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「脳科学×AI」を応用した触覚表現技術を通して、デジタルコンテンツと人とのイントラクションに新たな革命を───Founders Night Marunouchi vol.47

読了時間:約 4 分

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2023年2月22日、三菱地所が運営するオープンイノベーションコミュニティ「The M Cube」が主催する「Founders Night Marunouchi vol.47」を実施しました。

このイベントは、スタートアップの第一線で活躍する経営者の経験から学びを得るもの。

今回ご登壇いただいたのは、株式会社ミライセンスのコファウンダー・代表取締役の香田夏雄さんです。同社では、産総研の技術をベースに、錯覚を用いて触った感覚をデジタルで表現する「3DHaptics技術」を研究・開発しています。

「デジタルコンテンツと人とのイントラクションに、大きな革命を起こしたい」と語る香田さん。一体どのように実現していくのでしょうか。またそれを実現する「3DHaptics技術」とはどのような技術なのでしょうか?

モデレーターを務めたThe M Cube運営統括の旦部聡志と運営担当の鈴木七波が迫りました。

INDEX

空中で「触覚」を感じる技術で、バーチャル空間をよりリアルに
幅広いテーマでシナジーを生み出し、新たな世界を作っていく

空中で「触覚」を感じる技術で、バーチャル空間をよりリアルに

ミライセンスは、触覚をデジタルで表現する次世代の技術「3DHaptics」を研究開発しています。

Haptics(ハプティクス)とは、利用者に振動や刺激を与え、「実際にモノに触れているような感触」を再現する技術のこと。たとえばiPhoneのホームボタンに触れた際、「クリック」しているように感じるのは、Hapticsの機能が搭載されているからです。

またその中でも、同社は空中で触覚を与える「3DHaptics技術」を開発しています。指1本分ほどの大きさのデバイスから流れる振動で、引っ張ったり押したりなどの「力覚」、固い・柔らかいなどの「圧覚」、ザラザラや凹凸感などの「触覚」を表現するといいます。

香田さんは1993年に新卒でソニーに入社。その後約15年間にわたり、3DCGの研究開発をしながら、映像や音声を応用した商品開発に従事していました。

その最中、のちにミライセンスを共に創業する中村則雄さんが開発した「3DHaptics」と出会ったことが、起業のきっかけになったといいます。

香田さん「当時からソニーが開発に取り組む技術は、業界では最先端で非常に優れたものばかりでした。しかし、映像や音声での表現に限界を感じ、個人的にどこか『やり尽くした感』を覚えていました。

一方で、ゲームの世界では音声や映像がどんどんリアリティを増してきていました。しかし『きれいだな』と思って映像の中にあるものに触れようとしても、当然ながら触れられない。その事実が、より大きなリアリティを生むための障害になっている気がして、残念に感じていました。

そんな時に、中村の技術に出会いました。彼が開発していたのは、脳に錯覚を与えて触覚をデジタルで表現する『3D触力覚技術』。触覚を再現する技術を使えば、ゲームの世界の中にあるものにも触れられるようになり、よりリアリティを伴った体験が実現できると思いました」

香田さんは2014年、中村さんと共にミライセンスを創業。「デジタルコンテンツと人とのインタラクションに、大きな革命を起こし、新しいライフスタイルを作ること」を目標に掲げ、技術の開発を進めていきました。

幅広いテーマでシナジーを生み出し、新たな世界を作っていく

2019年には、Hapticsの技術を世の中により広めていくために、ハードウェアを開発する電子部品メーカー「村田製作所」の子会社として、パートナーになることを決意しました。

次世代の技術を開発する会社として、多くの注目を浴びてきたミライセンス。しかし、それだけではビジネスとして成立させる上での限界があったといいます。

香田さん「私たちの技術は、ありがたいことに多くの人から『非常に面白い』と注目いただいています。たとえば、展示会に出展すると常に30分〜1時間待ちになることもあり、『こんなに人気なら売れるだろう』と当時は思っていました。

しかし実際は、思い通りには売れない日々が続きました。Hapticsが世の中にまだ存在しない技術だったため、お客様に技能の効能や作用を説明し、理解してもらうことが難しく、結果として成約までつながらないケースが数多くありました。

それまでの反省を活かし改善したのが、お客様とのコミュニケーション内容です。具体的には、『技術の優れている点』を説明するのではなく、『この技術を使うとあなたの作業がこれだけ簡単になります』と、お客様にとっての効能をより具体的に、直感的に分かりやすく、伝わるように工夫しました。その結果、それまで以上に技術の必要性を理解してもらえるようになり、ビジネスとしても徐々に拡大していくことができました」

香田さんはこうした失敗と振り返り、そして改善の経験から学んだことがあると言葉を続けます。

香田さん「たとえ注目される技術があったとしても、それがビジネスとして売れるかどうかは別問題です。

特にディープテック系の企業は、資金繰りや特許の取得、マーケティングや営業など、技術開発以外でも、やるべきことがたくさんあります。世の中にはそれを知らない人や、やりきれずに終わってしまう会社が多い。技術よりも、それらをやり切れるかどうかが、事業が成功するかどうかを大きく左右すると感じました」

現在はゲームだけでなく、XR・VR領域からメディカル、ヘルスケアまで、コンテンツやデバイスを持つ顧客に向けて、さまざまな技術を提供している同社。まだプロダクト以前のアイデア段階でも、顧客にヒアリングし素早く形にすることで、スピーディーな技術活用の提案を実現しているといいます。

最後に、香田さんはこれまでの内容を踏まえながら、同社が見据える今後の展望について語りました。

香田さん「ますます幅広い領域の方からご相談をもらうことが増えてきて、今まさに村田製作所とのシナジーが、これまで以上に生まれてきています。今後はさらに多くのシナジーを生めるよう、国立の研究所や海外の研究、プラットフォーマー、部品メーカー、デザイナー、クリエイター、インキュベーション施設など、周囲のステークホルダーとより連携を強くしながら、事業をより前に進めていきたいと思っています。

また、脳科学の研究やコアなツール製作などを通じて事業を成長させ、私たちの掲げる目標の達成へと共に向かってくれる仲間も、随時募集しています。共感してくれる人や企業をより多く巻き込みながら、新たな世界を作っていきたいです」

▼当日のセッション
『最先端のアクチュエーターテクノロジー』
https://youtu.be/uPD7ysB_kZA

転載元記事:https://www.the-mcube.com/journal/6210