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フードデリバリーで成長を遂げたスカイファーム・木村氏が“2度目の起業”で目指す理想とは――Founders Night Marunouchi vol.30(オンライン)

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2021年8月25日、三菱地所が運営するEGG JAPANのビジネスコミュニティ「東京21cクラブ」と、イベント・コミュニティ管理サービス「Peatix」が共同開催する「Founders Night Marunouchi」を実施しました。(前回のイベントレポートはこちら )。

このイベントは、スタートアップの第一線で活躍する経営者から学びを得るもの。

今回登壇いただいたのは、スカイファーム株式会社代表取締役CEOの木村拓也さん。同社は、横浜みなとみらいエリアのフードデリバリーサービス「NEW PORT」や、丸の内エリアの手土産デリバリーサービス「TANOMO GIFT」、など計4つのサービスを展開しています。

木村さんは、大学卒業後にWebCM制作会社を創業。その後、外資系IT企業、楽天株式会社の勤務を経て、2015年7月にスカイファームを創業しました。

どのような経緯でフードデリバリー事業を始めるに至ったのか。また、競合が多いなかでどのように差別化を図っているのか。Peatix Japan取締役の藤田祐司さん、東京21cクラブ運営統括の旦部聡志がモデレーターを務め、たっぷりと話を伺いました。

INDEX

“持ち株比率”がきっかけで招いた、組織の空中分解
お店とお客様の「より良い関係性」を増やしたい

“持ち株比率”がきっかけで招いた、組織の空中分解

イベント序盤、木村さんが語ったのは1度目の起業で味わった苦い経験でした。

木村さんはサンフランシスコ州立大学に在学中、動画コンテンツ配信を行うベンチャー企業でインターンを経験。大学卒業後に日本へ帰国し、大学時代の先輩を含む4人でWebCM制作会社を共同創業しました。

共同創業時に「創業メンバー全員の持ち株比率をほぼ均等にする」ことを決めたと話す木村さん。しかし、この決定が失敗の一つだったと振り返ります。

「持ち株比率をほぼ均等にしたことで、最終的な決定権を持つメンバーが実質的にいない状態でした。その結果、会社としての意思決定が必要な場面で、意見がまとまらないことが増えていきました。

『来月にもキャッシュが尽きてしまう』というピンチのときでさえも、誰が何をやることでこの状況を乗り切るのか、意見がまとまることはありませんでした。いわば、組織の空中分解に近い状況だったと思います」

結局会社は解散を余儀なくされ、木村さんは外資系IT企業へ入社することに。このとき、「もう2度と起業はしない」と自分自身に誓ったといいます。しかし、その後転職した楽天で転機が訪れました。

「楽天ではWebマーケティングの業務に従事しており、その仕事を通じてスタートアップを支援する機会も何度かありました。

あるとき、自分がサポートしていたスタートアップが急成長を遂げる姿を目の当たりにしました。その成長角度の大きさに、思わず衝撃を受けてしまって。それ以来、じわじわと『自分ももう一度挑戦したい』という気持ちが強くなっていきました」

お店とお客様の「より良い関係性」を増やしたい

2度目の起業に踏み切った木村さんが最初に構想したのは、野菜の宅配サービスでした。具体的には、生産者が青果店などを経由せず、Webを通じて直接家庭に野菜を届けられるサービスを検討していたといいます。

サービス立ち上げのヒントを探るべく、木村さんは自ら半年間にわたって青果店に勤めることを決めます。この試みこそが、現在の主力事業であるフードデリバリーサービスの実現に至る最初の一歩だったと振り返ります。

「店を訪れたものの野菜を何も買わなかったお客様に、なぜそうしたのかヒアリングを重ねていきました。するとその理由のほとんどが、使い切れないことへの不安や調理の面倒さだとわかったのです。次第に、そうした根本的な課題が解決されないまま野菜の宅配サービスをつくっても、成功は難しいだろうと感じるようになりました。

その一方で、青果店には日々多くの料理人たちも訪れていました。彼らと話していると、『野菜そのものだけでなく、その野菜を使った料理も配達してみたらどうか』と提案してもらうことが徐々に増えていって。それがきっかけで、フードデリバリー事業に強く興味を持つようになりました」

そしてスカイファームの創業から約1年半が経過した2016年12月、「LANDMARK SHIPPING」をローンチします。これは、横浜ランドマークタワー内にある飲食テナントの商品を、同じくタワー内に入居する法人テナント勤務者に向けて届けるデリバリーサービスです。

商業施設内にクライアントを絞るにあたり、木村さんがこだわったのは「配達の品質」でした。デリバリーで届けられる料理であっても、商業施設を訪れたときとできるだけ近い体験を味わってほしい。そう考えた木村さんは、ある思い切った決断に出ます。

「デリバリーを担当するスタッフを全員、自社で雇用することにしました。具体的には、百貨店の勤務経験者や接客経験者など接客の経験が豊富な方々を、弊社サービスの配達スタッフとして採用しています。

結果として、配達の品質へのこだわりを信頼し、サービスの利用を継続してくれる方々が着実に増えてきている。こだわりが自然と、競合サービスとの差別化にもつながっていると実感しています」

「LANDMARK SHIPPING」はローンチ以来、順調にサービスとしての成長を続けていきました。しかし、2020年に入り新型コロナウイルスの流行がもたらしたダメージの大きさは、木村さんの想像を超えるものだったと振り返ります。

「商業施設の一斉休業により届ける商品がなくなってしまった一方で、在宅勤務の普及で届ける相手までもいなくなってしまい…、一時はバーンレートもかなり高くなり、会社としても予断を許さないような状況が続きました。

しかし、株主や協業先の皆様にも協力をいただきながら、自宅配達も可能なフードデリバリーサービスを新たにリリースするなどの試行錯誤を重ね、なんとかピンチを乗り切ることができました。今では、全社の売上が上昇傾向になるまで持ち直せています」

この後、話題はスカイファームが見据える展望へと移っていきます。スカイファームが描く青写真について、木村さんが意気込みを語り、イベントは締めくくられました。

「私たちが目指すのは、一つでも多くのお店が、お客様とより良い関係性を築ける世界をつくることです。飲食店をはじめとした『お店』と『お客様』がお互いをより信頼し、支え合えるような関係性を、世の中に一つでも多く増やしたいと思っています。

そのために、今後はデリバリーに限らず、テイクアウトやテーブルオーダーのサービス提供などにも挑戦したいと考えています。今後も理想の実現に向けて、柔軟にチャレンジを続けていくつもりです」

▼当日のセッション
『デリバリープラットフォームが創造する新たな価値』
https://youtu.be/qNGtPleZxSE

●転載元記事:https://www.egg-japan.com/event_report/5026