通勤が必要なく、遠方に住んでいても働けるリモートワークは利点が多い。一方で、「顔が見えず誤解が発生する」「評価に困る」など、新しい働き方によって生まれた課題に対して、各社が試行錯誤を続けている状況だ。
昨今では海外渡航者(帰国者)の隔離も緩和され始めている、各国で出口戦略が議論され始めているが、リモートワークは形を変えてこのまま残り続けるだろう。今後、企業はリモートワークとどのように向き合い、活用していけば良いのだろうか?
ならばリモートワークを含めた非対面コミュニケーションのベテランに話を聞いてみたい。デジタル・クリエイティブスタジオであるSun Asterisk(以下Sun*)は2012年に創業し、1800名規模の会社へと急成長した企業だ。また、創業当初から日本とベトナムという遠隔地でコミュニケーションしながら開発を進めてきた非対面コミュニケーションのベテラン企業でもある。
本記事では同社代表取締役の小林泰平氏と、人事を務める野村有希氏に、リモートワークが普及し、非対面コミュニケーションが一歩進む今後日本に起こりうる働き方の変化などを伺った。
小林泰平
早稲田実業高校を中退。その後、ITエンジニアとなりソフトウェア開発会社に就職。ソーシャルアプリの開発プロジェクトにて中国、ベトナムのエンジニアとのグローバル開発を経験。アジアの若い才能が未来を創っていくと確信し、2012年7月よりFramgia(現Sun*)の立ち上げのため、ベトナムに移住しCOOとして従事。2017年12月より同社の代表に就任。2020年7月に東証マザーズ上場。
野村有希
青山学院大学卒業後、2009年にソフトバンク株式会社に新卒入社し、販売を経験。2016年より株式会社リブセンスへキャリアアドバイザーとして入社。新規、既存の法人営業と兼務し、実績を積む。その後株式会社ミクシィにてDIVERSEへ出向し、Datingコンサルタントとして個人を対象とした、恋愛コンサルを経験。現在はSun*にて人事採用担当として勤務。
INDEX
小林氏が考える働き方の未来予想
会社の価値は「人を成長させられるか」にシフトしていく
リモートワークを円滑に進めるために、Sun*が心がけたこと
「スケジュールが埋まっていく」「メンタルに負荷がかかる」、コロナ禍で起きた社内の変化
ワーケーションが「必然性のないコミュニケーション」を生み、社員同士の潤滑油になった
「せっかく作った制度が活用されない」問題、その原因は信頼関係が構築できていないから
スーパーやコンビニに行くような感覚で、誰もが価値創造できる世界をつくりたい
ここがポイント
小林氏が考える働き方の未来予想
――はじめに、Sun*がどのような企業なのか、簡単に説明をお願いできますか?
小林:Sun*は企業の新規事業開発や事業創出を支援するデジタル・クリエイティブスタジオです。2012年創業から現在グループ全体で約1800名になり、うち1500名が海外拠点のメンバーです。
スタートアップからの相談も多く、サポートするなかでIPOを迎える企業も多数。業界内で新規事業のサービス開発を担う企業として、着実に信頼を積み上げてきました。
――2012年の創業当初から日本とベトナムで非対面コミュニケーションを続けていると、最近リモートワークを導入した企業とは見えているものが異なると思うのですが、これから私たちの働き方はどのように変化していくと考えているのでしょうか? 未来の予測を聞かせてください。
小林:個人的には職種を問わず、スキルと場所をマッチングさせて働ける世の中が来ると思っています。
Sun*がそうだったように、デジタル・クリエイティブの領域などは早い段階から場所に囚われずに働くことが可能でした。一方で、美容師のような仕事だと「美容室」という場所が必要になって、場所の制約を受けています。
しかし、デジタル技術の使い方によってはどんな職種でもスキルがあればどこでも働ける仕組みは作れるはずです。例えば、美容院を「自分たちが場所を運営するモデル」から「技術を提供するビジネスモデル」にしてしまえば、美容師さんが全国のレンタル美容室を借りてヘアカットやカラーリングができます。同様に、スキルと場所をマッチングさせれば、工場の組み立てや運送業の方も、自由に移動しながら働けるかもしれません。
――つまり、オンラインで完結せず場所の制約を受けると思われていた仕事であっても、仕組みによって場所に縛られずに働ける未来が訪れるということですね。たしかに、美容業界ではその動きが始まっていますね。これからは職種を問わず、自由な場所で仕事ができるようになるのでしょうか?
小林:デジタル技術の使い方次第ではいま言ったような働き方を実現できるはず。もし、スキルと場所をマッチングできれば、働き方は大きな会社という箱があり、場所や資金、人材などがそこに集まる中央集権的なものから、個々が独立していてゆるく繋がる分散したものになっていくはず。現に、日本をはじめ、色々な国や地域で分散型経済圏を成立させようと動いている人たちがたくさんいます。そういった経済圏がゆるくつながっていけたら面白いですよね。色んな選択肢が増えて多様化が進んでいくはずです。
会社の価値は「人を成長させられるか」にシフトしていく
――分散が加速していくと仮定すると、いまは社会が変わる過渡期にあたりますね。新しい働き方が一般化していくと、会社の役割は変わりそうですね。
小林:おそらく役割は変わるでしょう。僕個人の考え方として、会社は「社会の中で人の育成を担い、気が合った人が集まって働く場所になればいい」と考えています。
いままでのように「採用市場から見つけてくる」では遅くて、会社で人を育てて行く必然性が生まれました。
採用という概念自体を考え直して、自分たちで人を育てていくべきだと考えています。もっと言えば、会社単体ではなく、社会全体で仕事ができる人を育てていくことが必要だとも思います。多くの会社が「採用できない」と嘆いていますが、そもそも労働人口も減っていますし求める水準の人自体がいないんです。
だからこそ、会社は「自社で長く働いてもらう」ではなく、「社会全体で仕事ができる人の母数を増やす」にシフトしなければいけません。
僕らが海外で人を育てているのもそういうニュアンスで、海外で人材を採用しようとすると、そもそも求めるスキルセットの人がいませんでした。いないなら育てるしかなくて、基本的には利益が出たら全部人に突っ込んでいました。
――余裕がある大企業だと育成にコストをかけられますが、スタートアップはコストがかけられませんよね?
小林:スタートアップの事情も分かりますが、優れたアイデアも人がいなければ実現できません。
そもそも事業をやるだけなら、ギルド的にフリーランスが集まってプロジェクトを進めることは可能です。ですがそれだけではジュニア人材の居場所がなくなってしまいます。ゆえに「社員を成長させられるか否か」が投資家の評価基準に組み込まれていくと思います。
いまは「スタートアップだから事業に投資しています」で通用していますが、会社の存在価値は人を育てられるかどうかに集約していくのではないでしょうか。
リモートワークを円滑に進めるために、Sun*が心がけたこと
――ここからはSun*の働き方や勤務制度を教えてください。
小林:Sun*は創業当初から日本とベトナムに拠点を設けているので、創業時の2012年から非対面コミュニケーションをメインとした、いまで言うリモートワークのような働き方です。僕自身もベトナムに住んでいたので、それが自然な流れでした。
――コロナ禍に対応してリモートワークを導入している企業にお話を聞くと「コミュニケーション・制度・ツール・評価」の4つのポイントで困っている方が多いと感じます。Sun*はなぜ円滑に非対面コミュニケーションを進められたのでしょうか?
小林:うまく行った理由として、コミュニケーションの細部にすごく気を遣っていたことが挙げられます。海外メンバーを多く抱えているので、お国柄やコンテクストが分からない状態が生まれがちです。さらに、チャットやメールのコミュニケーションは表情が分からないので、意図せず冷たく感じられることもあります。
そのため、誤解を受けないように工夫したんです。「無愛想に見えないよう、文末に『!』をつける」とか「語尾を伸ばす」とか。
あとは、「スケジュールを調整する側が、調整される側に配慮する」「誰に対して何の目的でメールを送っているかを明確にする」など、表情や仕草でごまかせない分、相手の立場に立ったコミュニケーションを心がける文化が生まれました。
――ここはもう少し踏み込みたいのですが、社員同士の関係性が構築されていればリモートでもコミュニケーションは円滑に進められます。しかし、コロナ禍以降は入社時からリモートワークで、同僚と直接会ったことがないケースも増えています。こういったケースではどのように信頼関係を構築していけばよいのでしょうか?
小林:僕も「関係性が構築されていれば」というのは同意できます。どれだけ通信技術が発展してもフェイストゥフェイスの交流は情報量が圧倒的に違いますよね。今後移動の自由が戻ってくる前提で考えると、可能な限り集まれる場所を作り、遠方からの移動コストは会社が負担する形が理想的だろうと思っています。
社員同士の交流のなかでも僕は雑談がすごく大事だと思っています。というのも、リモートでは必要最低限のコミュニケーションしか取らなくなってしまいますよね。しかし、必要な会話だけではインスピレーションが生まれないし、思考の枠の外側に踏み出せません。だからこそ、「必然性のない交流」が必要です。
Sun*でもチャット上で雑談が発生しています。なんとなくメンバー間に「会社はみんなに会いに行く場所」と捉えている雰囲気がありますね。
そういった点で考えてもみんなが集まれる場所がないと不自由や不具合が起きてしまうので、それなりの規模で、アクセスがよくて、「そこにいけば誰かいるだろう」という場所はちゃんと作っておきたい。だからSun*は大手町にスタジオを開設しています。
「スケジュールが埋まっていく」「メンタルに負荷がかかる」、コロナ禍で起きた社内の変化
――Sun*はコロナ禍になってからは社内に変化はありましたか?
小林:コロナ禍になって物理的に集まれる場所がなくなってしまったので、雑談は少なくなっていますね。あとは組織の構造上の問題があって、会社が大きくなったので社内には「リモート経験が全くないです」という人も増えています。リモートに慣れていないとオンライン特有のコミュニケーションは難しいし、雑談もしにくい。これはチームが大きくなる以上、仕方のないことです。
そのほかの変化として、すごくスピード感が出て忙しくなりました。たとえばGoogleカレンダーだと、スケジュールに隙間が出ると次々埋まっていって、テレビのザッピングをしているように仕事が進んでいく感覚があります。
以前はリアルでのコミュニケーションで賄えていた部分もあったので、ここまでスケジュールが埋まっていませんでした。生産性は高まったけれど、逆にいうとみんな仕事しかしていません。
だからルールを決めた方がいいですよね。「1日にカレンダーに登録できるスケジュールを4時間までにする」とか。でなければとにかく時間を埋めてしまうし、「何をそんなに生き急いでいるんだろう?」となってしまいます。僕らは働くために生きているわけではありませんから。
――「働くために生きているわけではない」というのは理解できるものの、生産性が高まるの会社として良いのではないかと思ってしまうのですが、まずいのでしょうか。
小林:これはめちゃくちゃ懸念すべきことです。皆さん気づいていないだけで、じわじわと心が侵されていると思います。
もし完全リモート体制が3年続いたら、社員のメンタルに悪影響が起きる可能性があります。「リモートを導入して、業務を効率化できた」と考えている企業ほど、社員のメンタルに気を配った方が良いかもしれません。
――良い面でも悪い面でも働き方の変化が大きくなっていますが、過渡期のなかでどのようなことを考えないといけないのでしょうか?
小林:起きている変化に対応するためにルールを作りたくなりますが、そこはちょっと立ち止まって考えた方が良いと思います。
僕はあまりルールにはしたくないと思っています。ルール化すると「規則に当てはまらないから無理して出社しなきゃ」とストレスを感じますし、思考停止して「それはルール違反です」と指摘する人も出てしまいます。そういう働き方はつまんないですし、社員もストレスを感じてしまいます。
子供の世話があるなら業務や勤務時間を調整すればいいし、雨で外に出たくないならリモートでもいい。そこは自己判断で考えて、社員にとって良い働き方ができる環境を目指したいと考えています。
――先ほど小林さんは、リモートワークを導入するなら、サテライトオフィスなど集まれる場所を各地につくり、行き来する形が理想的だと話していましたが、その構想が普及した時に、社内にはどのような課題や変化が生まれると思いますか?
小林:大きな変化として予想できるのは、社員が受け取れる情報量やチャンスに差が出ることです。
いまはプライベートを重視して、地方に住みながらリモートで働く人が増えていますよね。たとえば「宮崎に住みながらサーフィンして仕事して」という生活が、すごくキラキラしたライフスタイルとして扱われています。
そういったライフスタイルは素敵ですが、一方で懸念も感じています。毎日みんながいる場所に出社してリアルにコミュニケーションとっている人と、完全にリモートで働いている人はアクセスできる情報に差が出ますよね。その結果、面白い事業に声をかけられやすくなるとか、成長しやすくなるとか、そういった機会の差も生まれてくるはず。
えこいひいきはいけませんし、僕も機会を平等にしたいのですが、完全に平等にするのは難しい。会社ができるのはデジタルで情報をオープンにして「必要な情報は取りに来てくださいね」と開示することで、あとは個々の社員の選択だと考えています。
――その状況はありえますね。リアルで会った人には「ちょっとこの案件頼んでいい?」と頼みやすいですし。
小林:だから今後、よりリモートが普及していった場合、オフィスで起きる偶発性や情報との接点も含めて、社員を評価していかなければいけません
ワーケーションが「必然性のないコミュニケーション」を生み、社員同士の潤滑油になった
――偶発性の話とも関係すると思うのですが、Sun*では近年ワーケーションを導入していますね。これはどのような効果を狙っているのでしょうか?
野村:すごく正直に言うと、創業者の平井が「世界各地を周りなから働くのは楽しい。だからどうしても制度化したい」という経緯で始まりました。出かける先は全国どこでもよくて、社員一人でもワーケーションができます。
制度を始めてみるとメンバー間の交流のきっかけ作りになっていて、部署や職種、レイヤー(ベテランとジュニアなど)をまたいで意外なペアがワーケーションに出掛けています。
社員同士の交流が生まれ、必然性のないコミュニケーションが増えたので、業務では見えにくい人柄が見えやすくなり、「この案件に入ってみる?」といままでとは異なるアサインも進んでいるようです。
――先ほど小林さんが「会社の価値は人を成長させることにある」と話していましたが、ワーケーションが社員の成長に役立っているということですね。
小林:そうですね。メンバー同士で馴れ合う必要はないけど、一緒にミッションを成し遂げあう仲間なので、どう考えても信頼関係が構築されている方がいいじゃないですか。ワーケーションが機能していると社員同士が自由に仲良くなってくれているので、それだけで嬉しいです。
野村:人事サイドの意図としては、ユニットの合宿的な扱いで活用して欲しいと思っていましたが、全然違うコミュニケーションが生まれていますね。
小林:僕自身、ワーケーションに対して、導入前は懐疑的だったところもあります。有給や代休、リモートなど既存の制度を組み合わせればワーケーションは可能でしたし、「わざわざ制度を作る必要があるのかな?」と考えていました。
しかし、制度を立ち上げてみると考えが変わりました。というのも、一般的な社会人は制度上問題がなくても、ワーケーションを遠慮してしまうんですね。「有給やリモートを使えば北海道で仕事ができるけど、行っていいのかな?」と迷ってしまう、だから「いいんだよ」と会社の公認にしてあげることが重要だったと思っています。
実際、必然性のないコミュニケーションの促進や、社員にワクワクしながら働いてもらう状態にするために、ワーケーションはめちゃくちゃいいツールだと思っていて。僕も野村も「ワーケーションを使いなよ」と社員へ地道に伝えていきました。
「せっかく作った制度が活用されない」問題、その原因は信頼関係が構築できていないから
――なるほど、制度化されていれば、社員も安心して利用できますね。
小林:もちろん制度があるだけではダメで、周りの人が利用を受け入れてあげる土壌も必要だと思います。「自由に制度を使っていいよ」と言われても、「これを言ったら怒られるのでは」「評価が下がるのでは」と懸念していては心理的安全性が保たれません。せっかく制度があっても、同僚や上司が嫌がってしまったら一瞬で使われなくなってしまいます。ワーケーションを導入するなら積極的に上司が使うなど、パスが必要ですね。
――制度があっても利用されないケースはよく聞きますね。
小林:育休制度はまさにそうですよね。その点、メルカリ会長の小泉文明さんは、自ら育休制度を活用しています。ああいう姿勢が大事なんだろうと思います。
野村:そういった心理的安全性は制度の活用に大きな影響を与えます。また、業務として日常的に色んな職種と関わる機会が多いことも、ワーケーションはうまく機能している要因だと思います。
――大きい会社だと、人事が制度を推進してても、現場でNGというパターンもありそうですね。
小林:その点は信頼関係が大切です。「ワーケーションに出かけても仕事には影響を出さないだろう」と信頼できてはじめて成り立っている制度ですから。
――そういった信頼関係の構築に悩んでいる会社も多いと思います。Sun*はなぜ制度を円滑に運用できているのでしょうか?
小林:「目を離すと部下がサボるんじゃないか」と考えているマネジメント層は多いと思いますが、逆に言えばやりたくないことを無理してやらせている環境に問題があると思うんです。そういった環境だとパフォーマンスも上がりませんし、マネジメントも経営も億劫になります。
本質的に人は嫌なことはサボりますし、実際、僕もサボる時があります。「社員がサボるかもしれない」と考えるなら、サボりたくなるほどつまらない仕事を渡している可能性があります。まず、その状況をどうにかしたほうがいい。
経営の仕事は、社員が「やりたくない」をやらなく済む状態をどれだけ作ってあげられるか。その状況を社員みんなで目指していく。そういう考え方でやろうよと社員に呼びかけたら、「そのほうがいいですよね」と賛同してくれた。だから、結果的に信頼できているのです。
スーパーやコンビニに行くような感覚で、誰もが価値創造できる世界をつくりたい
――業種によって進行具合はまちまちでますが、冒頭でも出てきたとおり、様々な職種でどこでも働ける可能性が開けています。人材の流動性が高い時代において、人事や会社は何を心がければ良いのでしょうか?
野村:働く場所や時間がバラバラになると、どうしても会社に所属する意味を考えてしまいますよね。現にうちにいる人たちはすごく優秀で、別の会社でも活躍できる人達です。
だからこそ、チャットやワーケーション、ワークショップなど様々な体験を通して、社員が「Sun*で働きたい」と思える状況を維持していかなければ、と思っています。
――お話を聞いていて、リモートワークにおいても、アナログな人と人との関係性が重要だと感じました。Sun*はワーケーションをはじめ、新しい働き方を模索していますが、これから実現していきたいことはありますか?
小林:Sun*は「誰もが価値創造に夢中になれる世界をつくりたい」というビジョンを掲げています。その世界観に近づいていくために各地に人が集まれる拠点を作っていきたいですね。
たとえば、ある社員がマダガスカルに旅行に行ったとして、現地の動物を見て「こういうサービスがあったらもっと動物たちを幸せにできるのに」と思いついたとします。そこで、Sun*のマダガスカルスタジオに飛び込んだら立ち上げに必要な人が集まっていて、サービスの立ち上げができる。そんな風にコンビニやスーパーに行くような感覚で、事業立ち上げや価値想像ができるインフラを作っていきたいです。
このようなインフラがあれば、ITの技術を持っている人はデザイナーであれエンジニアであれ世界中で働けます。構想を実現できる可能性も十分ありますし、そういう世界を作りたい。
将来的には言語の壁も飛び越えて、IT業界だけでなく、ドライバーさんや美容師さんなど、スキルと場所をマッチングして働けるインフラも手がけていきたいですね。もし実現できたら面白いじゃないですか。
――途方もない構想ですが、小林さんなら実現できるような気がします。もし実現できれば働き方の選択肢も広まるでしょうし、もっと活き活きと働ける人も増えていくはず。今後の活動に期待しています。
ここがポイント
・未来は、職種を問わず、スキルと場所をマッチングさせて働ける世の中が来ると思っている
・働き方は、会社という箱があり、場所や資金、人材などがそこに集まる中央集権的なものから、個々が独立していてゆるく繋がる分散したものになっていくはず
・分散が加速すると仮定すると、会社は社会の中で人の育成を担い、気が合った人が集まって働く場所になればいい
・非対面コミュニケーションは、表情や仕草でごまかせない分、相手の立場に立ったコミュニケーションを心がけることでうまく行った
・「リモートを導入して、業務を効率化できた」と考えている企業ほど、社員のメンタルに気を配った方が良いかもしれない
・ワーケーションを導入したことでメンバー間の交流のきっかけ作りになり、部署や職種、レイヤーをまたいで使われている
・ワーケーションが使われるためには、制度として会社の公認にすることが重要だった
企画:阿座上陽平
取材・編集:BrightLogg,inc.
文:鈴木雅矩
撮影:小池大介