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94%の高精度でゴミ発生量を予測、57%の作業時間圧縮を実現。 都市全体をサービスの一環として考えるCaaSに取り組むオープンイノベーションとは。

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街全体をひとつのサービス空間と仮定し、個別のサービスが最適な状態を目指す「City as a Service(シティ・アズ・ア・サービス、CaaS)」。その具体的な取り組みのひとつに、およそ20年間課題視されてきた丸の内のゴミ回収の課題がある。しかし、2020年1月に行われた、AIや量子コンピュータを搭載した世界唯一のクラウドプラットフォーム「MAGELLAN BLOCKS(マゼランブロックス)」を活用した実証実験において、総走行距離、必要収集車の台数、総作業時間が約57%減という最適化可能性を確認。今後さらなる期待がされる本実証実験を軸に、その技術の可能性と、オープンイノベーションとしての成功のファクターをグルーヴノーツ代表の最首氏と三菱地所担当の奥山氏に話を聞いた。

INDEX

AIと量子コンピューターを駆使する、世界唯一の仕組み
企業は、自分たちの課題がわからない
パートナーの時間軸と仕事の流れを意識する
ここがポイント


最首英裕
早稲田大学第一文学部卒業後、地域再開発コンサルタントを経て、ネットワークエンジニアとして活動。米Apple社の製品開発に従事し、その後も数々の製品開発を手がける。1998年、ベンチャーを創業し、3年後にJASDAQ上場。13年間のベンチャー経営を経て、マネジメント・バイアウト。株式会社グルーヴノーツ 代表取締役に就任。2019年、世界で初めて量子コンピュータの商用サービス化に成功。機械学習/量子コンピュータの民主化を実現すべく、「MAGELLAN BLOCKS(マゼランブロックス)」事業を推進。


奥山博之
1999年東京大学卒業、2001年同大学大学院修了後、エネルギー会社に入社。主にエネルギー機器の仕様策定や開発業務に従事後、2012年に三菱地所株式会社に入社。以降、オフィスビルにおける省エネルギー対策、AI・IoT・ロボティクスなどの最新技術を活用した街づくりに関する業務に従事。

AIと量子コンピューターを駆使する、世界唯一の仕組み

――まず、三菱地所×グルーヴノーツのオープンイノベーション事例で活用された世界唯一のクラウドプラットフォーム「MAGELLAN BLOCKS(マゼランブロックス)」の仕組みを教えていただけますか。

最首:これはAIと量子コンピューターを活用したクラウドプラットフォームで、様々な場所に点在するデータを収集して分析をしたり、独自に開発したディープラーニングモデルを使った未来の予測、最新の量子コンピューティングモデルによるビジネスの最適化を行うことができます。マゼランブロックスの特徴をわかりやすく表現すれば、現実社会の複雑な問題を解く様々な数理モデルを提供していることでしょうか。あくまでも僕らの感覚にはなりますが、今までのコンピューターシステムは要件定義したものをプログラムという言葉で定義できるような形で記述、そのとおりに実行されるものでしたが、世の中の事象が複雑化、多様化したことでその手法では通用しなくなっているように思います。まずは複雑に絡み合った事象を因数分解し、数理モデルの組み合わせで解いていくことで、課題の特徴をシンプルに表現する。テーマを解釈して、データから有効な切り口を見出し、それらを整理して問題解決のためのヒントを提示するのがこの「マゼランブロックス」の役割です。そこで可視化された根拠をもとに人間が仮説を立てて、必要な手立てを講じていくということができるようになります

――具体的にはどういったことなのでしょう。

最首:実のところ人間ひとりひとりの行動を予測するのはすごく難しいんですが、一定のボリュームを集めると比較的シンプルな物理法則のようなものが見えてくるんですよ。以前であれば20代男性はこう、30代女性はこう、といったステレオタイプが通用しましたが、現代ではもう少し解像度をあげた分類が求められます。社会の複雑化、多様化に伴う変化です。こうした物理法則のようなものをうまく見つけることできるのが、まさにディープラーニングや量子コンピュータといった多変量、非線形の課題を解くのに長けたテクノロジーで、いま僕たちが抱える社会問題の解決に活かすことができるということです。

企業は、自分たちの課題がわからない

――では、「快適で豊かな人間性にあふれた街づくり」を目指す「City as a Service(シティ・アズ・ア・サービス、CaaS)」での活用についてもお聞かせください。

最首:この取り組みをはじめる前、僕らは需要予測を行うプロジェクトに携わることが多かったんです。いわば、売上や来客数、発注数予測の類です。しかしながら、自社の店舗や商品のことしか分からないのではいずれ限界がでてきます。皆さんも買い物に行くとき、特定の店舗で特定の商品しか買わないということはないですよね。そこで街全体の目線を持たなければいけない、という想いに至りました。先の需要予測の例で言えば、自分たちのお店の中だけではなく、外部の情報として「お店の前を歩く人がどのくらいいるか」、「地域全体で何が売れているか」などが把握すべきことです。

――スマートシティの文脈からすれば、Bluetoothやセンサー機器の活用が挙げられますが、そうではなくデータ分析の観点から見直すことができそうだと。

最首:はい。僕らはデータ分析をずっとやってきたので、おっしゃるようなシステムの活用が正解ではないと分かっているんです。それはなぜかというと、各企業が現時点で所有するデータを読み解けば、わりとリアルに街の状況がわかると気が付きました。このデータをなんらかの形で価値のあるものとして世の中に還元していきたい人たちも実際いらっしゃいます。であればひとつのサービス空間としての街という概念を打ち立てて我々で必要なデータを集めて、単なる合理的な都市空間ではなく、生活の中で人間が快適さを感じるサービスとは本来どうあるべきかを考えられる仕組みができた方がいいんじゃないかなと。

――その中でも最初に着手されたのは丸の内のゴミ問題だったわけですが、なぜこのテーマを?

奥山:丸の内では日々膨大なゴミが出ますから、20年ほど前から街全体のCO2削減や(ゴミ収集車の台数縮小に伴う)渋滞が減る可能性を模索していたんです。とはいえ、なかなか難しいテーマでその課題解決には長らく至りませんでした。
実は最首さんにお声がけした段階でも「なんとなくゴミ問題を解決したい、AIや量子コンピュータを使ったらなにかできるんじゃないか」といった程度の考えで。正直なところ、自分たちでも明確な課題が分かっていなかったんです。

最首:三菱地所さんに限らず、今企業は自分たちの課題が分からなくなってきているところが多いです。逆に言えば、今回も都市の視点から見たらこういうことになっているからこうしよう、と逆算でトライする流れでした
で、なぜ今回ゴミ問題から取り組み始めたかというと、削減のパーセンテージなどが明確でわかりやすかったというのはもちろん、奥山さんたちの問題意識がわりとはっきりしていたというのもあります。結局、テクノロジーは人間の判断を模倣しているにすぎません。ですから問題意識を抱える方々や、現場のプロの方々が直感的に感じてきたことがものすごく参考になるんですね。課題に対する意識が低いと、やりとりをしていても話が噛み合わなくなる。「何のためにやってるんでしたっけ?これ解いてどうするんですか?」状態。そうなるとまあ、なかなか行き詰まりますよね。

最首:それともうひとつ。三菱地所さんはデータや記録がしっかり保管されている分、非常にやりやすかったです。過去に何があったのか振り返れるものがあるのは重要ですね。今回は使いませんでしたけど、10年前の記録までありましたから。

パートナーの時間軸と仕事の流れを意識する

――問題意識をもっていること、使えるデータがあることが「マゼランブロックス」、ひいてはAIや量子コンピュータの活用に有利だったとのことですが、ではオープンイノベーションを意識したときに、お互いの立場から気をつけたことはありますか。

奥山やりたいと思ったら、お互いの熱量が冷えぬうちに短時間で進めることでしょうか。やるならやるで、その方向に向かって調整する。うちの部は比較的新規事業に対する意欲や、勢いのある会社とタッグを組みたい想いもあり、できるだけ承認プロセスを早く進めるよう努めました。

最首:ありがとうございます。僕自身が意識しているのは、大きな会社とやるときは、話が線形に進まないと理解しておくことです。どちらかというと二次曲線的なイメージ。プロジェクトを進めるのに、いきなり2段飛ばしはできないんです。だから立ち上がりからしばらくの間は、進んでるんだかどうだか分からない。でも重要なのは、ある時突然進みはじめるかもしれないということ。だから線型のやり方だと失敗します。要件定義して、プログラムを組んでってやつですね。だから、そうではないやり方を考えつつ、いかに構造上同じことを実現できるかが重要だと思います。

――ありがとうございます。最後に、CaaSの観点から今後予想される都市や社会の展開を教えていただけますか。

奥山:一言で言えば、「街全体が個人にフォーカスしたより楽しい街」になって行くはずです。見えない部分でAIが使われて、待たない、並ばない、迷わないなど、出来ることが増えていきます。
そんな街の実現のために、ゴミ問題のような手をつけやすい事・取り組む価値のある事から、色々やってみるのが大事だと思っています。

最首:CaaSを追求していくとより機械的なもの、コンピューター的なものが見えなくなり、人間が人間らしく生活するための世界がどんどん実現していくんじゃないでしょうか。以前言われていたユビキタス的な世界です。高機能というより、ただデータが連携されるだけかもしれない。でもなんとなく総合的に人間それぞれ違う個性が許されていって、物質的な満足よりも精神的な充足を追求する社会になっていくと思います。

ここがポイント

・マゼランブロックスの特徴は、現実社会の複雑な問題を解く様々な数理モデルを提供していること
・生活の中で人間が快適さを感じるサービスとは本来どうあるべきかを考えられる仕組みができた方がいいと考えた
・テクノロジーは人間の判断を模倣しているにすぎないから課題意識が必要
・オープンイノベーションで大切なのはお互いの熱量が冷えぬうちに短時間で進めること
・大きな会社との取り組みは、話しが線形に進まない
・未来は物質的な満足よりも精神的な充足を追求する社会になっていくはず


企画:阿座上陽平
取材・編集:BrightLogg,inc.
文:小泉悠莉亜
撮影:小池大介