TO TOP

スタートアップ流で革命を起こす。スタートアップの手法を利用した、新規事業立ち上げへのアプローチ【xTECH Lab MARUNOUCHI vol.3 イベントレポート】

読了時間:約 8 分

This article can be read in 8 minutes

大手企業とスタートアップとの連携が盛り上がりを見せています。その一方で、実際に大手企業で新規事業に取り組もうとすると、既存事業による制約や社内調整の難しさから、困難を感じてしまうことも少なくないのではないでしょうか。

こうした課題を抱える方の力になればと、企業間のコラボレーションの可能性や成功事例を学ぶ場を提供するコミュニティ「xTECH Lab MARUNOUCHI」では、大手企業で新規事業を立ち上げるための処方箋となるようなイベントを企画。

今回は、トヨタ自動車初のスタートアップ出向先である株式会社AlphaDriveの土井雄介氏と、一気通貫での事業開発支援を行う株式会社アドライトの木村忠昭氏を迎えて、新規事業の立ち上げに必要な要素、大手企業とスタートアップの違い、スタートアップ流のアプローチ方法などについて話していただきました。

INDEX

トヨタ自動車で初のスタートアップ出向先、AlphaDrive
起業家精神を軸に事業創出を支援する、アドライト
大手企業に必要なスタートアップの要素とは?
社内で新規事業を立ち上げる難しさ
大手企業・スタートアップそれぞれのメリット・デメリット
大手企業・スタートアップでの活躍する人材の違い
イノベーションを起こす仕組み
違いを力に変えていく。スタートアップの視点から見るアプローチ法

トヨタ自動車で初のスタートアップ出向先、AlphaDrive

▼途中から再生する 

土井「トヨタ自動車から、新規事業の支援を行うスタートアップであるAlphaDriveに出向している、土井と申します。ONE JAPANという大手企業55社ほどが集まった有志活動の幹事や、ONE JAPAN Tokaiの会長を兼任しながら、自分自身で副業兼業支援なども行っています。2015年にトヨタ自動車に入社し、はじめは物流改善という業務改善支援をする部署に配属されたので、新規事業とは少し遠いキャリアでした。その後入社2年目で、A-1 TOYOTAというビジネスモデルコンテストを先輩方と有志で立ち上げ、それがONE JAPANに繋がっています。その活動をきっかけにトヨタとしてオフィシャルに新規事業のキャリアが始まりました。

当時は、大手企業の中で新規事業を起こすのはなかなか難しいと感じていました。そんなときに今のAlphaDriveのCEOである麻生 要一(当時、リクルート)が、『すべてのサラリーマンは、社内起業家として覚醒できる。その仕組みがあるんだ』と言い切っていたんですよ。なので、彼のところでその仕組みを学んで、トヨタに持ち帰れば、もっと新しいものを大手企業から作れるんじゃないかと思ったんです。大手企業には出向という仕組みがあると知り、何を学ぶのかを自分で設定し、自ら相手と交渉を行いその企業に行くという仕組みを整えました。そして、トヨタで初めてのスタートアップに出向(2021年3月まで)。現在は、自身の経験を活かしながら多くの会社の新規事業をお手伝いさせていただいています」

起業家精神を軸に事業創出を支援する、アドライト

▼途中から再生する

木村「私自身は元々会計士で、ベンチャー支援を専門にやっている部署で上場の支援を行っていました。2008年にアドライトを創業し、複数のスタートアップの社外役員として私個人が動きながら、上場の支援や資金調達、外部連携の支援をやっています。これまでに社外役員として関わった会社が5社上場を果たしています。ここ4、5年は、起業家と一緒に事業を作ってきた経験や、国内海外の様々なスタートアップのエコシステムと連携してきたベースを活かして、大きな事業会社や自治体などの組織でも、事業開発の支援を行っています」

▼途中から再生する

木村「アドライトという会社を、『事業創出のプロデューサー』と定義しています。スタートアップ流のアントレプレナーシップを持って、どう事業にしていくのかを、事業会社の皆さまと一緒に展開をしたり、その実現に向けて伴走するプロフェッショナルのチームを自社に持っていたり。つまり、事業開発の一気通貫の支援を行っています」

▼途中から再生する

木村「あとはオープンイノベーションの部分ですと、色々な自治体や政府機関と一緒に、エコシステムから作ることも行っています。今は自治体でも地場の企業とのマッチングによるイノベーション創出が盛り上がってきています。あとはそれをどう事業化に繋げていくのかが大きなテーマかなと思っていますし、我々もその事業化の部分を意識しつつ活動していければと考えています」

大手企業に必要なスタートアップの要素とは?

▼途中から再生する

藤田「大手企業にとっても、スタートアップの要素が必要になってきていると思うのですが、その要素は分解するとどういうものなのかを伺えればと思います」

木村「大きく2つあるかなと思っています。1つは、中にいる人材がスタートアップ的な要素を持って動くという点。前例のないことがどんどん起きている世の中なので、前例や過去の事例に捉われずに、新しいことにチャレンジできる人や考え方、価値観が必要になってきていると思います。社内にそういった要素を持っておかないと、世の中が大きく変化した時に対応できなくなってしまうので。もう1つはオープンイノベーションですね。本社とは別拠点で新しいことをやりながら、スタートアップや外部のリソースと連携していく。この2つが要素として、すごく必要なんじゃないかと感じています」

社内で新規事業を立ち上げる難しさ

▼途中から再生する

藤田「アドライトさんは、社内のベンチャーを立ち上げる部分もお手伝いされてると思うんですが、ゼロイチ人材の重要性というのはやはりどんどん増していますか?」

木村「そうですね。ゼロイチといっても社内ベンチャーのゼロイチは変数が多いので、難しいことも多いと思います。ゼロイチのスキルも大事だけど、色んなものを調整し元々あるものと上手くバランスを取っていくという要素も必要だったりするので、ピュアにゼロイチをやるよりも、社内ベンチャーの方が難しいことってあるんだろうなと」

土井「実体験としては、会社の中を突破していくスキルと、調整など丁寧にコミュニケーションを取っていくスキルは全く違うと感じていて。僕は突破系かも知れないですが、先輩方は調整が得意で、この組み合わせが上手く噛み合ったので、A-1も走れたなと思います。一人で全部できる人もいるのですが、フェーズによってどちらのスキルを使うかを使い分けられたり、チームとして役割分担ができる方が、会社の中で新規事業が立ち上がるイメージはありますね」
藤田「スタートアップは自分で決断が下せるけど、それも難しいというのが大手企業の中の新規事業だとあるんだろうなと」

土井「大手企業はネガティブ要素が強いのかなと私も思っていたんですが、もし僕がスタートアップで新規事業をやっていたとしたら、こんなに色々なことはできていないんですよね大企業の名前で、先人たちが築き上げた信頼感を使わせていただいているから、こういうことができている。これだけいいものを使わせていただいているので、もちろん調整が必要になってくるし、自分で意思決定できないのは当然だなと思います。そのあたりはスタートアップと大手企業でメリットデメリットが必ずしもあると感じます」

大手企業・スタートアップそれぞれのメリット・デメリット

▼途中から再生する

藤田「土井さんは大手企業のトヨタからスタートアップに移られて、大手企業的な動き方とスタートアップ的な動き方の両方を見ていますが、それぞれの良いところや違いはどう感じてますか?」

土井「スタートアップは自分で意思決定できるのがすごいなと思っています。すべて自由で意思決定できるけど、責任も自分にあるので、そこは良さであり、大変さでもあるのかなと。大手企業になると、意思決定の部分での自由度はスタートアップに比べ、低いとかんじます。ですが、、責任としては分散されてるので、そんなに失敗をしない動き方ができますし、とんでもないことをしでかすこともない。しかも何かをやろうとするときは、大きな規模で色々なことができるので、そこは良い点だと思います。
スキル的な部分ですと、大手企業で最初に受ける研修がすごく役に立っていて。丁寧な仕事の進め方のような型が大手企業にはあるんですね。これがスタートアップにはなかった。その点僕たちは丁寧に教育を受けているし、先輩たちが培った仕事の進め方を理解しているので、このあたりは組み合わせが大事なのではないかと思っています」

藤田「逆に、ここは弱いというところはありますか?」

土井「先ほどの裏返しにはなるのですが、大手企業は決断を下すまで時間がかかります。ここが突破できたら早いと思うので、一定の意思決定権を下におろすような動きは、良い動きなのではないかと思います。スタートアップの弱さも先ほどの裏返しですが、大手企業のような型が少ない点かなと。顧客に失礼なことをしてしまって、企画が無しになるといった失敗談も聞くことがあります。これは型がないスタートアップならではですし、意思決定権がおりすぎているからこその問題だと感じます。そこで大手企業出身者が入ることによって、こういう型があるということをお伝えできる。逆にスタートアップ側のマインドが大手企業にインストールされれば、意思決定が下におりてきて、仕事が早く進む。なので、どちらが良いというよりかは、どちらも組み合わせて上手くやっていくといいのかなと思っています」

大手企業・スタートアップでの活躍する人材の違い

▼途中から再生する

藤田「木村さんはスタートアップを数多く支援されてきて、大手企業も支援されてますが、スタートアップ人材と大手企業で活躍される人材は違いますか?」

木村「共通項もあると思いますが、既存事業で活躍できる人と、新規事業で活躍できる人は違いますし、事業のステージによっても違っています。スタートアップだと、このフェーズはこの人が引っ張るとか、チームの中で誰がリードするかとか、上手く変えながら進んでいくこともあると思うのですが、フェーズや事業の種類によって、力を発揮する人は変わると思うんですね。画一的な人だけだと色々なフェーズに対応できなくなるので、チームの中にグラデーションがあり、尚且つチームアップするという点が、スタートアップ的な進め方かなと」

藤田「スキル的なダイバーシティも採用の時点からしっかりやっていかないと、これからの時代は柔軟に吸収できなかったり、対応できなかったりするのでしょうか?」

木村「採用もありますが、働き方自体がかなり柔軟化しているので、採用に力を入れるというよりは、色々な人とチームを組めるように制度や仕組みを活用して、個人やスタートアップとチームアップしていくことができれば良いと思います。社員を多様化する以外のやり方もあるのかなと、最近はすごく感じますね」

イノベーションを起こす仕組み

▼途中から再生する

藤田「具体的な質問が1つ来ていますね。『中間素材メーカー(tier 2-3)で、どうすればイノベーションが起こるのか?』ということですが、いかがでしょうか?」

土井「顧客の部分を変えていくのが一番やりやすいと思います。顧客に対して色々な仮説検証をしていくうちに、新しい課題が見えてきたりもするので。toBではなく、toCの方にも課題があったということもあると思います。なので、どうしたらイノベーションが起こるかというよりも、あまり既存にこだわらずに、とにかく顧客に会いにいくというのが一番の近道かなと」
木村「私もそう思います。ポテンシャルは色んなところにあって、メーカーが持っている様々なケイパビリティや要素を、他の市場や客に当てるということがあると思うんです。一番ボトルネックになるのは、tier 2-3のマインドセットでしょうか。仕事のやり方や価値観がボトルネックになって、チャンスはあるのにそういった発想や行動ができないということが、一番大きいんだろうなと感じますね」

違いを力に変えていく。スタートアップの視点から見るアプローチ法

▼途中から再生する

藤田「最後に、新規事業をスタートアップ的なアプローチでやっていくということに対して、参加者の方々に何かメッセージをお願いします」

土井「想いを持った方はいるんだなと改めて思いました。働き方がグラデーションになっていったり、企業の中で混じり合っていくということを、もっと起こしていけるような世界観を作っていきたいと思っていますので、皆さんで一緒に力を合わせていきましょう」
木村「色々な起業家の皆さんとご一緒しましたが、起業家は社会に適合しない人も多い。でも何か1つのものが極端に尖っていて、そこに色んな人が集まってきたり、新しいことが起こったりするので、『普通』というものの価値が無くなってきているなと感じています。人と違っている部分がその人の価値であって、そこをいかに研ぎ澄まして新しいことを起こしていくのかというのが、起業家やスタートアップの詰め方。自分が他と違う部分を意識して、そこを自分の価値にしてコミュニティに入っていけると、連携しやすくなるのかなと思います」
大手企業での新規事業の立ち上げ。スタートアップの要素を取り入れ、それぞれの良さを組み合わせることで、新たな風が吹き始めています。今後のイノベーションに期待が膨らむ1時間でした。

▼当日のセッション
『スタートアップ流で巻き起こすイノベーション!大手企業で新規事業を創出する』xTECH Lab MARUNOUCHI vol.3

https://www.youtube.com/watch?v=-kLCsXeoSzY&feature=youtu.be