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ファッション特化AIでアパレル業界の変革に挑むニューロープ。資金ショートから受託開発まで、直面した創業時の苦労とは――Founders Night Marunouchi vol.26(オンライン)

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2021年4月28日、三菱地所が運営するEGG JAPANのビジネスコミュニティ「東京21cクラブ」と、イベント・コミュニティ管理サービス「Peatix」が共同開催する「Founders Night Marunouchi」を実施しました。(前回のイベントレポートはこちら )。

このイベントは、スタートアップの第一線で活躍する経営者から学びを得るもの。

今回登壇いただいたのは、株式会社ニューロープ代表取締役の酒井聡さん。同社はファッションに特化したAIを活用し、ファッションスナップを自動解析する「#CBK scnnr(カブキスキャナー)」やコーディネートを自動提案する人工知能ショップ店員「Mika」、ファッションスナップメディア「#CBK」などのサービスを展開しています。

酒井さんは、新卒で株式会社マイナビに入社し、マーケティングやプロモーションに従事。その後、株式会社ランチェスターにて、Webサイトやスマホアプリケーションの企画・開発に携わり、2014年1月にニューロープを創業しました。

なぜファッション領域に特化した事業を展開したのか。また、創業時にどのような苦労を経て、今に至るのか。Peatix Japan取締役の藤田祐司さん、東京21cクラブ運営統括の旦部聡志がモデレーターを務め、同社が事業成長に至るまでの過程を伺いました。

INDEX

資金ショートの危機を乗り越え、「勝つ覚悟」で事業に挑戦
国内のみならず、海外にもファッション特化AIを広めたい

資金ショートの危機を乗り越え、「勝つ覚悟」で事業に挑戦

2021年4月、ファッション通販サイト「MAGASEEK」と提携し、EC上での「スタイリング提案」導入を発表するなど、アパレル業界向けの事業を展開し、成長するニューロープ。ファッション業界特化のAIを開発し、トレンド予測やデータ分析などのサービスを提供しています。

もともと酒井さんは読書が好きで、一時期は著名な経営者が書いた本を読むのに夢中になっていたと語ります。それを機に、社会人1年目から「いずれ起業しよう」と考えていたそうです。ランチェスター時代に、サイバーエージェントが主催する「アントレプレナー・イノベーションキャンプ」に参加。そこで優勝し、1000万円の出資を受け、起業しました。

「当時、事業アイデアを10個考えていました。その中で『これが良いのでは』とメンターにピックアップいただいたのが、ファッション領域でした。もともとファッションへの興味関心も強かったことから、まずファッション特化のメディアコマースを立ち上げました」

インフルエンサーとの提携などを行いながら、メディア事業のグロースに力を注ぐ一方で、競合に当たるキュレーションメディアの乱立により、マネタイズに苦戦します。さらに、資本政策面の失敗が尾を引き、資金調達にも苦労したといいます。

「ついにはキャッシュが底を尽き、食い扶持を稼ぐためにも受託開発に踏み切ることを決意しました。1年半はWebアプリやキャンペーンサイトなどの開発に追われましたね。隙間時間に自社サービスの開発を行っていましたが、なかなかリソースを割ききれず、苦しい思いをしました」

苦しんだ時期もあった中で、再び「自社サービスにフォーカスしよう」と決めた酒井さん。その決断は容易にできるものではありません。当時の思いを次のように振り返りました。

「我々は、スタートアップです。出資いただいている株主の期待に背くわけにはいかないし、このままでは会社の方向性に共感して集まってくれたメンバーのモチベーションも下がってしまうという危機感がありました。そのため、受託開発で貯めた資金を自社プロダクト開発に投下し、『これでだめなら、仕方がない』と覚悟を持とうと決めました」

国内のみならず、海外にもファッション特化AIを広めたい

同社は、限られた資金でファッションに限らずいくつかの事業をスモールスタートし、仮説検証を行いました。そのうえで、需要がありそうな事業に特化。2017年4月、ファッション特化AIをリリースし、サービス展開を進めていきました。さまざまなメディアに取り上げられたこともあり、導入社数を増加。2019年10月には1億円を超える資金調達を実施し、その勢いを加速させています。

酒井さんによれば、AIが役に立つこと、立たないことを分けて考える必要があって、業界のことをお客さんに教えてもらいながら、プロダクトのチューニングを続けてきたそうです。

「例えば大きなトレンドサイクルは、戦後数回しか起きておらず、こういったデータの少ない分野でAIに予測させることは困難です。一方でコレクションを先行指標としたり、シーズンが始まってからマーケットの流れを見たりすることで意味のあるデータや予測を立てることはできます。あくまでもAIは手段で、解くべき課題は日々コミュニケーションしているお客さんにヒントをいただくことが多いです」

また、酒井さんは同社のファッション特化AIが持つ強みとして、創業時からメディアの運営をしてきたことでAIとコンテンツを掛け合わせたサービス提供が可能なこと、CTOの荒井浩己さんを中心とした技術力の高い開発チームの存在を挙げました。

「ファッション特化AIを開発する際に、多くの企業がぶつかるのはデータがないことです。私たちは#CBKでのメディア運営を通して大量のデータが蓄積されていたため、コストを抑えた開発ができました。そして、CTOの荒井を中心にエンジニアチームに恵まれたことが、ここまで来るために大きな要素だったと考えています」

コロナ禍で大きな影響を受けているアパレル業界。同社も影響を受ける側面はあったそうですが、EC向けのリコメンデーションツールを中心に需要が高まり、現在も売上規模を拡大しているそうです。最後に「情勢を見つつではありますが、中長期では海外展開にも挑戦していきたい」と酒井さんは今後の抱負を語り、イベントは締めくくられました。

▼当日のセッション
『ファッション特化AIでアパレル業界の変革に挑むニューロープ。資金ショートから受託開発まで、直面した創業時の苦労とは』
https://www.youtube.com/watch?v=m_GBjtIYJkw

●転載元記事:https://www.egg-japan.com/news/4465