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誰もが気軽に「脳ドック」を受診できる社会へ――医療に新たな価値を生み出す、スマートスキャンの展望――Founders Night Marunouchi vol.22(オンライン)

読了時間:約 4 分

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※本稿は「EGG JAPAN」に掲載された記事を転載したものです。

2021年2月10日、三菱地所が運営するEGG JAPANのビジネスコミュニティ「東京21cクラブ」と、イベント・コミュニティ管理サービス「Peatix」が共同開催する「Founders Night Marunouchi」を実施しました(過去のイベントレポートはこちら)。このイベントは、スタートアップの第一線で活躍する経営者から学びを得るもの。

今回登壇いただいたのは、スマートスキャン代表取締役の濱野斗百礼さん。同社は、予防医療の普及を掲げ、低価格で利用できる自費診断の脳ドック健診サービス「スマート脳ドック」を提供するクリニック事業を展開しています。

濱野さんは、楽天株式会社にて執行役員、同社グループのリンクシェア・ジャパン株式会社にて代表取締役社長を務めた後、2017年にスマートスキャン株式会社を設立しました。

なぜ脳ドックに注目したのか。そして、脳ドックをどのように普及させていくのか――。Peatix Japan 取締役 藤田祐司さん、東京21cクラブ運営統括の旦部聡志がモデレーターを務め、同社が実践するマーケティングの工夫について伺いました。

INDEX

誰もが気軽に「脳ドック」を受診できる社会をつくりたい
データを活用し、医療に新たな価値を生み出したい

誰もが気軽に「脳ドック」を受診できる社会をつくりたい

濱野さんが脳ドックを知ったのは、楽天で務めていた頃。MRIを保有している医師から「運転従事者で脳ドックを受診している人は少ないため、脳の疾患による運転事故が起こるリスク評価ができていない」という話を伺ったと言います。

「当時は、脳ドックを1回受診するのに4~5万かかり、とても企業が負担できるものではありませんでした。もっと安くしなければ、日本にいる約250万人の運転従事者は受診できない。そういった危機意識を持ったことを覚えています」

そこで、医師から減価償却が終わったMRIでの診断を1回1万円で20枠もらった濱野さん。楽天会員向けに簡単なメールフォームを作り、「1万円で脳ドックが受診できます」とテストマーケティングを実施したところ、2日間で500人もの応募が集まりました。

「これはビジネスになる」そう感じた濱野さん。調べてみると、脳ドックに関する事業はほとんど競合がいません。そこで、お客様が受診したデータがストックされていく仕組みをつくることができたら、健康診断のように毎年継続して受診してくれるようになるのではないか、と考えたそうです。


「スマート脳ドッグ」の特徴

ビジネスモデルを模索する中で、濱野さんは病院のMRIの空き時間を活用したシェアリングエコノミーを思いつきます。さっそく大きな病院を3件回りましたが、全て断られたと言います。

「外来受診は夕方で終了し、あとは暇だと思っていました。ところが、実際は入院患者の検査なども行っていて、MRIが空いている時間はありません。また、脳の画像を取るための放射線技師や画像を読む読影医も必要でした。挙げ句の果てには、『医療機器は健康的な人を取るものではなく、患者のためにある』と言われ、怒られて帰ってきたこともありましたね」

さまざまな壁にぶち当たった濱野さんでしたが、実現後の世界を思い描き、どうしてもやりたいという気持ちが勝ったと言います。そして、どうにかしてMRIを購入する糸口と協力してくれる会社を見つけ、楽天を退社。スマートスキャンを創業し、今日のサービスの提供にいたりました。

データを活用し、医療に新たな価値を生み出したい

イベントの後半では、スマートスキャンの脳ドックを受けたことがある旦部から、「ビジネスモデルが分かりやすいだけでなく、予約、受診から結果を受け取るまでのオペレーションも秀逸です。何か工夫されていることはあるのでしょうか?」という質問が濱野さんに投げかけられました。

「シンプルなオペレーションを心がけています。一般的な診療は、病院内で問診票を書き、MRIで複数の体の部位を撮影するため、滞在時間も比較的長い。しかし、スマート脳ドックは、滞在時間を短くするために、問診票を事前にWeb上で記入。MRIを使った撮影は脳に限定しています。脳ドックの撮影は10分強のため、1時間で4人ほど対応が可能です。

他にも、コストを削減するために、脳の解析を行う読影医をアルバイトで雇用。遠隔で画像解析を実施し、その枚数に応じて給料を支払う形にしました。一方で、お客様の体験については、コスト関係なく、サービスに満足いただけるような工夫をしています。たとえば、検査結果には必ず医師からのコメントを入れるようにしていますし、特に以前も受診してくださった方には必ず前回の脳画像と比較したコメントをつけるなどを徹底しています」

また、マーケティングコストを下げるための工夫についても紹介してくれました。

「当社の脳ドックでは、撮影した画像が10分後にはクラウドに上がり、そのデータをお客様にお渡ししています。データ形式でお渡しすると、普段はなかなか見られない自分の脳の画像を家族や友達に見せたくなりますよね。中にはSNSに投稿して、拡散してくださる方もいます。このような形で広告などを出さなくても、受診者からの口コミや紹介でサービスを使っていただくことが多くなりました。しかしながら、通常の脳ドックに比べて安く診断できるものの、1万7500円の受診料をすぐ出せる人は少ないものです。そのため、実際の受診者からの口コミや拡散は、ユーザーの背中を押してくれるきっかけとなり、大変効果的なマーケティング手段と考えています」

今後は、蓄積されたデータを活用したビジネスが鍵になるという濱野さん。「これからも脳ドックを受診できるクリニックをプロデュースし、得られたデータを活用してさまざまな企業とコラボしていきたいです」そのような想いを語り、イベントは締めくくられました。

●転載元記事:https://www.egg-japan.com/event_report/4387