TO TOP

地球温暖化でニーズが高まる 災害に立ち向かうDisaster Tech(ディザスターテック)ベンチャー Morning Pitch vol.388

NEW

読了時間:約 5 分

This article can be read in 5 minutes

※本稿はSankeiBiz Fromモーニングピッチ を転載したものです。

デロイト トーマツ ベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを東京・大手町で開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげることを狙いとしています。
モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回は災害を意味するDisaster(ディザスター)とTechnology(テクノロジー)を掛け合わせた新たな防災サービス「Disaster Tech(ディザスターテック)」です。

2019年の水害被害額は過去最大

日本の自然災害発生件数は増加傾向にあり、2019年の水害被害額は台風19号が関東甲信越や東北地方で大規模な河川氾濫や土砂災害を引き起こしたこともあって、約2兆1800億円と統計を開始して以来、最大規模となりました。

世界を地域別にみると災害の影響を受けやすいのはアジアです。災害発生数、影響を受けた人々の数、経済的損害でいずれも世界1位となっています。とくに洪水、暴風による被害は大きく、年間の経済損失は6兆8000億円に上ります。
こうした現状を踏まえ、災害に対する企業の注目度も高まっています。デロイトトーマツグループが日本の上場企業を対象として2020年に実施したリスクマネジメントの調査によると、COVID-19が企業の事業活動に大きな影響を及ぼしたことから、「疾病の蔓延などの発生」が国内で優先して着手すべきリスクの1位でしたが、2位は「異常気象、大規模な自然災害」となりました。COVID-19禍前の2019年は1位です。

2024年の防災食品市場は15年比で1.9倍へ

大規模災害の多発を受けて防災意識は高まっており、防災食品市場は増加傾向にあります。矢野経済研究所の調査によると2024年は278億円で、2015年に比べ約1.9倍の規模に拡大する見通しです。シード・プランニングは2025年の防災情報システム・サービス市場を1162億円と見込んでいます。これは2019年の約1.6倍に相当します。

また、日本政府は国土強靭化に力を入れており、2021年度から25年度までの5年間で15兆円の事業費を確保し、風水害や大規模地震対策、インフラの老朽化対策、デジタル化の推進など123事業を実施する計画を進めています。

スタートアップを支援する動きが活発化

一連の動きに基づき、国内外ではDisaster Techスタートアップを支援する動きが活発化しています。仙台市では災害対応のスタートアップに焦点を当てたプログラムを提供し、技術的な制約や収益性の観点で実現できなかった防災課題に取り組んでいます。英国保険会社の投資部門は、自然災害から人命を守ることができるソリューションを持つスタートアップを発掘し、支援するプログラムを用意しています。

発生前、発生時、発生後の3つに分類

Disaster Techスタートアップは大きく分けて災害発生前、発生時、発生後の3つに分類されます。発生前のソリューションとして米国シリコンバレー発のスタートアップ、One Concernは大手損保会社などと共同で熊本市の協力を得て、洪水の被害予測シミュレーションを試験的に導入しています。
発生時のサービスとしては避難所のデジタル化への取り組みを紹介します。AIとIoTを活用して空き情報を配信するバカンなどは宮崎県都城市で実験に着手しており、避難所の混雑具合を可視化し非接触型の受付をはじめとしたサービスを提供することで、防災能力の向上を目指しています。
発生後の事例としては、利用者に適した公共制度をLINEで届けるサービスを提供するCivichatと熊本市が共同で開発した被災者支援制度の案内チャットボットが活躍しています。質問に答えるだけで制度の内容を迅速に把握できようになり、紙面やPDFに比べ検索に要する時間は10分の1程度に短縮できます。埼玉県横瀬町は助太刀のネットワークを活用し、災害時に支援が可能な全国の建設事業者と連携できるようにしています。今回は発生前・発生時・発生後の3領域から5社を紹介します。

地震発生から30分で津波浸水被害を予測

東北大発ベンチャーのRTi-cast(アールティアイキャスト、仙台市若林区)が東日本大震災をきっかけに開発したのは、リアルタイムでの津波浸水被害予測システムです。災害発生から数十分後に開かれる対策会議では、被害状況が把握されない状況ですが、システムではスーパーコンピューターによって被害範囲を自動的に予測します。現在は南海トラフや相模トラフなど太平洋沿岸で活用されており、地震発生から30分で情報提供が可能です。

  

防災用品に特化したカタログギフト

被災地でのボランティア活動を7年間続けてきた4人のメンバーが運営するKOKUA(コクア、東京都渋谷区)は、防災用品に特化したカタログギフト「LIFEGIFT」を提供しています。結婚式や出産祝いといった個人向けだけではなく、福利厚生や住宅、自動車購入客への返礼品など企業が利用するケースも増えています。今後は商品開発に力を入れ、顧客に合わせてカスタマイズされたオリジナル防災バッグも販売する予定です。

宇宙から地盤沈下の予兆を早期に把握

宇宙ベンチャーのSynspective(シンスペクティブ、東京都江東区)は、地球を外周する小型のレーダー衛星群を打ち上げて地形・構造物のデータを取得し、解析した上で情報を届けるサービスを展開しています。例えば地盤沈下の予兆を早期に把握し、陥没事故のリスク低減につなげることができるほか、天候に左右されないため台風の最中でも地上の様子を確認できます。2018年に設立後、わずか1年半で100億円の資金調達に成功しています。

サプライチェーンのリスク管理サービス

Resilire(レジリア、東京都目黒区)は、災害や不測の事態が生じたときでも事業者サービスの安定供給を実現する、サプライチェーンのリスク管理サービスをSaaSで展開しています。災害時には影響の及ぶ可能性のある範囲を可視化し、該当するエリアにあるサプライヤーに状況確認の通知を自動送信します。その後、担当者がスマホ
で簡単に状況を回答することによって、状況が反映される仕組みです。

短期間で水害状況の予測が可能に

東大発ベンチャーであるArithmer(アリスマー、東京都港区)は、独自開発した流体シミュレーションを活用した浸水予測ソリューションを提供しています。水害が発生した後、損害保険会社は被災地に行って電柱に残った跡などを見て測定していましたが、このシステムでは地形と水深実測データを活用。解析から数時間~数日と圧倒的に短い期間で状況の予測が可能となります。
また、1平方キロメートル当たり3点以上の水深データがあれば解析できます。
気候変動に伴う自然災害は今後、さらに多発化、大規模化する可能性があります。Disaster Techベンチャーの活躍に期待が高まります。

市橋 良真(いちはし・りょうま)
デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社
半導体メーカー、浜松市(地方公務員)を経て現職。浜松市では、全国から実証実験を公募するプロジェクトを立ち上げ、そのプロジェクトマネジメントに携わる。2年で13件の実証実験を実施。その他、官民連携プロジェクトに複数関与。浜松の起業家が集まるイベントの企画など、地域スタートアップコミュニティの活性化にもかかわった。2021年より現職でMorning Pitchの企画運営に従事。Morning Pitchを軸とした新規事業の立上げや運営改善に携わる。

【関連情報】
●転載元記事:https://www.sankeibiz.jp/startup/news/211105/sta2111050600001-n1.htm