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ただ日本一高いビルではない。TOKYO TORCHが目指すアフターコロナを見据えたまちづくり

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TOKYO TORCH事業部・谷沢氏のインタビューに引き続き、大手町、丸の内、日本橋、八重洲に四方を囲まれた「常盤橋」エリア再開発を目的とする「TOKYO TORCH(東京駅前常盤橋プロジェクト)」についてのインタビュー第2弾。

オフィスのあり方について見直しが求められる今、不動産デベロッパーの考える就業者と建物の関係性とは。今回は、「TOKYO TORCH(東京駅前常盤橋プロジェクト)」で新たなまちづくりモデルを進める三菱地所の牛尾氏に話を伺った。

INDEX

人を、街を、日本を、地域を「外」と繋ぐ。
目指すのは、土地を起点につながる「チームTOKYO TORCH」体制
ここがポイント


牛尾莉緒
TOKYO TORCH事業部 事業推進ユニット
2017年三菱地所株式会社入社。入社時より『常盤橋タワー』『Torch Tower』の開発・企画を担当。TOKYO TORCH事業部在席中に開発戦略室(現・コマーシャル不動産戦略企画部)を兼務。

人を、街を、日本を、地域を「外」と繋ぐ。

――まず「TOKYO TORCH」の概要について教えてください。

牛尾:はい。東京駅日本橋口前に位置する3.1ヘクタールの「常盤橋街区」にて地域内の下水ポンプ所、変電所といった重要インフラの機能更新を図りながら「常盤橋タワー(2021年竣工)」と「Torch Tower(2027年度竣工予定)」を段階的に整備していくプロジェクトです。ただ新しく建物を更新していくということだけではなく、周辺地域や日本全国との結節点としての新しい「TOKYO TORCH」としてのイメージを確立し、どのように人を繋ぐまちづくりが実現させられるかが本プロジェクトの鍵となります。

――「人を繋ぐ」について、どのような取り組みを構想されているのでしょうか。

牛尾:「人」、すなわちTOKYO TORCHで働く就業者の方、一人ひとりに向けたサービスを実施します。従来型のオフィス賃貸のモデルにおいては、賃貸料をいただく企業や事業体に対してサービスを提供していくというものですが、オフィスの利用形態も変化していく昨今では、実際にオフィスを利用いただく就業者の方、一人ひとりにサービスを提供していく必要があります。自社がオフィスを構える街区そのものに愛着を持っていただく。その新たな親しみの構築こそ、我々のプロジェクトの原点になります。

――では、従来のオフィスビルと異なる仕掛けがあるのでしょうか。

牛尾:そうですね。わかりやすい例ですと、ビル共用のカフェテリアやカンファレンスルーム、フィットネスジムなどを共用空間として整備します。もちろん、ただハードを用意すれば、良質なコミュニケーションが自然発生するわけではありません。我々も過去の事例から学ぶ中で、仕事以外のトピックで関係性を深められる場作りや、仕事とプライベートの中間的な感覚で参加いただけるプログラムなどの必要性を感じ、複数の企画を構想中です。

――その具体的なプログラムやサービスを教えていただけますか。

牛尾:いくつかありますが、最近当社が出資もしたスタートアップ「Zehitomo(ゼヒトモ)」との協業が代表的な例です。これは多彩な学びのプログラムの中から、プロに直接指導してもらえるマッチングサービス。これが面白いのは、ちょっとした1時間程度の余白時間にプログラムを予約することができる上に、職場まで出張訪問してくれる点です。学びの内容は英会話やデザインなどのビジネスに活かせる能力開発をはじめ、パーソナルトレーニングやネイルサービス、写真撮影、生け花など個人の趣味を深める分野まで幅広く提供されます。デベロッパーの立場からすると「このサービス(を受けられる場所)があるから出社したい」というポジティブな理由がワークスペースに付与されますし、時間次第では遊休空間になりがちな共用スペースを活用できるというのもありがたいことです。


Zehitomoを活用したプログラム

――共用空間というハードだけでなく、その空間を活用したデベロッパーの提供する一連のプログラムに参加することで、同じタワー内の人と人が交流する新しい機会創出となり、そこからさらにオフィス、ひいてはTOKYO TORCHへの「サードプレイス意識」が高まるということですね。では、そうしたサービスを受けるために、なにか就業者向けに専用のプラットフォームが提供されるのでしょうか。

牛尾:はい。最先端のICTを駆使した就業者専用のアプリを開発中です。カフェテリアでの注文などはもちろん、先ほどのマッチングサービスの予約やビル入館の認証対応も検討しています。指紋や顔認証などの生体認証技術が高まっていますが、時流柄、マスクを外すことやなにかに触れることに抵抗がある方が少なくありません。そうした懸念点を踏まえて、アプリをインストールした端末があればBluetoothで自動認証される機能も検討中です。これらは、三菱地所の本社を巻き込んだ実証実験を行い、検証を進めています。

目指すのは、土地を起点につながる「チームTOKYO TORCH」体制

――先ほど「本社を巻き込んで」とありました。谷沢さんのインタビューでもお伺いしましたが、本社を実証実験の場として活用し、その結果を踏まえ広げていくのは言うほどたやすくはないと思うのですが、どのように周囲の方々に働きかけ、実現に至ったのでしょう。

牛尾:部署内全体に浸透した文化でもあるのですが、外部の方や部署を問わずいろんな方々とお話をすることです。東京駅前に日本一高いアイコンとなる「街」を創る。そして、国内外のたくさんの方々にお越しいただける場所にする。そうしたスケールの大きな未来像を単独部署、ひいては三菱地所一社で完結させることは難しいですし、部署の一員として個人で考えられる範囲には限界があります。谷沢の口癖でもある、「全部繋がっている」にも通じますが、外部の方とは意見交換を、プロジェクトメンバーとは日々議論することを繰り返していくうちに、応援してくださる方やプロジェクトの一員として考えてくださる方が増えたり、気にかけて何かあるごとに相談してくださる機会が増えた結果かと思います。社内の横のつながりを強化する取り組みとしてTOKYO TORCH事業部は専任の担当者以外に、ホテルの企画やエリアマネジメント、運営管理を担当する部署からの兼務者も参画する体制をとっています

――日々のコミュニケーションの中で、気にかけてもらえる機会を草の根的に増やしていったと。

牛尾:そうですね。入館時のセキュリティゲートに関する実証実験への全社的な協力はまさにその際たる例です。また、その実験結果を常盤橋タワーやTorch Towerの開発に活用する段階的なプロセスを、部署外の社員にも理解してもらう戦略でもあります。これらはただ実験して終わりということではなく、その後、本プロジェクトの進捗の認知度を高めることや、部署での取り組みを社内の他プロジェクトの参考にしてもらうために、取り組みに関する記事の全社への発信も徹底しています。これまで、横断的に開発を取りまとめて発信することはありませんでしたが、一連の地道な情報発信によってプロジェクトそのものが浸透し、認知度が高まると共通言語が生まれますので、様々な話が通りやすくなりました。

――メンバー個人によるコミュニケーションに加えて、部署外の社員の方々への積極的な広報活動を仕掛けられたのですね。それでは、社外の方々の巻き込みについても教えてください。

牛尾:これからのまちづくりモデルのミッションは参加共創型です。一つの事例ですが、Torch Towerでは、次世代を担う複数のデザインアドバイザーの方にチームに加わっていただいています。そうして多くの外部の方々と関わり、開発が進む中で生まれた関係性がひとつの活動体となって広がった結果、「(TOKYO TORCHは)自分たちの街なんだよ」と沢山の方から言っていただけるような、「チームTOKYO TORCH」の輪が広がることが理想です。

その構成員は、三菱地所グループの社員や街区の権利者だけでなく、協業する企業、自治体や教育機関、そしてTOKYO TORCHに関係する個人の方々。2027年度、Torch Tower完成のタイミングに向けて、チーム一丸となって「こんな街になったらいいね」を話し合い、一緒にこれからのTOKYO TORCHを作っていけたらと思います。

ここがポイント

・「TOKYO TORCH」は「常盤橋タワー」と「Torch Tower」を段階的に整備していくプロジェクト
・「人を繋ぐ」ためには、実際にオフィスを利用する就業者一人ひとりにサービスを提供していく必要がある
・カフェテリアやカンファレンスルーム、フィットネスジムなどを共用空間として整備
・仕事以外のトピックで関係性を深められる場作りや、仕事とプライベートの中間的な感覚で参加できるプログラムを検討。その一例が「Zehitomo(ゼヒトモ)」
・ICTを駆使した就業者専用のアプリも開発。Bluetoothで自動認証される機能も検討中
・周囲の方々を巻き込むために、TOKYO TORCH事業部は専任の担当者以外に、ほか部署からも兼務者が参画する体制を整備
・取り組みに関する記事の全社への発信も徹底


企画:阿座上陽平
取材・編集:BrightLogg,inc.
文:小泉悠莉亜
撮影:中野修也