TO TOP

一生、絵を描き続けたい――クリエイターの救世主!労働環境の改善を目指すデバイス「Orbital2」の挑戦――Founders Night Marunouchi vol.21(オンライン)

読了時間:約 4 分

This article can be read in 4 minutes

※本稿は「EGG JAPAN」に掲載された記事を転載したものです。

2021年1月27日、三菱地所が運営するEGG JAPANのビジネスコミュニティ「東京21cクラブ」と、イベント・コミュニティ管理サービス「Peatix」が共同開催する「Founders Night Marunouchi」を実施しました(前回のイベントレポートはこちら)。このイベントは、スタートアップの第一線で活躍する経営者から学びを得るもの。

今回登壇いただいたのは、株式会社BRAIN MAGIC代表取締役の神成大樹(かんなり・だいき)さん。同社は、キーボードでのショートカットキー操作なしに作業を可能にする左手用のデバイス「Orbital2」の事業を展開しています。Orbital2は、「倒す」「傾ける」「押す」の3つの動作で、クリエイターの生産性向上や腱鞘炎の解消などをサポートします。

学生時代からイラストレーターとして働いていた神成さん。憧れだった職業についたものの、仕事をする上で、ある大変さを抱えていました。クリエイター同士で集まると、健康管理にまつわる会話をすることが多かったのです。なかでも、椅子の座り心地や痛み止めなど、肉体労働の改善策について話題に登ることが多くあったそう。少しでも長く働ける環境を作れないか。そんな想いから様々な研究を重ね、Orbital2の開発にいたっています。

イラストレーターであった神成さんがどのようにして経営者になったのか。そして、事業立ち上げに至るまでにどのような苦労があったのか。Peatix Japanシニアコミュニティマネージャーの畑 洋一郎さん、東京21cクラブ運営統括の旦部聡志がモデレーターを務め、イベントは開催されました。

INDEX

「ずっと絵を描き続けるためのプロダクトをつくりたい」
一つずつ壁を乗り越え、クリエイターから経営者に

「ずっと絵を描き続けるためのプロダクトをつくりたい」

「20~30年後も絵を描き続けたいからこそ、クリエイターの労働環境を改善したい」

もともと友人とともにクリエイティブ会社を起業していた神成さん。しかし、経営に関するノウハウがなく、デジタルハリウッド大学に通い始めたことが、Orbital2を開発するきっかけとなりました。そこで、簡単なプロダクトの試作品を作る「プロダクトプロトタイピング」の授業に参加し、事業立ち上げのヒントをひらめきます。

「LEDを光らせたり、モーターを動かしたりなど、簡単なモノづくりを授業で学びました。これらを発展させたら、クリエイターの課題を解決するプロダクトも作れるのではないか。そう思い、授業が終わった瞬間に先生と相談し、一緒に開発することになりました」

試行錯誤を重ねる中、ある出来事をきっかけにOrbital2の原型を思いついたといいます。

「たまたま新宿のパスタ屋で透明な胡椒ミルが置いてありました。はじめは回しても胡椒が出なくて。傾けて回したときに胡椒が出てくる様子を見て、『これはセンサーだ』とひらめきました。胡椒が入っているようにプロダクトの内部を操作すれば、複数の機能を持ったセンサーを作ることができ、クリエイターの役に立てるのではないかと思いました」

早速、試作した神成さん。3Dプリンターで作った1個10万円のプロトタイプを周囲に見せてみると、「欲しい」という声が多く上がったそうです。そこから製品化の道に向かいました。

一つずつ壁を乗り越え、クリエイターから経営者に

そんな流れで、2016年2月に創業したBrain Magic。「プロダクト開発から製品化に至るまでにどんなな苦労があったのか」と、モデレーターの畑から問いが投げかけられました。

製品化を目指したときに、実現するためには3000万円ものお金が必要であることが判明しました。当時は、投資家やベンチャーキャピタルの存在も知らなかったという神成さん。デジタルハリウッド大学の先生から「会社に投資してもらうしかない」というアドバイスをいただきき、そこから事業計画書の作成やプレゼンの準備に取り組んだそうです。

「投資家に会ってはプレゼンを繰り返して、なんとか投資してくれる人を探しました。一つずつ壁にぶつかっては、なんとか乗り越える日々。そうやって、製品化にこぎつけました」

経営者としての道を歩むなかで起きた大きな失敗も、神成さんに語っていただきました。

「リリース日、会社側のミスでサーバにアクセスが集中し、楽しみにしていただいたお客様が利用できないという時間が続きました。そこで、2日間かけて一人ひとりにメールサポートをしていきました。夜中に届く問い合わせにも15分くらいで対応していたところ、『みなさんの体が心配なので、ぜひ休んでください』と心配されるほどでした(笑)。

そこから、ユーザーサポートには特に力を入れていて、Twitterで1時間に1回くらいはエゴサーチをかけています。たとえば、『使いモノにならなかった』とレビューされている方には徹底的にアフターサポートを行い、機能の提案をしてくださった方の声を実際に反映するなど、お客様と一緒にプロダクトをより良いものにしていくことを意識していきました」

今後は、取得した特許をもとに医療やドローンなどへの事業展開を検討しているほか、新たなプロダクトも発表予定。最後に「従来のセンサーに比べ、安価に置き換えが可能なため、いろんな課題解決に取り組みたい」と抱負が語られ、イベントは締めくくられました。

次回のFounders Night Marunouchiは、2月後半にオンラインで開催予定です。詳細については近日中に本サイトEVENT INFORMATIONページにてお知らせいたします。初めての方でも大歓迎です!お気軽にお申し込みください。

●転載元記事:https://www.egg-japan.com/event_report/4371