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コロナ禍で存在感増すワークスタイル系ベンチャー 新サービスが改革を促進 | Morning Pitch vol.382

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※本稿はSankeiBiz Fromモーニングピッチ を転載したものです。

デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。
モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回はワークスタイル特集です。
誰もが充実感を感じながら働き仕事上の責任を果たした上で、家庭や地域生活でも人生の各ステップに応じた生き方が選択・実現できることを、ワークスタイルと定義します。

ワークスタイルの在り方に変化

日本ではCOVID-19を契機に、ワークスタイルを取り巻く環境は変化しています。例えばキャリア感については「企業に依存しない形で自律的なキャリアを形成する必要がある」と考える人が急増し、働く場所に関しては在宅勤務の拡大に伴いオフィスビルの空室率の上昇傾向が続いています。その反動によって、社内コミュニケーションが悪化しているといった声も強まっています。
こうした中、「働き手視点」のワークスタイルの在り方も変化しつつあります。従来は組織に個人が帰属して、組織を通した社会価値を提供する「カンパニー・センタード」という進め方が主流でしたが、個人が組織を活用して社会に価値を生み出していく「ピープル・センタード」を目指す動きが顕在化しています。

就業機会の選択など4つのキーワード

また、これからの働き手視点に基づくキーワードは就業機会の選択と就業場所の自由、業務効率化、エンゲージメント(建設的な対話)だと考えています。
就業機会の選択に注目が集まっている理由は、「企業に依存せず、自主的なキャリア形成が必要」と考えている人が増え、副業や兼業、転職を志向する動きが強まっているためです。例えばパーソル総合研究所の調査によると、COVID-19を契機に「『副業・兼業をしたい』という思いが強まった」と回答した割合は3割近くに達しました。

就業場所については、テレワークを希望する割合が依然として高い半面、一定層がリアルな出社を希望している点を踏まえると、ウィズ・アフタ―コロナの局面では、ハイブリッド型の働き方モデルが中心になると予測しています。
また、業務効率化を推進するためクラウドとSaaS、RPA、チャットポット、コミュニケーションツールを活用する動きが活発になると予測しています。エンゲージメントが注目されている理由は、気軽に相談する機会や帰属意識が減少している点です。

すぐに働きたい人と事業者をマッチング

新たな働き手視点を踏まえ、大企業とスタートアップが協業するケースも相次いでいます。すぐに働きたい人と人手が欲しい事業者をマッチングする「スキマバイトサービス」を提供するタイミーは、大手不動産会社と提携。このサービスを活用し、全国の商業施設で店舗の人手不足解消を支援します。大手外食チェーンはラフールのサービスを導入し、正社員のメンタルヘルス対策に乗り出しました。クラウドワークスはテレワークのチームワークを活性化する仮想オフィス「RISA」を手掛けるOPSIONと、業務資本提携を締結し、仮想オフィス環境の整備に力を入れています。
今回は就業機会と就業場所、エンゲージメントという3つの領域から5社を紹介します。

都心の副業人材を受け入れ

地方の中小企業ではEC(電子商取引)やWebサービスの強化、SaaSツールの導入に取り組む動きが加速しており、主に30~50代のIT人材の受け入れが課題になっています。JOINS(東京都千代田区)は、デジタル化に取り組むこうした中小企業が大都市で働く副業人材を直接採用できるWebサービスを展開しています。約1000社の企業と8500人程度の副業人材が登録しており、これまでに約500件の成約実績があります。

アバターでチームの一体感を演出

テレワークが進む中、社内での雑談が少なくなりチームの一体感が希薄化したなどの課題が指摘されています。こうした状況を踏まえoVice(石川県七尾市)が開発したのが、Web上で自分のアバターを自由に動かせるバーチャル空間です。相手のアバターに近づけることで簡単に話しかけることができるほか、施錠できる会議室機能も用意しているため、機密情報を特定メンバーだけで話すことも可能です。

離れていても目の前に

tonari(東京都渋谷区)は、遠隔地のオフィスや部屋をつないで大型ディスプレーに表示することで場所の制限をなくし、同じ部屋で仕事をしたり、一緒にいる空間を醸成できる等身大の遠隔コミュニケーションツールサービスを提供しています。サービスの特徴は、人間が感知できないぐらいに遅延を抑制できる世界最速のソフトと、等身大のスクリーンです。これによって離れた人が目の前にいるかのような会話が可能となります。

柔軟なコーチングプラン

ビジネス・コーチングプラットフォーム「ment for Business」を提供しているのがウゴク(東京都渋谷区)です。木村憲仁代表が起業の際、迷いや葛藤が生じたが、コーチングを受けて解決できた経験を踏まえサービスを開発しました。質の高い140人以上のコーチが在籍しており、エグゼクティブから現場リーダーに至るまで、対象者に合わせて柔軟なプランを提供しています。

社員の見える化でイノベーション加速

日本の大企業では社員同士が見えづらくなってきています。このため組織を超えた自律的な協業が進まず、社内でのイノベーションが起きにくくなっています。こうした課題を解決するのが、Beatrust(東京都港区)のコラボレーションプラットフォームです。強力な検索エンジンによって必要なスキルを備えた社員情報を得られ、マッチングが可能な点が特徴です。導入企業では専門的な内容でも24時間以内にほとんどの回答が返ってくるという実績があります。
労働基準法の改正によって、中小企業の間で働き方改革をいかに進められるかが重要な課題となっています。ワークスタイル系のベンチャーによる新たなサービスの輩出に期待が高まります。

谷本 敦(タニモト・アツシ)
立命館大学文学部。JETROにてスタートアップの海外展開支援、イスラエル企業とのオープンイノベーション事業等担当し、EdTechやデジタルヘルス領域での新規事業に従事。
現職では東海エリアの自治体のエコシステム形成やスタートアップの事業計画策定のサポート等に従事。海外と地方のバックグラウンドから、地方からグローバルに活躍する企業の事業創出や、地域にこだわらない働き方を目指す企業・スタートアップのサポートを行う。

【関連情報】
●転載元記事:https://www.sankeibiz.jp/startup/news/210917/sta2109170600001-n1.htm