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『コーポレート・ベンチャーキャピタル2社に聞く、なぜ大手企業がCVCを設立するのか?』xTECH Lab MARUNOUCHI vol.6

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ここ数年、CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)を立ち上げる大手企業が多くなってきました。CVCは投資の側面だけでなく、オープンイノベーションを語る上でも、重要なキーワードとなっています。しかし、いざ始めようと思っても、どのスタートアップとどのように協業していけばいいかが分からないという方もいるのではないでしょうか。

こうした課題を抱える方の力になればと、企業間のコラボレーションの可能性や成功事例を学ぶ場を提供するコミュニティ「xTECH Lab MARUNOUCHI」では、日本でビジネスを展開しているグローバルテクノロジー企業から話を聞くイベントを企画。

今回は、ENEOSホールディングス執行役員の矢崎 靖典氏と富士通ベンチャーズの代表を務める矢島 英明氏をゲストにお迎えしました。コーポレート・ベンチャーキャピタルである2社に、CVCとVCの違い、CVCを取り巻く環境、CVC設立の想い、本業との相乗効果について伺いました。

INDEX

スタートアップと協業して事業創造に取り組む、ENEOSの「未来事業推進部」
12年以上のVC/CVC経験を持つ矢島氏が始めた富士通ベンチャーズのCVC
金融商品と経営上のツール。目的が異なる、VCとCVC
CVCが出島に拠点を構えたほうがいい理由
もはや避けられないオープンイノベーション。持つべき武器のひとつが、CVC

スタートアップと協業して事業創造に取り組む、ENEOSの「未来事業推進部」

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矢崎:ENEOSホールディングスで2019年4月に始まった「未来事業推進部」の責任者をしている矢崎と申します。発足のきっかけは、会社として2040年のシナリオを描いたときに燃料販売などの既存事業の将来について経営層の間で課題の大きさを共有したこと。見通しが立てづらい未来に向かってステップアップしていくために、社会シナリオやありたい姿を明確にしました。生き残りをかけて新たな事業創造を描いていくために「未来事業推進部」を立ち上げました。

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矢崎:スピード感を持つために、独立した決裁権限を持ち、3年間で150億円を目指して動いています。チームは現在27名。いわゆる探索・出資だけではなく、事業創造も行っています。場所は本社ではなく、Inspired.Labで活動しています。部としてビジョン「自らを変革し、挑戦者とともに大切なものを未来へ」とつくり、部内で意識を共有。

▼途中から再生する https://youtu.be/lf_Q3C0byEo?t=934

矢崎:注力しているのは、大きく分けて3領域。まちづくり・モビリティ、低炭素・循環型社会、データサイエンス&先端社会です。発足から2年間で現在70億円超を出資・協業させていただいています。

12年以上のVC/CVC経験を持つ矢島氏が始めた富士通ベンチャーズのCVC

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矢島:富士通ベンチャーズ株式会社の矢島と申します。新卒で、NTTデータのエンジニアとしてキャリアをスタートし、直近12年はVC・CVC業界にいます。2014年から3年間はCISCOの投資・買収活動を一手に担うCorporate Developmentという部署に在籍していました。CISCOはバランスシート型の投資を採用しており、チームメンバーはVC/CVC経験者で構成されています。アメリカだと一般的なスタイルですね。その後、NTTドコモ・ベンチャーズへ移籍しました。ドコモの100%子会社で、ファンドから投資するスタイルです。こちらは基本的にNTTグループ内部の人材が中心で、M&Aは別部署が担当していました。その後、昨年10月富士通にジョインし、2021年4月に新たな100億円のCVCファンドを設立しました。私に与えられたミッションは富士通のCVC活動の再設計です。過去在籍していたCVC2社の良いところを持ってきて、ベストプラクティスに近い運営をできればと考えています。また、富士通のチームは、経営陣直轄の部署で、財源としてはバランスシートとファンドどちらも使う予定です。

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矢島:実は富士通はCVCとしては比較的長い歴史を持っています。最初のCVCファンドの設立は2006年ですが、実はそれ以前の90年代からベンチャー企業と関わりを持ってきました。CVCファンドを立ち上げてからは、外部のスタートアップへの投資に加えて、社内起業制度出身の会社にもどんどん出資しました。その結果、社内発の2社が2010年と昨年に上場を果たしました。

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矢島:社内外ともに投資対象とするスタイルのCVCファンドは数年前に一定の役割を終え、過去数年間は目立った投資活動を行っておりませんでしたが、現社長の時田が2019年に就任して以降、まず2020年春にStrategic Growth&Inverstment室が発足し、DX企業への変革を加速させることを目的にInorganic Growthを推進する専門部署として活動を開始しました。

そこに所属するベンチャー投資チームとしては、富士通のバランスシートによる投資を行うことをミッションとしておりましたが、その活動のスピードアップを目的として発展的にスピンアウトしたのが、富士通ベンチャーズの100億円のCVCファンドです。

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矢島:CVCファンドは純粋に全社戦略推進のためのツールと位置付けているので、製造業、リテール、ヘルスケア、スマートシティ、スマートガバメント、セキュリティなど、富士通が重点的に注力している分野への投資が中心です。投資先は国を問わず探していくつもりです。ゆくゆくは投資機能を各地におけるくらい大きくできたらと思っています。

金融商品と経営上のツール。目的が異なる、VCとCVC

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藤田:最初にVCとCVCの違いについて教えていただけますか?

矢島:個人的な見解かもしれないですが、VCは、事業会社や金融機関、機関投資家から集めた資金でスタートアップ企業に投資をし、数年後に財務的リターンとしての分配を目指す金融商品の一種であり、一方のCVCは自社の事業分野と関わりのあるスタートアップに投資をし、協業を通じて戦略的リターンを目指すための経営上のツールの一種であるという認識です。

矢崎:基本的にはVCもCVCも、どちらも財務的価値を求める必要はあります。ただ、CVCはより主体性を持つ必要があるのかなと。投資する側もされる側も、こういう世界を作ろうと共通認識を持った上で一緒にやりましょうと出資をするもの。担当者は並走というよりも一緒に事業をつくっていく感覚で動いています。

藤田:矢島さんは出資先とはどのような動き方をされているのでしょうか?

矢島:基本的には矢崎さんと一緒ですね。VCは投資先の経営方針含めて会社全体のことを考えますが、CVCの場合は投資目的として掲げた協業をいかに軌道に載せるかを考えて一緒に動いています。投資先に貢献しつつも、自分たちのメリットもいかに作るかがCVCの鍵ですね。

藤田:ここ数年でCVCの活動がかなり活発になっている印象がありますが、業界内にいる人として変化は感じてきましたか?

矢島:ここ数年どんどんCVCが増えていることは感じています。ただ、CVC自体があまり上手くいっていないという印象を持たれている方が世間にはまだまだ多いようです。活動の活発化と世の中の印象が矛盾している印象があって。ただ、ここ数年で参入が増えているのは、CVCの成功事例が徐々に見えてき始めた証拠なのかなとも思います。業界としての経験値も増えてきて、解が見えてきているのではないか、ポジティブなサイクルに入ったのではないかと考えています。

矢崎:おっしゃる通りです。だからこそ、私たちも2019年に参入しました。先人の皆さんがある程度の基準を作ってくれたから、私たち後発組は一気に学んで進めることができたのだと思います。

CVCが出島に拠点を構えたほうがいい理由

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藤田:2社とも本社以外にCVCの拠点を設けていらっしゃいますが、なぜ出島であるほうがいいのでしょうか?

矢崎:本社から離れて社外の人が当たり前にいる空間にいると、スタッフの話し方が変わってきたんですよね。本社にいると上司部下の関係性もあるので、なかなかカジュアルにはならない。でも、Inspired.Labにいるとカジュアルになるし、新たな繋がりも生まれてきます。大手企業の人にすると、本社とは別の環境で仕事ができるのは非常に大きいことなのだと思います。

矢島:私もいかに多くのスタートアップの方と接点を持つかが大事だと思っています。本社で社外の人と打ち合わせをしようとすると、来館者登録をして受付でチェックして…と心理的なハードルが高い。それもあって、CVCは本社の外に構えることが多いんです。で、当社としてもどこを拠点にしようかと考えたときにすでに様々な会社さんが入っていて、スタートアップもいて、富士通とも取引がある。それに当てはまるのが三菱地所さんでした。

藤田:なるほど。では、矢崎さんがInspired.Labにした理由は?

矢崎:本社からInspired.Labまで2ブロックしか離れていないし、移りやすかったことが一番ですね。本社の人にも来てほしいし、取り組みを知ってほしかった。その意味では物理的に距離が近いことが重要な要素のひとつでした。

もはや避けられないオープンイノベーション。持つべき武器のひとつが、CVC

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藤田:大手企業がCVCを設立する意義など、設立に躊躇している方にアドバイスなどあれば教えてください。

矢崎:オープンイノベーションで外の人と関わる最も効率的な方法の一つが、CVCです。先人のみなさんのおかげで始め方は確立されているので、まずは飛び込んでみることが大事ではないでしょうか。

矢島:オープンイノベーションは避けて通れないところまで来ています。その意味でCVCは単なる協業だけでなく、投資の要素が入るので更に高い効果を得ることができる。抜きどころを間違えなければ使える武器です。もはや各企業が必ず持っておくべき武器のひとつではないでしょうか。

藤田:最後に、今後の展望について教えてください。

矢崎:CVCがどんな社会的なインパクトを与えられるか、課題はたくさんあります。事業創造にしても、周りから見られているので資する活動をしていきたいと考えています。

矢島:まだ始まったばかりなので、まずは結果を出すことが第一ですね。その上でいかに会社に役立つか、スタートアップへの貢献も含めて全方向に結果を出しながら、作ってよかったと言われるような組織を作っていきたいです。

▼当日のセッション
『コーポレート・ベンチャーキャピタル2社に聞く、なぜ大手企業がCVCを設立するのか?』
https://youtu.be/lf_Q3C0byEo