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First Penguin vol.7 SEQSENSE株式会社・中村 壮一郎の考える「世界を変えないロボットとは?」

読了時間:約 4 分

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かつて日本人にとってロボットは、“世界を変える”ヒーローでした。困りごとを解決するネコ型ロボットからヒト型ロボットまで、人々はヒーローが世界を変えていく姿に熱狂し、明るい未来を夢見ていました。しかし、今回お話を伺ったSEQSENSE株式会社(シークセンス)はロボット事業を行いながらも「世界を変えない。」をミッションとしているといいます。スタートアップというと、世界を変える事を目指すイメージを持ちますが、世界を変えないというのは、どういうことなのか。その真意に迫るべく、事業内容から起業の経緯、開発時に大切にする理念について代表取締役の中村 壮一郎さんにお話を伺いました。

新しい分野に果敢に挑戦するスタートアップ経営者を未知なる海に真っ先に飛び込む1羽のペンギンになぞらえてインタビュー。更新しているのは、Fintechに関連するプロジェクトやコミュニティ、施設を運営する株式会社FINOLABです。スタートアップ経営者に話を聞くYouTube番組「First Penguin(ファーストペンギン)」でも公開しているので、動画もあわせてぜひご覧ください。

「ロボットとは、ジオングである」と語る、SEQSENSEの本質を目指す開発理念にもぜひご注目ください。

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「世界を変えないロボットとは?」インタビュー斜め読み

ここではインタビュー動画本編より5つのやりとりを簡潔にまとめました。回答に対する中村さんの思惑を深掘りしたい方は、ぜひ該当箇所がスポット再生されるURLよりご視聴ください。

Q1. 最初にSEQSENSEの事業内容について教えてください。

A.「『消火器が所定の位置に置かれているか?』『防火シャッターの下に物が置かれていないか?』と確認したり、ビルの入り口などで監視を行ったりする、警備用の巡回・立哨ロボットを開発しています。自律移動型ロボットで、周囲を360度観察できるカメラ映像や写真の撮影を行い、クラウド経由で防災センターに転送することも可能。また、自分で位置を特定できる機能と、3Dマップを作成できる機能を搭載しているので、ロボットに多い2Dではなく人間が普段見ているように周辺環境を認識し障害物などを避けることもできます。現在は、オフィスビルを中心にテストを行い、実証データを蓄積させています」

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Q2. SEQSENSEを起業したのは、どのような理由だったのでしょうか?

A.「私が事業を考えたというより、誘われて関わるようになったら代表になっていたという感じです。元々私は東京三菱銀行(現:三菱UFJ銀行)出身で、転職先に選んだのも外資系の投資銀行。開発寄りの人間ではありませんでした。2012年の独立後に自律移動の研究をされている黒田洋司教授と知り合ったときに『会社を作りたいと思っているから、そのときは手伝ってほしい』と話をいただいていました。その数年後に幅広くITサービスに携わるSIerのTIS株式会社と共同研究をして事業を作るから来てほしいと声をかけられたので行ってみると、ロボットで起業となるとファイナンスが大きくなるから、代表はビジネス関係の人がやったほうがいいよねという話になり、気づけば私が代表に。完全に巻き込まれ事故ですね(笑)」

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Q3. 当初は巻き込まれてということですが、事業自体に可能性を感じていたのでしょうか?

A.「最初は目の前の課題を解決するために動いていたのですが、現場を見て意識が変わりました。将来的に日本の生産人口が40年後に4,000万人減るだとか、人口が一億人減るだとか、みんなマクロでは理解しているのですが、いまいち危機感がない。でも、現場はもっと切迫しています。東京都でいうと、警備員の有効求人倍率が20倍を超えているのが現実です。現場を知って、より必要性を感じるようになりました。我々のミッションは『世界を変えないこと』です。人口が減少し、立ち行かなくなることに対して、テクノロジーを使って解決し、他の人が気づかないうちに『人口減少って言っていたけど、世界って平和だよね』といってもらえる未来を作っていければと思ってロボットを開発しています」

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Q4.さまざまなテストをする中で、どんな改善をし、どんな未来を目指していこうとされているのでしょう。

A.「テストを繰り返しながら、警備という業務に対してどのようにロボットを活用するかを常に考えています。そもそも警備はどんなタスクがあり、各タスクの要件定義とは何なのか、そこにどうアプローチをすべきなのかと、ロボットが介在することで、人的資源を節約し、品質を上げることができるかどうかを地道に分析。その上で、デベロッパーやゼネコン、警備会社などのクライアントには、ロボットを提供して終わりではなく、どういう風に使えば最適なのかまでトータルで提案する必要があるのかなと。テクノロジーとビジネスと、現場とを掛け合わせて提案できるように準備を進めています

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Q5.「ロボットとは、ジオングである」とおっしゃっていましたが、どういう意味なのでしょうか?

A.アニメ『機動戦士ガンダム』で、シャア・アズナブルが初めてジオングというモビルスーツ(ロボット)を前にしたときに「足がついてないな…」というと、整備兵は「あんなの飾りです! 偉い人にはそれが分からんのです!」と言ったことがまさに我々の考えと同じだなと思ったんです。我々は、『ヒト型も、ネコ型も、目指さない。』を開発理念としています。飾りはいらない、本当に必要な機能をつければいいという考え方です。空想するだけではなく、実装して社会的な課題を解決するロボットを開発していきたい。飾りではなく、本当に必要なものをつくっていこうという姿勢を表現した言葉です」

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