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大企業発技術系ベンチャーが相次いで誕生 知財が後押し| Morning Pitch vol.381

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※本稿はSankeiBiz Fromモーニングピッチ を転載したものです。

デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。

モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回は大企業発の技術系ベンチャーです。

2020年に6社が誕生

野村総合研究所の調査によると国内の大学発技術ベンチャーは2000社以上ありますが、大企業発技術ベンチャーは100社未満で相対的に少ない状況にあります。
しかし、日本のユニコーン企業(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)の7社のうち、5社はPreferredNetworksやTBMといった研究開発を起点とした技術系ベンチャーで、拡大の余地は大きいといえるでしょう。
実際、大企業発技術系ベンチャーは年を追うごとに増加しており2020年だけで6社が新たに設立されるなど、注目の領域です。

VCなどが積極的に出資

増加要因のひとつは、事業の種が増えている点です。高い技術を保有している企業の間では、社内ベンチャー制度などを利用して社内から新規事業を生み出す取り組みが相次いでいます。また、ベンチャーキャピタル(VC)などの投資家が積極的に出資しているほか、官公庁や地方自治体の支援が活発な点も大きな要因です。
東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)が大企業発ベンチャーに特化したファンドを組成したのは、その一つの事例です。また、経済産業省は、新規事業に挑戦したい社員が会社を辞職せずに外部からの資金調達を踏まえた起業の支援制度を運用しています。デロイトトーマツグループも企業発技術系ベンチャーをユニコーンに育てるため、今秋に新サービスを開始する予定です。

独立の度合いに応じ4つに分類

大企業発ベンチャーは独立の度合いに応じて大きく4つに分類されます。スピンアウトは研究開発などに従事している技術者が当該企業から独立して起業するもので、飛び出した企業側も元の企業も、かかわりを持たないケースが一般的です。スピンアウトと同じく企業を辞めて独立するものの、緩い連携を持つ傾向が強いのがスピンオフです。大企業側にとってはコア事業への資源集中が可能になります。
経営戦略として事業の一部分を切り出し、第三者の評価、投資を含む参画を得るのがカーブアウトです。親会社からの一定の出資など強い支援・連携を受けながら切り出すことが特徴です。親会社が全額出資する形態が100%子会社で、コーポレート機能などは親元企業に依存しながら人材獲得や意思決定、PRは自由度を持たせています。
今回はスピンアウトとカーブアウトの領域から5社のベンチャーを紹介します。

靴に装着したナビで視覚障害者を支援

視覚障害者が安心して街歩きを楽しめるように、靴装着型のナビゲーションシステム「あしらせ」を提供しているのが、ホンダからの第一号スタートアップであるAshirase(東京都西東京市)です。靴の甲と外側、かかとの部分に振動インターフェースがあり、デバイスが立体構造になって振動を与える仕組みのため歩行の邪魔をすることがありません。ターゲット層は先進国で1200万人と少ないですが、ハードウエアを売り切りにしてアプリを定額化するというSaaSモデルで対応します。

即座に自動化対応が可能なソフト

AI開発統合ソフトウエアの「MENOU-TE(メノート)」を展開しているのはニコン発のMENOU(東京都中央区)です。製造業は自動化が進んでいますが検査工程は目視検査がメーンです。しかし、メノートを活用すればノーコードで検査に使える高度なAIを開発できるため、どのような検査に対しても即座に自動化対応が可能になります。ディープラーニングには数千枚から数万枚の学習画像が必要と言われますが、製造業検査に特化しているため20サンプル未満でも学習可能です。

ビデオを手軽に作成できる360度カメラ


ベクノス(横浜市西区)はリコーの100%出資子会社です。販売しているのはペンのようなスリムなデザインの360度カメラ「IQUI(イクイ)」で、2020年度グッドデザイン賞ではグッドフォーカス賞を受賞しました。手軽に楽しいショートビデオを作成し、SNSに投稿できる点が売り物です。また、特定イベントなどとの連携も可能で、ショートビデオをゲストのスマートフォンに送信したりゲストにIQUIを貸し出したりすることで、イベントや観光地の盛り上げに活用できます。

脳波で以心伝心

CyberneX(東京都大田区)は富士ゼロックス(現・富士フイルムビジネスイノベーション)からのスピンアウトで、同社から技術と特許を買い取る形で創業しました。脳波を含む微小電位を、耳から計測可能なイヤホン型のデバイスによって医療用の脳波系と相関性の高いデータを高精度で入手できる点が特徴で、「以心伝心コミュニケーション」というミッションを実現します。ヘルスケアやウエルネス領域への活用だけではなく、新たなエンターテインメントの創出や消費者意識・行動の把握などへの活用も期待されます。

商用生産にも対応可能な光成形

小ロットの生産法として3Dプリンターや切削加工を活用するケースが増えていますが、商品として出すには品質が十分ではなく使える材料も限定されているという課題があります。JSRからカーブアウトしたmicro-AMS(川崎市幸区)が保有する光成形という技術は、ゴム型にプラスチック材を入れてマイクロ波を照射し、冷却することで生産が可能です。品質も高く施策から商用生産に至るまで、一気通貫で担うことができます。
日本では知財の大半を大企業や中小企業は保有しています。技術系ベンチャーの誕生を後押しするポテンシャルは大きいと言えるでしょう。

児山 欣典(こやま・よしのり)
デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社
デロイトトーマツベンチャーサポート ビジネスプロデュース事業部副事業部長。大企業の社内起業・オープンイノベーションプロジェクトに従事。様々な大手企業の社内ベンチャープロジェクトやアクセラレーションプログラムの企画設計、運営支援に加えて、個別大企業の新規事業創出支援を担当。研究開発起点カーブアウト支援事業の企画・運営責任者。

【関連情報】
●転載元記事:https://www.sankeibiz.jp/startup/news/210910/sta2109101000001-n1.htm