるだけでなく、より環境に配慮した機体の登場が見込まれていると言います。
こうした社会の流れも踏まえ、「今後はより加速度的に、ヘリコプターに対する需要が高まっていくはず」と話す手塚さん。最後には今後の展望を語り、イベントを締めくくりました。
手塚「直近に関しては、大きく「発着場所」と「価格」の二つの観点で、目標の達成を見据えています。発着場所は、現在300ヶ所以上の場所を確保できていますが、今後数年のうちに数千ヶ所にまで増やしていきたい。一方で価格については、遊休機を活用しながらより稼働率を上げることで、ハイヤーを借りるのと同じかそれ以下の金額で提供できる状態を目指します。
私たちが成し遂げたいのは、100年後誰もが『もう空の移動がなくては生活できないよね』と言っているような世界の実現です。まるでタクシーを使うように当たり前に、多くの人がヘリコプターを活用しているような状態とも言えるかもしれません。開拓が困難な領域であるからこそのやりがいも感じながら、理想の世界に向けて歩みを進めていきたいと思います」
<イベントはライブ配信も行われました>
▼当日のセッション
『空の移動が身近なライフスタイルとは。』
https://youtu.be/pdxMerfVRic