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テクノロジーの活用で、より精度の高い採用活動が可能に。Withコロナ時代の採用の在り方を探る。 【xTECH Lab MARUNOUCHI vol.1 イベントレポート】

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新型コロナウイルス感染症の拡大により、企業の採用活動は大きく変容しました。企業が求職者と繋がれるビジネスSNS、面接が可能な動画プラットフォームなど一部の企業で使われていたツールが、以前は考えられなかったほど多くの企業に浸透。オンラインを通した採用活動は一般化されつつあります。

一方で、急速に進んだ新しい手法に戸惑いの声も多く聞かれるようになりました。「ビジネスSNSをどのように活用すればいいのか」「動画面接を効率よく進めるには」。こんな疑問を抱える人事担当者や求職者の方も多いのではないでしょうか。

こうした疑問に応えるべく、企業間のコラボレーションの可能性や成功事例を学ぶ場を提供するコミュニティ「xTECH Lab MARUNOUCHI」では、採用活動におけるテクノロジーの活用方法を追求するイベントを企画。

今回は、ビジネスSNSを活用した採用サービスを提供しているLinkedln日本代表の村上 臣氏と、動画面接プラットフォーム「HARUTAKA」を提供しているZENKIGEN代表の野澤 比日樹氏をお迎え。モデレーターのPeatix Japan株式会社 共同創業者 取締役・CMO 藤田 祐司氏とともにWithコロナ時代における採用の変化、SNSと動画テクノロジー活用、コラボレーションの可能性をお話ししていただきました。

INDEX

ビジネスSNSを活用した採用サービスを提供しているLinkedln
動画面接プラットフォーム「HARUTAKA」を提供しているZENKIGEN
企業と求職者の繋がりや面接など、よりオンライン化が進んだ「採用活動」
ビジネスで繋がった人は、Linkedlnでの交流が当たり前の世界に
オンライン・リアルを交えたハイブリッド型の面接に変化
Linkedln×ZENKIGEN コラボレーションの可能性
働きやすい社会を目指し、テクノロジーを活用する

ビジネスSNSを活用した採用サービスを提供しているLinkedln

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村上「Linkedlnは世界最大級のビジネス特化型のソーシャルプラットフォームで、『世界で働くすべての人のために、経済的なチャンスを作り出す』ことをビジョンに掲げて活動しています。世界各国で使われており、アメリカでは全労働人口に使っていただいています。ビジネスインサイダーさんのデータによると、もっとも安心して投稿できるSNSとして2017年〜2019年まで3年連続で1位という評価をいただきました」

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村上「Linkedlnの使い方をご紹介します。自分を高めるためや情報収集をするための活用もあるのですが、今日はLinkedlnラーニングをご紹介したいなと思っています。
Linkedlnラーニングは、家にいながらにしてビジネススキルを伸ばすための動画をご覧いただけるサービスです。例えば、リモートでメンバーを管理するにはどうしたらいいか、効率的な1on1の方法など1〜2時間程度の動画でしっかりと勉強できます。ちなみに今なら来年3月末まで一部のコースを無料で閲覧できるので、この機会にぜひLinkedlnに登録してみてくださいね」

藤田「ありがとうございます。Linkedlnさん、良質な記事コンテンツも出されていらっしゃいますよね」

村上「登録してアプリを入れると毎日プッシュ通知で、朝刊が届くんですね。元ジャーナリストがいる編集部を持っているので、キュレーションもインタビューも全て人の手で行っています。自社でもライブ配信をして専門分野を持つインフルエンサーと対談して、深く話し合うといった企画をやっているのですが、非常に好評ですね。
大昔にLinkedlnのアカウントを作ったまま使っていない人も思いますが、当時とはかなり変わっているので、Linkedlnの現在地をぜひ覗きに来てください」

動画面接プラットフォーム「HARUTAKA」を提供しているZENKIGEN

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野澤「社名であるZENKIGENは、禅の言葉で人が持つ能力の全てを発揮することを指す『全機現』から持ってきました。ビジョンには、「テクノロジーを通じて人と企業が全機現できる社会の創出に貢献する」を掲げています。ここから一歩もずれずに事業を展開している会社です」

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野澤「事業は、動画面接プラットフォーム『HARUTAKA』の運営です。機能は2つありまして、1つ目が自撮りでエントリー動画を撮影できること、2つ目がライブでの面接です。エントリー動画とは、求人にエントリーする際に企業に送る動画のこと。履歴書では判らない表情や人となりが判るようになります。ライブ面接はZoomやSkypeのようにリアルタイムで面接ができるシステムです」

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野澤「ありがたいことに10月で4期目を迎え、今まで400社ほどのお客様に利用いただきました。これまでは面接効率の改善をメインに行ってきたのですが、これからは面接の質の向上に取り組んでいきます。なぜやろうと思ったかというと、面接官は『会社の顔』であるにも関わらず、面接官に対しての悪い印象が数値として出てしまっているからです。オンラインで面接をするようになれば動画を録画できるため、それを分析し、面接の質を向上させることが可能。そのため、今後はこの分野を追求していきます」

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野澤「プロダクト名は、ZIGANというものでして。禅の言葉で『慈しみの眼を持って人を見れば、海のように幸せが溢れる:慈眼』という意味を込めて名付けました。
面接の実施後にAIで解析をして面接官にフィードバックをすることで、面接の改善を重ねていけるシステムです。採用×AIは欧米を中心に多くの企業が取り組み、採用工程の削減に大きく寄与しました。海外では面接自体をAIにして採用を進めている企業もあります。しかし、ZIGANは採用こそ人の手で行われるべきものだと考えています。人と向き合い、人の可能性を引き出すのが、人事の役割。採用をオンラインとリアルを組み合わせながら、可能性を模索していきたいと考えています」

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野澤「こちらはプロトタイプの画面ですが、求職者が面接の時に候補者がどういう感情を感じたか、フィードバックを与えることで、面接官に気づきを与え、面接官の採用力、ひいては会社の採用力強化に繋げられればと考えています」

企業と求職者の繋がりや面接など、よりオンライン化が進んだ「採用活動」

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藤田「両社ともオンラインでの採用活動に寄与している会社だと思うのですが、コロナ禍以降、変化はありましたか?」

村上「3・4月は多くの企業が採用の抑制に走ったのですが、最近は徐々に戻ってきたところですね。人事担当者にオンラインでどうやって人を探せばいいのか、どうやって人を見ればいいのかと相談を受けることが多くなりました。
あとは、Linkedlnを使って日常的にタレントをプールしようとする企業が増えました。以前はスタッフィングの会社に依頼するか、ミートアップで関係性を作ることしかできなかったのですが、日常的に候補者といかに接触しておくかが重要になってきましたね」

村上「視聴者から質問をいただいていますね。今までは中途の話でしたが、新卒でもLinkedlnをうまく活用されている学生さんもいらっしゃいます。コロナ禍でOBOG訪問ができないので、Linkedlnで出身大学を辿ってアクセスをしている学生もいましたね。あとは、就活の不安な点などを投稿することで、ビジネスパーソンからアドバイスをもらっている人もいますよ」

野澤「ZENKIGENの場合、新卒採用をする企業のお客様が8割なのですが、問い合わせの数がかなり増えました。3月には初めての問い合わせで、検討ではなく、導入をしたいというお客様も出てきましたね。
コロナ禍でオンライン面接は一般的になりましたが、ZoomやSkypeだと採用の人数が多すぎる場合、非常に手間がかかるし、管理が難しい。その点『Harutaka』なら管理もできるし、エントリー動画を組み合わせてやっていけばさらに効率化にも繋がると問い合わせをもらうようになりました。
従来の採用活動は何千人も応募があって、90%以上を落とす非常に非生産的な採用活動を行っている形。面接をオンラインでできるようになり、動画の解析によってマッチングの精度を高められれば採用全体のやり方が変わるんじゃないかなと思っています。動画の分析はビッグデータの量が格段に増えるので、それを分析すればよりマッチングの精度も高まっていくと予想しています」

ビジネスで繋がった人は、Linkedlnでの交流が当たり前の世界に

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藤田「日本ではFacebookがビジネス寄りのSNSの立ち位置ですよね。アメリカの友人に聞くと(Facebookでビジネスの人と繋がるなんて)ありえないと言われますが、村上さんはどのように考えられていますか?」

村上「日本におけるビジネスSNSは概念がなかったのだと思います。Facebookが日本にきた時、日本ではmixiが全盛期を迎えていました。プライベートSNSに入っていく余地がなかったので、Facebookがビジネス寄りにしたんじゃないかというのが僕の見解です。ただ、ビジネスとプライベートが混在しすぎているので、今後はビジネスで知り合った人はLinkedlnで交流するなど使い分けができるようになればと思っています」

野澤「新卒だと、FacebookよりもLINEなんですよね。ただ、LINEはプライベート感が強いので教えたくない人もいます。その面でもLinkedlnが一般的になったら嬉しいですね」

オンライン・リアルを交えたハイブリッド型の面接に変化

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藤田「今後、オンラインでも会える中でも、最終面接は対面でという話がありましたが、改めて対面で会う価値とはなんなのか?という質問も来ていますが、野澤さんはどうお考えでしょうか?」

野澤「会社の雰囲気は行かないと分からないものですよね。画面上で面接官と話しているだけだと、見えないことが多いんです。受付で待っている間に働いている雰囲気を見ることが大事。オンラインでは五感全てを使っているわけではないので、その分本質を見ることは難しいんです。現時点では面接の回数を増やすしかないのですが、今後はオンライン面談・対面も交えたハイブリット型になっていくのではないかなと思っています」

村上「面接官の立場が一層重要になってきますよね。新卒で面接を受けた人がもしかしたら中途でもう一度受けてくれるかもしれない時代。そういう意識で会社を代表して担当すべきですし、流動性が増えていく時代の中で今回はご縁がなかったけど、今後どこかで仕事したいなと思い続けてもらうことが必要ですよね」

Linkedln×ZENKIGEN コラボレーションの可能性

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藤田「最後にコラボレーションの可能性についてお話を伺いたいなと思うのですが、両社で一緒に何かをできる可能性はあるのでしょうか?」

村上「今日からできることで言えば、まずはイベントのURLのやりとりなど、LINEでやっているようなコミュニケーションをLinkedlnにしてもらえれば」

野澤「将来的な話ですが、動画をAI分析した結果にSPIなどの情報をデータとして入れることで、より精度のマッチングが可能になるのではないかなと。例えば、Linkedlnにある情報をご本人が許可をして入れるということも可能性としては十分にあり得る話だと思っています。とはいえ、まだ技術として確立していないので、将来的にそんな話をさせていただきたければ嬉しいです」

働きやすい社会を目指し、テクノロジーを活用する

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藤田「最後に両社ともにここから先どんなことを考えていらっしゃるか簡単なメッセージをいただければと思います」

村上「まずは日本でビジネスSNSという概念が浸透し切るまで続けていくことが第一かなと。デジタルトランスフォーメーションの文脈で言うと、まだトランスフォームしていないんですよね。ツール入れて終わりというか。これからはオンラインが面接のスタンダードになった時に採用がどう変わっていくのか、ひいては企業文化まで変えていく必要があります。そこまで来てようやくトランスフォームの世界に辿り着くのかなと。ここを僕たちは推し進めていくべきなんだと思います。
今、マッチングの問題で採用がうまくいっていないケースもたくさん出てきています。例えば、女性が職場復帰を考えた時に3〜4時間だけでも働きたい人は大勢いる。これを企業と的確にマッチングすることで、労働人口自体を増やすことができるはずです。そういったところに貢献していきたい、やり切りたいというのが今の思いです」

野澤「『全機現』という社名にしたのは、人が持つ能力の全てを発揮できる社会をつくること。ただ、子どもたちが電車で疲れ切った大人を見て『あんな大人になりたくない』と考えるのが、本当に悲しいんですよ。『そんな社会を残しちゃいかん』とど真ん中で事業を展開してきました。
今の事業は入り口でしかなく、今後は職場の働き方にも進出予定です。ちょうど今東京大学と、声からメンタル状態を可視化をする研究をしています。鬱になると再発率が9割にもなるんですよ。今、日本に6,000万人いる労働人口のうち5%が鬱だと言われています。働きやすい会社に変えるだけで生産性を10%あげることができるんですね。採用だけでなく、職場でも働きやすさを追求することで、働く大人が『全機現』でいられる社会をつくるために、社名から一歩もずれずにブレることなく、人生をかけて歩んでいきたいですね」

コロナ禍で大きく変わった採用活動。決して現時点のやり方が正しいのではなく、オンラインとリアルを掛け合わせた新たな形を模索していく。コロナ禍で翻弄される採用活動だが、より質の高い採用ができそうな今後が楽しみになる1時間だった。

当日のセッション
『Withコロナ時代 SNSと動画テクノロジーの活用で採用はどう変化するか?』xTECH Lab MARUNOUCHI vol.1