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これからの上場企業に求められる世界基準で考えられた再生可能エネルギーとは。日本らしい小規模発電所で課題を解決するオフサイトPPAサービスの可能性

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2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、各社ともにステークホルダーである株主・投資家から、ESG投資を重視した行動が求められている。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)からのESG情報の開示要請もあり、「環境」「社会」「企業統治」などの視点から長期的リスクを持っていると判断された企業は、投資対象から外される傾向にある。

世界でその動きが活発化していることもあり、各社は再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入を促進。脱炭素経営でさらなる社会的価値を発揮するため、FIT※で非化石証書を購入するなどの取り組みを続けているが、それだけでは株主・投資家から十分な信頼が得られないことも多い。環境価値の高い再エネの取り組みやポートフォリオはどのように描いていくべきなのか。

再エネの課題に対する新たなソリューションを提供しているのが、株式会社クリーンエナジーコネクトである。今回は同社の代表である内田鉄平氏に、複雑化する再エネ業界の実情とFITに依存しない新たな調達手法について話を聞いた。

FIT・・・経済産業省が2012年7月に開始した「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」


内田 鉄平
株式会社クリーンエナジーコネクト 代表取締役社長
東京電力にて、エネルギーサービスの新規事業開発・運営、M&Aに従事。
2000年日本ファシリティ・ソリューション株式会社の設立に参画し、法人向け省エネ・省CO2削減保証サービス(ESCO)のソリューション営業に従事。
2011年株式会社ファミリーネット・ジャパンにて、マンション向けスマートエネルギーサービス、電力販売、ガス販売のサービス立上げ・運営、経営企画、業務提携・M&A・JV設立等に従事。NFパワーサービス株式会社 元取締役、一級建築士、エネルギー管理士。

INDEX

投資家から求められる再エネの「追加性」
FITに依存しない、最適なポートフォリオ基準
環境価値の高いファイナンス。メガソーラーだけが正解じゃない
コストフルな再エネ業界で、スタートアップが見出す勝ち筋
ここがポイント

投資家から求められる再エネの「追加性」

――まずは再生可能エネルギーの現状について教えてください。

内田:大手企業を中心に、再エネの導入・調達が積極的に進められています。そのなかで脱炭素を経営課題として捉えているものの、具体的な進め方がわからないことが多いように感じます。課題の背景として、再エネ調達における「追加性」が海外の機関投資家などから強く求められている現状があります。「追加性」とは、その再エネ電力を購入・調達することが、新たな再エネ電源の普及や拡大に寄与すること。つまり、既に設置されている太陽光発電所や水力発電所などに供給元を切り替えるだけでは、環境価値があるとは社会的に見なされないということです。

海外の企業が進んでいるのは、2050年のカーボンニュートラル実現や、平均気温上昇1.5℃以内の目標に対して、「追加性」の高い取り組みを続けているところにあります。自社専用の再エネ発電所を設置するなど、カーボンニュートラル実現に向けた積極的な取り組みに、大きな価値が認められています。それらの世界的な潮流が、日本にもようやく来たという実感がありますね。

――日本の大手企業が再エネに取り組んでいる背景には、どのような社会的要因があるのでしょうか。

内田:日本においては、2022年4月に東証市場再編後のプライム市場において、ESG情報の開示が実質的に義務付けられたことが大きいと思います。TCFDからの提言に沿って、「ガバナンス」、「戦略」、「リスクマネジメント」、「指標と目標」の4項目とシナリオ分析、さらに2021年からは新たに7つの指標と目標の開示が推奨されています。

また、事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで調達することを目指すRE100(Renewable Energy 100%)の国際的イニシアチブが影響していることも大きいと思います。化石燃料に依存している企業を投資対象から外すなどの動きが欧州で出てきています

――カーボンニュートラル実現に向けたアクションとレポートが求められるなかで、各企業はスムーズに取り組めているのでしょうか。

内田:まず、再エネを導入しているお客様の現状については、FITが大きく影響しています。非化石燃料の電源や電力を使っていることを証明する非化石証書を購入している事業者は多いですが、「追加性」の観点を持ちながら環境価値を考えている企業はごく少数だと感じています。2030年度の温室効果ガス46%削減に向けて、太陽光や水力発電所など再エネの選択肢はたくさんありますが、エネルギーの専門家ではないので有効な選択肢をスムーズに選べないのが現状です。

一方で、2012年以降のFITを活用した再エネの普及において、開発事業者はとても増えたのですがFITによる買取額が大幅に下がってきたので、再エネ事業における利益が大きく減少しています。しかし、開発事業者はFITの中で事業展開してきたので、FITに頼らず大手企業などに直接ソリューションを提案するのは難しい。そのなかで私たちは、「クリーンエナジーコネクト」という社名の通り、お客様と開発事業者をつなぎながら、再エネの最適なソリューションを提供しています。

FITに依存しない、最適なポートフォリオ基準

――なぜ、FITでは大手企業の課題を解決できないのでしょうか?

内田:お客様にとって最もシンプルでわかりやすいのは、電力会社から供給される電気を水力発電所由来のものに切り替えるような取り組みだと思います。しかし、先程お伝えしたようにそれだけでは「追加性」の観点で、社会的に環境価値が高いとは見なされません。他にもFITを活用する発電所から生まれた環境価値を非化石証書として購入したり、証書と電気をセットで電力会社に送ってもらったり、いろいろな方法がありますが、これらも追加性の観点で環境価値が本当に高いとは言い切れません。

つまり、それぞれの再エネにおいて、メリット・デメリットを整理しながら最適なポートフォリオを描く必要があります。しかし、企業の担当者は電気やエネルギーの専門家ではないのでその判断がなかなか難しい。電力会社からさまざまな提案があったとしても、全体の電気やエネルギーの構成をどのように考えるべきなのかわからないことが多いのです。

――FITに依存することなく再エネのポートフォリオを最適化することは、どのようなメリットがあるのか教えてください。

内田:投資家などに対して、他社との差別化を行う際に有効になります。もちろん、FITで非化石証書を購入することは、TCFDレポートへの対応策としてある程度有効です。しかし、それでは海外の機関投資家を含めて十分なアピールにはつながりません。大手企業は、その業界のなかで先駆けて取り組む必要性を感じており、CSRやESGの一環として再エネの取り組みをアピールしていきたいのです。つまり、先陣を切って環境価値を発揮していくことで、ESGへの取り組みをしっかり投資家にアピールしていきたいと考えており、その点でFITに依存しない再エネのポートフォリオは重要になってきます。

――FITでビジネスを営んできた開発事業者についても教えてください。なぜ、彼らは直接お客様とやり取りしないのでしょうか。

内田:FITでビジネスを営んできた開発事業者は発電所を作ることが本業で、基本的に営業は得意ではありません。というのも、FITでは国に電力を必ず買い上げてもらえる仕組みがあったから営業の必要がなかったのです。しかし、FITに頼らずお客様に買ってもらうおうとすると、ただ単に「発電所を持っています」と提案しただけでは誰も買ってくれません。脱炭素やカーボンニュートラルの実現という枠組におけるソリューション提案が求められるからです。必要とされるケイパビリティが今までと全く異なるため、提案場面で苦しんでいる開発事業者が多いように感じます。

開発事業者がFIT以外でビジネスを営もうとすると、ファイナンス面でも苦労します。FITにおいては、事業者の認定が取れれば金融機関から安定的に融資を受けることができます。しかし、FIT以外で再エネの事業を展開しようとすると、サービス提供先の企業規模などで融資が判断されます。融資基準に満たないケースもあり、プロジェクトファイナンスを実現できないことも起こり得るのです。

私たちの会社には、金融機関出身で再エネのプロジェクトに数多く関わってきたメンバーもいるので、プロジェクトファイナンスの課題にも一緒になって取り組みながら、プロジェクトとして組成することができます。プロジェクト組成力というのが我々の強みの一つであり、社会に還元できる重要な価値だと思っています。

環境価値の高いファイナンス。メガソーラーだけが正解じゃない

――クリーンエナジーコネクトが推進している「オフサイトコーポレートPPA」について教えてください。

内田:まず、「オフサイトコーポレートPPAサービス」の特徴として、お客様専用の再エネ発電所を私たちが開発して、そこからの電気と環境価値をお客様にお届けすることができます。長期契約なので、ファイナンスも含めプロジェクトとして組成するときに、信用度の高いお客様にアプローチすることが可能です。

お客様のメリットとして大きいのは、例えば本社ビルや店舗で使っている電気が、自社専用の再エネ発電所から来ていることをアピールできることです。「この建物は環境に優しい」ということを明確に伝えられるので、エンドユーザーや機関投資家にとって環境価値の高い取り組みとして魅力的に感じてもらえます。オフサイトコーポレートPPAサービス事業者にとっても、信頼できる大手のお客様と直接契約することにより融資が認められやすく、先ほどお伝えしたようなファイナンスの課題を解決できるわけです。

――再エネにおけるプロジェクトファイナンスについて教えてください。

内田:私たちの場合でいうと、「オフテイカー」と呼ばれるお客様がいらっしゃって、当社との間にオフサイトコーポレートPPAサービスという長期的な契約があります。プロジェクトごとに再エネの提供に関する契約を結んでいるのですが、そのために必要となる太陽光発電所の開発などの必要資金を金融機関から融資してもらいます。そのためには、事業目的を明確にするためSPC(特別目的会社)を設立し、そこに融資してもらうかたちで進めていきます。

再エネにおけるプロジェクトファイナンスは融資が一般的ですが、当社は債権での資金調達にも取り組んでいます。2022年12月には環境問題の解決を目的に発行する債権「グリーンプロジェクトボンド」で87.6億円を調達しています。グリーンボンドは、日本においても市場拡大が顕著となっており、投資家にとってもさまざまなメリットがあります。

――グリーンボンドの購入は投資家にどのようなメリットがあるのでしょうか。

内田:グリーンボンドは10年以上の長期プロジェクトなので、安定した運用を求めている投資家にとって有益な選択肢の一つです。投資家はさまざまな金融資産を組み合わせて運用しているため、グリーンボンドのように長期のインフラ投資に近いものは好まれる傾向にあります。ポートフォリオに組み込むことで、安定的なキャッシュフローを得られやすいのです。

もう一つのメリットとして、「グリーンファイナンス」と言われるように環境価値が高いことがあげられます。投資家自身もカーボンニュートラルに資するプロジェクトに出資しているのかどうか、社会から責任を問われています。持続可能な社会の実現に貢献することで、社会的に高い評価を得ることも期待できるのです。

――貴社のオフサイトコーポレートPPAサービスでは、小規模発電所がメインだと思いますが、メガソーラーでなくても採算はとれるのでしょうか。

内田:大規模なメガソーラーで必要となる受変電設備が、小規模な発電所では不要なので、開発規模が小さいからといってコストが必ず上がるとは限りません。むしろ、小規模の方が開発期間が短く、お客様の脱炭素・再エネ導入をスピーディに実現することができるのでメリットが多いと感じています。広さでいうと、メガソーラーの場合はゴルフ場くらいの土地になり、私たちが手がける発電所は畑1個分くらいのイメージです。

もちろん、全国500か所以上で開発を同時に進めるため、工程管理や品質管理の手間がネックになります。しかしそれも、各プロジェクトにおいて日本全国の地場で強みを持っている20社以上の開発事業者と協業することで解消しています。次に何をすればいいのか一目でわかるようなプラットフォームをDXで構築し、お互いの業務の効率化を図っています。
発電所用地の仕入れも開発事業者に依頼しており、基本的には耕作放棄地などを利用しています。引退された農家さんの土地や相続などで休耕地になっている畑を、主に使わせていただいています。

オフサイトコーポレートPPAサービスのお客様は主に大手企業なので、発電所の品質にもしっかりとこだわる必要があります。DXを活用することにより、スピーディーな取り組みで、品質管理と工程管理にも注力しながら少数精鋭で取り組んでいます。

コストフルな再エネ業界で、スタートアップが見出す勝ち筋

――再エネのプロジェクトは、土地の仕入れや発電所を作る費用などコストフルな事業だと思いますが、勝ち筋をどんなところに見いだしていますか?

内田:たしかに、再エネの分野はアセットが必要とされるため、本来スタートアップが得意とする領域ではないかもしれません。ただ、人・モノ・金がそろっている大企業だから必ずできるのかというと、そうとは限らない。私も大企業に所属していたので、大企業ならではの「しがらみ」やハードルがあることを知っています。

私たちは、大手企業なども経験しているベテランのメンバーで構成されています。イケイケのスタートアップのような若さと勢いはないかもしれませんが、社会の中でいろいろな経験を積んできたメンバーだからこそ実現できることも多い。一人ひとりの課題感もしっかり共有できているので、このチームならどんな課題でも乗り越えていけると感じています。スタートアップにとって不利に見える領域であっても、お客様に対しての課題感などを結集して新たな事業に取り組めれば、全く別の風景が見えてくると思います。

――最後に、これからの展望について教えてください。

内田:まず、私たちのビジネスについて言うと、お客様とのオフサイトコーポレートPPAサービスにおける長期的な契約の中で、お客様のカーボンニュートラルに対する課題はどんどん変わっていきます。そういった中で、現在主流となっている太陽光発電所を主体にした発電方法は、天候に左右されることが多くデメリットもあります。発電量の多い時間帯が建物や店舗、工場における使用時間帯と重ならないこともあるので、再エネで賄いきれない電力を火力発電所などで補っています。

それらの課題を解決するためには、蓄電池の活用だったり風力発電との組み合わせだったり、さらには建物側のエネルギーの使い方も含めてマネジメントしていくことも重要です。再エネだけで全ての電力を賄えるようにするのが目指すべき未来です。

例えばGoogle社では、2030年までに自社で使用するエネルギーを、24時間365日カーボンフリーエネルギーで運用するという、壮大な目標を掲げて取り組んでいます。今後はこのような取り組みが世の中の主流になっていくことでしょう。私たちもエネルギーのプロフェッショナルとして、カーボンニュートラル実現に向けた各社の取り組みを、全力でサポートしていきたいと考えています。

ここがポイント

・環境価値の高い再エネの導入・調達として「追加性」が機関投資家から求められている
・「追加性」とは、その再エネ電力を購入・調達することが、新たな再エネ電源の普及や拡大に寄与すること
・FIT制度で既設の水力発電所などに供給元を切り替えたり、非化石証書を購入したりするだけでは「追加性」があるとは見なされない
・大手企業は他社に先駆けて「追加性」のある再エネ調達を実現したいが、さまざまな選択肢から有効な方法を選びきれない
・再エネの開発事業者の多くはFIT制度で事業展開してきたので、大手企業に直接ソリューション提案することが難しい
・「オフサイトコーポレートPPAサービス」なら、開発事業者と協業しながら顧客専用の発電所を開発し、「追加性」の高い再エネを提供できる


企画:阿座上陽平
取材・編集:BRIGHTLOGG,INC.
文:VALUE WORKS
撮影:阿部拓朗