なぜEdTech企業がDX人材の育成に挑むのか?ライフイズテックCOOが明かす課題と展望──Founders Night Marunouchi vol.32
2021年10月27日、三菱地所が運営するEGG JAPANのビジネスコミュニティ「東京21cクラブ」と、イベント・コミュニティ管理サービス「Peatix」が共同開催する「Founders Night Marunouchi vol.32」を実施しました。(前回のイベントレポートはこちら )。
このイベントは、スタートアップの第一線で活躍する経営者から学びを得るもの。
今回のテーマは「デジタル教育のスタートアップが大手企業向けDX推進研修プログラムを手掛ける理由」。ゲストには、ライフイズテック株式会社の共同創業者であり、現在は同社の取締役副社長COO兼DX事業責任者を務める小森勇太さんに登壇いただきました。
2021年10月26日に、総額25億円の新規資金調達を発表したばかりのライフイズテック。10年以上にわたりEdTechの最前線を走り続けてきた同社はなぜ、社会人向け研修プログラムの提供に挑むのでしょうか。Peatix Japan取締役の藤田祐司さん、東京21cクラブ運営統括の旦部聡志がモデレーターを務め、開発を決めた背景から今後の展望まで語っていただきました。
INDEX
・EdTech事業で得た経験を活かし、日本のDXを後押しする
・教育への想いを胸に、資金難を乗り越え成長
EdTech事業で得た経験を活かし、日本のDXを後押しする
小森さんがライフイズテックを共同創業したのは2010年。その後2011年から、中学・高校生を対象としたIT・プログラミング教育サービス『Life is Tech ! 』の運営をスタートしました。
『Life is Tech ! 』はアプリやゲーム、Webをはじめとした最新のIT技術やプログラミングを学ぶ機会を提供するサービスです。短期間に集中して学べるキャンプや通年で受講できるスクール、時間と場所を問わず学べるオンライン学習教材など、さまざまな形態の学習機会を提供しています。
『Life is Tech ! 』誕生のきっかけとして、小森さんは創業直後に視察したスタンフォード大学・サマーキャンプでの光景を挙げました。目にしたのは、スマートフォンアプリを自らの手で作る小学生たちの姿。子供たちの楽しそうな表情を見て、「日本の子供たちが、ITやプログラミングを体験しながら学べる環境を作りたい」という想いが生まれたと言います。
<ライフイズテック株式会社 取締役副社長COO兼DX事業責任者 小森勇太さん>
それから約10年が経過した2021年7月、同社は企業向けにDX人材育成研修プログラムの提供を開始しました。サービスを始めた背景には、小森さんが事業を運営する中で抱いた違和感があったと言います。
「『Life is Tech ! 』では、大学生が中高生のメンターとして指導にあたっています。そのメンターたちに卒業後の進路を聞いてみると、マイクロソフトやヤフーをはじめとした、いわゆるテックカンパニーの名前が多く挙がることに気づきました。
もちろんそれ自体が悪いことではありません。しかし、ITやテクノロジーに明るい学生たちの就職先が、一部の企業に偏ることに違和感を覚えたのです。
DXを推進する人材の不足に悩む企業は少なくなく、社会課題の一つにもなっています。テクノロジーに強い人材がテックカンパニーに集中し続けるようでは、この社会課題は解決されないかもしれないと感じました」
そこで小森さんが考えたのが、企業向けの研修プログラムの提供でした。10年以上にわたる『Life is Tech ! 』の運営で培った実践知を活かし、企業ひいては日本のDXを推進する人材を育てるためのサービス『DXレディネス研修』を開発したのです。
<同社が提供する『DXレディネス研修』は、実践機会を軸にプログラム設計されている点が特徴の一つ>
教育への想いを胸に、資金難を乗り越え成長
『DXレディネス研修』の提供開始に向けて、新規メンバーの採用を中心とした体制整備を進めてきたという小森さん。学びの機会を届ける対象が子供から大人に変わったとしても、ライフイズテックが提供すべき価値の本質に変わりはないと語ります。
「私たちがサービスを通じて提供するのは、学び手にとって最良の『体験』です。この体験のことを、ライフイズテックでは『ラーニングエクスペリエンス』と呼んでいます。
ラーニングエクスペリエンスの向上を追求する理由は、人が学習を主体的に続けるために最も大切な要素が『楽しむこと』だと考えているからです。学びの機会や場を届ける側の私たちが、どれだけプログラム全体の設計を考え抜けているか。それ次第で、学び手にとっての楽しさは大きく左右されます。それは届ける相手が子供でも大人でも変わらないはずです」
メンバー全員が最高の体験を届けることへの苦労を惜しまない背景には、一人ひとりが持つ教育への熱い想いがあると話す小森さん。一方で、全員が高い熱量で開発に取り組むからこそ、想定以上に時間を費やしてしまい、気づけば資金が底を突きそうになったこともあったと言います。
資金難の壁を乗り越えられた要因の一つとして、小森さんは「自分たちのミッションに常に立ち返りながら、誠実に取り組んできたこと」を挙げました。
「苦しいときこそ『中高校生ひとり一人の可能性を一人でも多く最大限伸ばす』というミッションに立ち返り、メンバーの目線を合わせるように心がけています。資金難に陥ったときも、まずは自分たちが目指す先を改めて確認することから始めました。
時には投資家の方とお互いに涙を流しながら、ライフイズテックが本当に成し遂げたいことを伝え、未来について語り合ったこともありました。繰り返し本質的な目的に立ち返りながら、ファイナンスに強いメンバーを採用するなどの試行錯誤も続けてきたことが、事業成長を通じた理念の体現につながっていると感じています」
いくつもの苦難を乗り越えながら、EdTech領域の国内リーディングカンパニーとして、着実な事業成長を遂げてきたライフイズテック。小森さんは今後の展望について、「私たちが運営する既存サービスと新事業を連動させることで、子供から大人までより多くの人が長きにわたって『Life is Tech ! 』で学び続けられるような仕組みを作りたい」と語り、イベントを締めくくりました。
▼当日のセッション
『デジタル教育のスタートアップが大手企業向けDX推進研修プログラムを手掛ける理由』
https://youtu.be/lgqC_zxvQVg
●転載元記事:https://www.egg-japan.com/news/report_tag/event-report