どんな企業にとっても避けては通れない採用活動。会社を大きく成長させてくれる人材を確保することは企業にとっての最重要項目ともいえるかもしれません。しかし、今は企業が選ばれる時代。どのように採用活動を続ければいいか分からないという方もいるのではないでしょうか。
こうした課題を抱える方の力になれればと、企業間のコラボレーションの可能性や成功事例を学ぶ場を提供するコミュニティ「xTECH Lab MARUNOUCHI」では、日本でビジネスを展開しているグローバルテクノロジー企業から話を聞くイベントを企画。
今回は、日米にて17年の人材サービス業に携わるKOME Global代表の幸村友美氏とContractS株式会社VPofHR増井隆文氏をゲストにお迎えしました。
INDEX
・長年、日米の人材サービス業に携わり、2020年に独立
・大手からスタートアップ、外資系までさまざまな企業でHR領域に携わる
・スタートアップが採用力を高めるためには
・発展してきた産業の違いが、HRに対する日米の取り組みの違いに
長年、日米の人材サービス業に携わり、2020年に独立
幸村:幸村友美と申します。日米での人材業界が一番長くて17年ほどやっています。前々職のパソナUSオフィスでは8年半お世話になりまして、主にアメリカにある日系企業の採用と人事コンサルをしていました。その後、アメリカから日本に駐在という形で出向して日本側でアメリカチームを立ち上げました。2018年にHRテックやイノベーション事業を行うAIベンチャーにジョインし、その後2020年2月に独立といった経歴です。
幸村:現在は、組織開発、コミュニティ運営、事業開発支援を主に行なっています。組織開発事業では、人材研修を含めたマネジメントや働き方改革のお手伝い、採用支援など。また、事業開発では人事系新サービスの開発支援などを行っています。シリコンバレーの人事のトレンドをリサーチするなどのコンサル的なお仕事もしています。
幸村: Global Perspectivesという会社ではサスティナビリティ事業の創出ワークショップ、サスティナビリティ導入支援をしています。この会社はリーダーシップメンバーも多様で、イギリスやオーストラリアなど、全員国籍が違うメンバーと訛りのある英語で日々ミーティングをしています。そんなユニークなメンバーで顧客企業のサスティナビリティのお手伝いをしています。
幸村:最後にサイボウズさんのお仕事では、「チームワーク」をキーワードに働き方や、新しい組織文化など、これからの組織作りを広げていくお手伝いをしています。
大手からスタートアップ、外資系までさまざまな企業でHR領域に携わる
増井: ContractS株式会社でVPofHRをやっている増井です。契約のDXプラットフォームということで色んな会社の契約関連の業務をワンストップで最適化するクラウドサービスを提供しています。
新卒で入ってから約13年、さまざまな事業会社での人事をずっとやってきました。20代はSlerであるNTTデータの人事企画、サクセッション・プランニング運用や設計を主に経験してきました。30代に差し掛かり、HRのプロとして腕を磨くには欧米のHRBPを肌で感じてみたいという思いがあって、外資系の製薬企業の方でお世話になりました。そのあとGREEというゲームのメガベンチャーで事業のHR全体をみるように。今は社員80人のスタートアップ、ContractSの一員です。
事業の紹介もさせて下さい。私たちContractSのビジネスドメインである「契約」に目を向けると、電子契約や脱はんこ、デジタルトランスフォーメーション、政府によるデジタル庁の設置と大きな流れが来ていてマーケットも大きくなってきています。私たちはそこで旗を振っている状況です。この状況を踏まえ、2021年8月21日に法務部向けのサービスではなく契約全般の業務を扱う会社にリブランディングしようとHolmesからContractSに社名変更をしました。
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増井:優秀な人材は社会課題やグローバルな課題解決を望むと思っています。最近、にわかにSDGsがビッグワードみたいになっていますが、元々日本のスタートアップは社会的にどういう価値を提供できるのかを真剣に考えてきました。私たちのスタンスも同じで、スタートアップはやっぱりそこを起点に人集めをするべきだと思います。そのためにもSDGsと紐付けた解釈を社内のメンバーでワークショップをやったり、経営陣でディスカッションをやったりしながらメッセージアウトをしています。
スタートアップが採用力を高めるためには
藤田:企業のビジョンや社会課題へ姿勢みたいなものをしっかりと取り組むようになったのは、昔からそういうふうな考えだったのか、割とこの数年でしっかりと向き合うようになったのか、そのあたりの変化ってありますか?
幸村:企業のビジョンなどのメッセージは昔から伝えていたと思うんです。ただ、伝え方が少しずつ変わってきていると思ってきていて。今はどちらかというと『自社にジョインしてくれることで、こういう社会的価値を生み出すんだ』という、より候補者の視点に寄ったメッセージになっていると思います。
増井:私は表現が変わっているだけだなと思っています。最近はパーパスとよく言われていますが、それって昔から経営理念とか社訓とか言われているものを指しているだけ。自分たちの仕事が社会にどう良い影響を与えるのか、社会をどう変えていくのか、私たちの生活がどういう風により豊かになるのか。仕事の意義や目的を視座高く発信できないとスタートアップの経営も採用もできないと思っています。
増井:幸村さんにお伺いしたいのですが、採用力を高めるためにキャンディデイトの方とのコミュニケーションの根本やツールがどう変わってきたか教えていただけますか?
幸村:ツールは色々とあるんですけれど、コミュニケーションというところでは、採用サイドが、より深いコミュニケーションを候補者と取ることを意識していると思います。例えばエンジニア専門のリクルーターをおいて、特定の候補者とコミュニケーションを取る。スキルの確認ができるということはもちろん、自社のプロダクトの工程などについて、より深く魅力を伝えることができる。このような段階的な仕組み作りをしているところはあるかなと思います。
増井:結構、中途採用がメインとなる即戦力になるかスキルを見極めたいという思考になりますよね。日本だと採用計画をどう埋めるかみたいな発想になりがちだけど、やっぱりパーパスを実現させる人をどれだけ集められるかがスタートアップの採用力においてはでは根本となります。そういう意味においては、リクルーターとしてのチームの編成だとかプロセス自体もひと工夫必要なんじゃないかという課題感はありますね。
幸村:この前シリコンバレーのスタートアップの人事の方と、企業カルチャーというキーワードはすごくキーになってくるという話をしていたんですね。候補者に対して他社とどう差別化するか、どうやって人を採用するかという話をした時に、「事業が伸びている」「成長性がある」「福利厚生やサラリーが競合優位性がある」というのは前提とした上で、その他に1つ目はプロダクトの魅力、2つ目は個人の成長機会の提供、3つ目はカルチャーが重要になると。
候補者は、その企業がどういうカルチャーを持っていて、そのカルチャーがどこまで浸透しているのかをリクルーターとのコミュニケーションの中で見極めようとしています。
また、採用側としては、自分たちのカルチャーに合う人だけを採用しても、多様性のある組織にはならない。だから、自社のカルチャーに共感するのは前提なんだけれど、違うスパイスを付加してくれる、カルチャーをもっと豊かにしてくれる候補者を探すのだそうです。
藤田:今のトレンドでいうと採用力を高めるための情報発信の手法はどういうものがあるのでしょうか?
幸村:そうですね。私はSNS、instagramやLinkdinは活用しています。Linkdin自体が採用ツールになっているので、そこで自社の取り組みやイベントなどを紹介しています。
増井:私たちの自社の魅力を動画や音声でどう表現できるのかというのはチャレンジしなければいけないなと思っています。仮説検証をやり続けることはスタートアップの基本スタンスだと思っているので、とにかく色んなものに新しいものにチャレンジしていくことだなと思っています。
発展してきた産業の違いが、HRに対する日米の取り組みの違いに
藤田:HRに対する日米の取り組みの違いなどもあるのでしょうか?
幸村:アメリカは進んでいるなと思います。価値観の醸成の仕方がどんどん変わってきている。また、普通の人よりハンデがある人達を、会社として多様性の一人として同じ土俵でどう活躍をさせていけるかの施策や、採用のオンボーディング・プレボーディングなど、仕組み作りがアメリカは上手。日本が感覚的・属人的にやっていることを体系化し、ストラテジーとしてやっていることがアメリカの面白いところだなと思います。
増井:日本の企業というのは製造業を中心に発展してきているので、工場の人事管理、人事マネジメントをベースに労務管理をされています。一方で情報通信業というのがアメリカの経済成長の根本だと思うので、ホワイトカラーを中心にどうエンゲージメントさせていくかを考えている。積極的に欧米でうまくいったものを日本にどういうふうにトランスレートして制度として落とし込めるかというところが我々の世代のやるべきことだと思っています。
藤田:目先の売上と、社会課題と両方に意識を向ける必要があるスタートアップ。採用に費やす余裕がなくなることも多いと思うのですが、そういうスタートアップがどういう風に考えていくべきか、もしアドバイスがあればお願いします。
増井:私は明確に答えがありまして。利益がないと飯が食えないのは事実だし、そこに対して仕事をしていくことは当然です。ただ、採用がうまくいくという意味では人をわくわくさせなければ人は集まらないわけです。でも、金を稼ぐことにわくわくする人は限定的。大きなビジョンやミッションがあるからこそ人を惹きつけるはずなので、まずは綺麗事を語り、人をわくわくさせる。人心掌握と言うとあれですが、そういうチャーミングさ、人を惹きつける魅力というのがあって、その次にどうやって稼ごうかという話になるはずと思っています。順序を変えてはいけないなと。
藤田:今後HRの領域でお二方がそれぞれどんなことをやっていきたいか教えていただけますか?
幸村:私は今、個人で事業をやっていますが、来年はアメリカで会社を立ち上げたいなと思っています。組織の新しい形を作っていく。今、不確実な世の中になっている中で、企業が悩んでいることを一緒に考えて、新しい取り組みをお手伝いするイメージです。それで、うまく行った事例を日本に持ち帰る。そんな事業ができたらいいなと思っています。
増井:パッと実は思い浮かばなくて、今自分がやれること、やるべきことをやるしかないなと。その結果、人生振り返った時に自分こういう人生だったなと思いながら棺桶に入ることで十分だなと思います。冒頭にもお伝えしましたけれども、HRという仕事は人がいて初めてできる仕事。自分一人ではできません。社員の方やいろんな方と関わることでできる仕事なので、それによって一人でも多くの人が、人生を面白く歩めるとか楽しめるという環境を作ることができたら本望だなと思っています。
▼当日のセッション
xTECH Lab MARUNOUCHI vol.7『採用力を高めるスタートアップHRの情報発信とは ~シリコンバレー最新トレンド~』
https://youtu.be/Fb8SEA3n6UE