2022年12月13日、三菱地所が運営するEGGのオープンイノベーションコミュニティ「The M Cube」が主催する「Founders Night Marunouchi vol.45」を実施しました。(過去のイベントレポートはこちら)。
このイベントは、スタートアップの第一線で活躍する経営者の経験から学びを得るもの。今回ご登壇いただいたのは、オモテテ代表取締役の髙堰(たかせき)うららさんです。同社は2023年リリース予定の、生理ライフを快適にするサービス「unfre.(アンフリ)」を開発しています。
社長という顔を持ちながら、一方で東京大学大学院で都市計画を学んでいる髙堰さん。そんな彼女が一体なぜフェムテックに参入し、起業をしたのでしょうか。創業経緯から今後の展望まで語っていただきました。
モデレーターを務めたのは、The M Cube運営統括の旦部聡志と運営担当の鈴木七波です。
INDEX
・医療業界の人材不足を「心電図の解析サービス」で解決したい
・誰しもが不自由なく、安心して過ごせる社会の仕組みを
「生理」の悩みをインフラで解決するため起業
「悩んでいる人が自ら声をあげるだけでは状況は変わらない。その声を受け入れてくれる環境や仕組みが社会にあることが重要なのではないか」
高校生の頃から国連や地方創生に関する課外活動をしてきたことも踏まえ、そのような思いを持っていた髙堰さん。社会の仕組みやインフラが学べる「都市計画」の分野を学ぶため、慶應義塾大学法学部を経て、東大大学院工学系研究科都市工学専攻博士課程に進学しました。
一方、大学院生の頃には「生理」の事業を展開するオモテテを創業し、代表取締役に就任。なぜ都市計画を学んでいた彼女がフェムテックの分野に足を踏み入れたのでしょうか。
オモテテ代表取締役の髙堰(たかせき)うららさん
髙堰さん「生理に注目したのは、私自身が不自由さを感じていたからです。友人にも生理の悩みを相談してみたところ、すごく共感してくれました。多くの人が生理に対して同じような悩みを抱えているのかもしれないと思いましたね。
また、大学院で学んでいる都市計画も通ずる部分があります。例えば、生理について上司に相談をしたときに、親身になってサポートしてくれる方もいれば、そうではない方もいます。一人が声をあげたとしても状況が変わるかどうかは分かりません。
それを踏まえて、そもそも生理は『自己管理しないといけないもの』ではなく、悩みを受け入れてくれるインフラを構築していくことが大事なのではないか。社会の仕組みや環境という側面から解決していく方法があるのではないかと思っていました」
大学生の頃は、学生起業支援のサークルに所属していた髙堰さん。そんな生理の悩みを解決するアイデアを思いついた際、同サークルで仲の良かった三人に「こんなことをやってみたい」と持ちかけました。すると、「面白い!」と全員が一致したといいます。
これまで四人で何かをやろうとした経験はありませんでしたが、社会を良くするサービスを作りたいという想いで意気投合。各人が主体的に検証を進めていくなか、事業会社から興味を持っていただいたタイミングで、「このビジネスで事業化を目指そう」と決断したそうです。
2021年、他三人の共同創業者とともに髙堰さんは会社を設立しました。現在は、2023年リリース予定の「unfre.」というサービスを開発しています。
世の中には、「生理の貧困」と呼ばれる経済的な理由で生理用品を買えない方や、恥ずかしさから買うのに躊躇してしまう方など、生理にまつわる課題を抱えた人が多く存在しています。同社は、そのなかでも「必要なときに生理用品が購入・入手できない」という悩みの解決に尽力しているのです。
具体的には、商業施設や会社にあるトイレの個室に生理用品を設置。ユーザーはQRを読み込み、もしくは専用のアプリで取得をします。今よりも気軽に、必要なときに必要な分を得られるような仕組みを目指しています。
髙堰さん「サービス名の『unfre.』は、不自由(unfree)にピリオドを打つという意味です。私たちは誰しもが生理の時に安心して出かけられるようにと思い、サービスを開発しています。
生理になったと感じたときを想像してみてください。まずトイレに入って生理かどうかを確認。その後、生理だった場合はナプキンなど生理用品を身につけると思います。しかし、持っていなかった場合は、取りに戻るもしくは買いに行くなどしなければなりません。結局は外に出てトイレに戻らなくてはならず、時間も手間もかかります。
私も女性として、サービスが広がればより便利な世の中になると思いますし、トイレの個室内にはチャンスがあると考えています」
なかには、生理用品を無償で提供している企業もあるといいます。しかし、指定のかごに置いているだけで誰も管理をせず、ときには一人が全部持っていってしまい、本当に必要な人にいきわたらないという現状があるそうです。
誰しもが不自由なく、安心して過ごせる社会の仕組みを
同サービスの大きな特徴は、ユーザーが生理用品を一定数無料で使えることです。その代わりに、設置しているビルや商業施設のオーナーからは運用費をもらうビジネスモデルになっています。
サービスの開発を始めてから約1年、リリース前にもかかわらず、多くの施設から問い合わせが殺到。なぜ、多くの反響を呼んでいるのでしょうか。
髙堰さん「私たちのサービスを置くメリットは大きく分けて二つあると思っています。一つは、オーナーにとって女性の集客効果。もう一つは、サービスの設置自体が、ビルや商業施設が『女性の生理問題について考えている』という意思表明につながることです」
メリットを踏まえて、施設の現状について髙堰さんは続けます。
髙堰さん「商業施設の方々にヒアリングした際には、『生理用品やおむつをおいていませんか』と、インフォメーションセンターによくお問い合わせがくると言っていました。
しかし、実際は案内した先でなくなってしまっていたり、そもそも案内先が遠かったり。相談してくる人が多い一方で、その悩みを十分に解決できない仕組みになっていることに気がつきました」
また、同社は商業施設やビルのメリットだけではなく、ユーザーのために接続環境に左右されないかつ、個人情報などを取得しないサービスの開発を進めています。
自分で生理用品を持ち歩き、管理をしなくてもいい社会の実現を目指す同社。サービスを拡大し、徐々に「時々あって助かる存在」から「日常的に欠かせない存在」になっていきたいと語りました。
最後に今後の展望で、イベントを締めくくりました。
髙堰さん「会社として四人の共同創業者がいることはめずらしく、VCの方含め多くの方に『意思決定が大変そう』『意見が対立しそう』などと言われてきました。しかし、これまでも何でも私たち四人で話し合いながら進めてきました。今後、壁にぶつかることもあるとは思いますが、むしろ”四人の共同創業者がいる会社”の成功事例になれたらと思っています。
直近の目標は、誰しもが不自由なく過ごせる社会をつくるために『unfre.』を通してインフラを構築していくことです。設置場所には、生理用品関係なくユーザーの需要に合わせたもの、便利だけど世の中にまだ知られていないものなどを置くことなども視野に入れています。
今後も、設置場所の数も拡大しながら、私たちに共感してくださるステークホルダーを増やし、みんなでより良い社会を目指して行動していきたいです」
▼当日のセッション
『生理用品をあらゆるトイレにて取得可能に。未来のあたりまえを実装する』
https://youtu.be/lBHn8nnx424