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自動車〝新〟市場の原動力 モビリティ系ベンチャーがパラダイムシフトの主役に | Morning Pitch vol.380

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※本稿はSankeiBiz Fromモーニングピッチ を転載したものです。

デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためオンライン開催となっていますが、いずれ会場(東京・大手町)でのライブ開催に戻す予定です。
モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回はモビリティで、自動車のCASEと空飛ぶクルマの領域に焦点を当てます。

900兆円の新市場が誕生

三菱総合研究所の調査によると、2018年の世界の自動車関連市場規模は650兆円でしたが、次世代移動サービス(MaaS)の普及によって2050年には既存の600兆円に加え900兆円の新しい市場が誕生する見通しです。自動車産業が誕生して以来の大きなパラダイムシフトと言ってよいでしょう。
これに伴いモビリティ系スタートアップへの投資額は数年連続で10兆円規模に達しており、2019年以降は1000億円以上の巨額出資案件が顕在化しています。2021年に入ると海外では、特定買収目的会社(SPAC)との合併をはじめとして上場ラッシュの様相を呈しています。日本ではモビリティ系分野でユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)は誕生していませんが、Mobility Technologies、ティアフォー、ZMP、Global Mobility Serviceの4社が、時価総額上位20社のネクストユニコーンにランクインしています。

CASEと空飛ぶクルマの領域が活発化

とくにベンチャーの動きが活発なのは、Connected(コネクテッド)、Autonomous (自動運転)、Shared(シェアリング)、Electrification (電動化)の頭文字から取った「CASE」と、空飛ぶクルマという5つの領域です。

【Connected】
 車内では車載ナビを活用してルート案内したり音楽を楽しめたりしますが、今後は決済やレストランの予約、映画鑑賞などの機能も拡充されていく見通しです。車外については保険や広告への応用が進んでいます。例えば大手損保会社はコネクテッドカー(ネットにつながる車)のデータ蓄積・解析プラットフォホームを運営している英Wejoと提携して、同社が自動車メーカーから収集したデータを解析した上でサービスを提供する予定です。

【Autonomous】
自動運転の領域だと米国と中国では、WaymoやPony.aiによる地図アプリから乗車予約が可能なロボタクシーが登場しています。また、米国の高速道路ではTuSimpleが自動運転トラックの試験運用を行っています。国内ではロボットによる配送の実証実験も進んでいます。

【Shared】
COVID-19影響で苦境に陥っているスタートアップが多い中、マイクロモビリティに関しては電動キックボードに対する規制緩和が見込まれるため注目度は高いです。

【Electrification】
電動化についてはバッテリーの製造から開発・製造、利用に至るサプライチェーン全体でさまざまな提携が進んでいます。とくに注目されるのが開発・製造分野です。中国では新興のEV(電気自動車)メーカーが量産車を販売していて、販売量(2021年1~5月)トップ20のモデルのうち、新興メーカーから5モデルが入っています。また、スマートフォンホンメーカーや自動運転スタートアップ、ICT企業がEVの開発・製造事業に続々と参入しています。

【空飛ぶクルマ】
日本での事業化の目標は2023年で、テトラ・アビエーションが7月に予約販売を開始しました。また、空飛ぶクルマのスタートアップは電子機器メーカーと提携して飛行制御システムを確保したり駐車場事業者と連携、空飛ぶタクシーの乗降場所として立体駐車場を整備したりする動きも見られます。
本日はこれら5領域の中から5社を紹介します。 

車窓がテレビに

Laura(東京都豊島区)は車の窓がテレビになるメディアサービス「CarWindow」を提供しています。具体的には車内に専用のプロジェクターを実装し、窓にはナノ粒子の特殊加工を施すことによって、車外からはテレビのように動画を楽しむことが可能です。現在は乗客がいない時に広告を投影しており、乗車中は通常時と同じ窓ガラスとして活用できます。タクシーの車内広告が注目されていますが、同社のサービスを活用すれば車体の外部は新しい広告媒体となります。

自動運転向けAIソリューション

コーピー(東京都文京区)は、AIを本格導入する際のボトルネックとなるAIの説明可能性(XAI)や品質検証(QAAI)に取り組んでいます。モビリティ領域では、CG技術を活用した自動運転向け学習用画像データの生成や、画像データを音声で検索可能なマルチモーダル検索機械学習システム、路上物体検出システムの提供及び品質管理フローの検証等を手掛けています。

電動キックボードで2兆円市場見込む

電動キックボードシェアリングサービスで世界トップの「BIRD」が日本市場で事業を展開するにあたってのパートナーがBRJ(東京都渋谷区)です。電動キックボードは規制緩和が順次進んでおり、将来的には免許不要で自転車のように乗れるようになることが予想されています。同社はマイクロモビリティの市場規模が路線バス市場規模を上回る約2兆円の市場に拡大すると予想しており、シェアポートの開拓などに力を入れます。

災害時には電源車に

EVモーターズ・ジャパン(北九州市若松区)は、バッテリー技術を活用した〝走るだけでないEV〟を目指しています。自社開発のEVバスでは、ディスプレー、フレキシブルソーラーなどを搭載。バッテリーは耐久性に優れ8年以上は交換が不要です。1回の充電によって最長230キロの走行が可能で、災害時などには電源車にもなります。日本で初めてとなる商用EVの量産工場の建設も視野に入れています。

1000キロ離れた場所からドローンを操縦

トラジェクトリー(東京都中央区)は独自に開発したナビゲーションAIと高精度の3D地図を活用したリモートコントロールによるドローン飛行の自動化を実現しています。コントロールセンターにいながら、複数機のドローンを同時にリモートで操作することが可能で、1000キロ以上離れていても操作できます。自治体向けには災害発生時の初動対応、民間企業向けではモニタリングや物流領域での協業に力を入れます。
世界では自動運転技術の開発競争が繰り広げられています。日本でも2025年度までに40カか所以上の地域で、無人自動運転サービスを実現する計画を進めておりモビリティ系ベンチャーの新しい技術が活躍しそうです。

曾 婷(ゼン・ティン)
清華大学・経営工学→東京大学・技術経営戦略学。トヨタ生産方式をはじめ日本的経営に興味があり来日。前職では官公庁・自動車メーカー向けにAI、自動運転、シェアリング、コネクテッド等の次世代モビリティ関連の技術戦略プロジェクトを経験。現在は大企業向けのオープンイノベーション、スタートアップの海外進出等を担当。「人工知能の未来2016-2020」(EYアドバイザリー著、日経BP社出版)の執筆に参画

【関連情報】
●転載元記事:https://www.sankeibiz.jp/startup/news/210903/sta2109030600001-n2.htm